ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』稽古場レポート

元宝塚雪組トップスター早霧せいな、退団後初主演作。
クールな美しさとコミカルな魅力が輝く稽古場に潜入!

 

『シカゴ』『キャバレー』のジョン・カンダー(作曲)&フレッド・エッブ(作詞)によるトニー賞4冠受賞作『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が上演! その内容とは? 笑い溢れるミュージカルの稽古場の様子をお届けします。

“ウーマン・オブ・ザ・イヤー”とは、その年に最も輝いた女性に贈られる賞のこと。物語は、この賞に選ばれた人気ニュースキャスター、テス・ハーディングの授賞式のシーンから始まる。

ここで歌うソロ「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」で早くも魅力を放つのは、これが女優としてのミュージカル初主演の早霧せいなだ。「夫なんていらない!」という歌詞も力強いナンバーで、風刺漫画家の夫サムへの不満を爆発させる姿は実にコミカルでチャーミング。そもそもこの2人の出会いは最悪だった。テスがキャスターを務める番組内で「漫画は幼稚で低俗」と断言するのを見たサムは、仕返しとして彼女を揶揄した猫のキャラクター“テシー・キャット”を自分の連載漫画に登場させたのだ。それを読んで怒りに燃えるテスが歌うナンバーでは早霧の男役の経験と持ち味が全開に。知性とガッツでテレビ界を生き抜いてきたテス。なのに漫画に心を乱され「私は正しい!」と自分に言い聞かせて歌う男前の声、動きのかっこよさに圧倒されつつ、何事にも体当たりのテスを誰もが愛さずにはいられなくなるはず。

対するサム役の相葉裕樹は、ニヒルに見えて誠実で、漫画への情熱を持ったサムを甘く伸びやかな歌声で表現。2人が出会うシーンが出色だ。お互いに悪印象しかなかったのに、一目で恋に落ちるなんて現実にはなかなかないが、「これもありかも」と思えるのはミュージカルコメディーの楽しさでもある。

さらにテスを健気に支える秘書ジェラルドを今井朋彦、ハウスキーパーのヘルガを春風ひとみ、くせ者キャスター・チップを原田優一、テスの元夫の妻ジャンを樹里咲穂が演じ、物語のキーパーソンとなるロシア人バレエダンサーにはKバレエ カンパニーの宮尾俊太郎というユニークな顔合わせ。実力派たちが演じるキャラの立った登場人物たちのやりとりに大いに笑い、仕事、恋、結婚、人生……いろいろなことを感じさせてくれるミュージカルが生まれる予感大! 開幕が待ち遠しい。

 

取材・文:宇田夏苗