『TABU』タブー シーラッハ「禁忌」より 大空祐飛 インタビュー

作家シーラッハの最新作が早くも世界初の舞台化!

 

ドイツの刑事事件専門の弁護士であり、ベストセラー作家でもあるフェルディナント・フォン・シーラッハ。淡々とした語り口ながら、いつしか深く人間の業に分け入っていく独特の作風で読者をとりこにしてきた彼の新作長編小説「禁忌」が、日本で初めて舞台化される。悪とは何か、善とは何か――。ある理由で逮捕された主人公の写真家ゼバスティアンの恋人ゾフィア役に、大空祐飛が挑む。

大空「原作の小説を読んだのですが、本当に面白くて夢中になってしまいました。論理的な緻密さと感覚的な鋭さが共存している不思議な世界観がとても魅力的。今まで私の肌に触れたことのないような感覚を覚えたんですよね」

今回大空が演じるゾフィアは、どんな女性なのか。

大空「小説のなかのゾフィアという女性は、とにかく美しくて魅力的な人ではないかという印象があります。ゼバスティアンと同じものを目に映しているようなところがある。だからこそ、彼を理解して包み込めるのかなと思います」

物語の軸となるのは3人の人物だ。主人公のゼバスティアンを真田佑馬が、弁護士のビーグラーを橋爪 功が演じる。売れっ子カメラマンのゼバスティアンは、ある日逮捕されてしまう。なぜ彼は罪を犯してしまったのか、弁護士との接見を通じて、幼少期の両親との関係、そして恋人ゾフィアとの関係を顧みながら、その真相が明らかにされていく。

大空「ゼバスティアンは文字や音に色が見える“共感覚”の持ち主。不思議な魅力を持った男性ですから、真田さんの役作りにワクワクしています。ゾフィアは彼の気持ちに共感して、理解しようとする女性。稽古していくなかでしっかり真田さんのゼバスティアンを受け入れていきたい。橋爪さんは大先輩で、もちろん素晴らしい役者さんです。シーラッハのファンである奥様に本を勧められて夢中になり、小説『犯罪』を朗読劇として上演されてもいます。先輩の懐をお借りするつもりで、しっかりお芝居を作っていきたい」

異色とも言える3人の初顔合わせで、どんな化学反応が起きるのか。「実は人見知りなんです」と大空は言う。

大空「作品ごとに毎回『初めまして』の出会いがあることは、たくさんの学びと面白さに満ちています。ただ小心者なので、作品と稽古場の雰囲気に慣れて、安心して自分のパフォーマンスができるようになるまで少し時間がかかってしまうこともあって。その緊張感も好きなんですけどね。相手の方をよく知っていくことでお芝居がスッとなじむことがあるので、今回もみなさんとたくさんコミュニケ―ションをしていきたいですね」

舞台版の演出を務めるのは、深作健太。

大空「とても気さくな方でほっとしています(笑)。稽古場では私自身も役者として自分のことを理解していただかなければならないので、どんなコミュニケーションを取られる方なのかは、毎回気になります。深作さんはきっと稽古場の雰囲気を良くしてくれる演出家さんなのではないかと感じました」

「世界初の舞台化」に懸ける意気込みを聞いてみたら、「新作は全部そうだから」とさらりとかわされた。「私はただ稽古が始まったら、そこに全力投球するだけです」と。

大空「深作健太さんの演出のもと、舞台ならではの『TABU』を私自身も楽しみにしています。真田さん、橋爪さんに私という異なる色同士が混ざり合ったら、いったいどんな色になるのか。ぜひ劇場でお楽しみください」

 

インタビュー・文/まつざきみわこ
Photo/大嶋千尋
構成/月刊ローソンチケット編集部

 

【プロフィール】

大空祐飛
■オオゾラ ユウヒ ’09年に宝塚歌劇団の宙組トップスターに就任。’12年の退団後は、蜷川幸雄演出「唐版 滝の白糸」、能楽師の梅若六郎玄祥が総合監修を務めた「新版 天守物語」など舞台を中心に活動中。