2018美輪明宏版『愛の讃歌~エディット・ピアフ物語~』 美輪明宏 インタビュー

ピアフの姿を通して、愛するということを知ってほしい

世界的シャンソン歌手エディット・ピアフの波乱の生涯をもとに、美輪明宏が作・演出・美術・衣裳を手掛ける主演舞台「愛の讃歌~エディット・ピアフ物語~」が4年ぶりに上演される。美輪の「愛の讃歌」といえば、2014年の紅白歌合戦での圧巻の歌唱を思い出す人も多いだろう。

美輪「あの歌が“ずっと頭から離れない”といった反響が多く、中には私が歌う姿をテレビでじっと見ている猫の写真を送ってくださった方もいました(笑)。そもそもは朝ドラ『花子とアン』の脚本家・中園ミホさんが私の『愛の讃歌』に感動されて、重要な駆け落ちのシーンに使われたことが話題になり、紅白に繋がりました」

 

中園さんがそこまで惚れ込んだ美輪が歌う「愛の讃歌」の魅力はまず、歌詞の力強さ。自らピアフが書いた原文にあたり訳したという。

美輪「“この大地が割れてひっくり返えたってどうってこたぁありゃしない あなたのこの愛の前には”だなんて壮大でしょう。まさしく無私の愛ですが、ピアフは本当にそういう愛し方をしたのです」

※前回公演より

 

大恋愛だったプロボクサーのマルセル・セルダンを突如飛行機事故で失い、21 歳年下の夫テオ・サラポに見守られて生涯を閉じたピアフ。これまで映画や舞台で焦点が当てられなかったテオとの愛を丁寧に描いているのも美輪版の特色だ。2018年版では『水に流して』『バラ色の人生』などの名曲はそのまま、「お客様がよりご覧になりやすい形にぐんとブラッシュアップします」とのこと。美輪にとってピアフは「自分が自然と重なる役」でもあるようだ。

美輪「私自身、長崎で原爆にあっても、浮き沈みの激しいこの世界にいても、こうして生きているわけです。歌手として脚光を浴びたものの、シンガーソングライターの先駆けとして方向転換したら反発されて人気が落ちて、それでも家に仕送りしなければいけなかった。あの頃が一番どん底でした。だから一度栄光をつかみながら、路上生活に戻るときのピアフの心象風景が手に取るようにわかるのです」。

※前回公演より

何よりピアフの姿を通して「人を愛するとはこういうことなのだと両手で受け止めていただきたい」と美輪。渾身の舞台を見届けたい!

 

インタビュー・文/宇田夏苗

 

【プロフィール】
美輪明宏
■ミワ アキヒロ 長崎県出身。16歳でプロ歌手となり、シンガーソングライターの元祖として「ヨイトマケの唄」など数々のヒット曲を生む。主な演劇作品に『黒蜥蜴』『毛皮のマリー』など。「紫の履歴書」「人生ノート」他著書多数。