関西テレビ放送開局60周年記念『サメと泳ぐ』 田中圭 インタビュー

映画界の裏側をブラックユーモア満載に描いた傑作戯曲、『サメと泳ぐ』が9月に東京・世田谷パブリックシアター、兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールほかにて上演される。
1994年にハリウッドで製作された映画「Swimming with Sharks」(邦題「ザ・プロデューサー」)を2007年にロンドン・ウエストエンドで舞台化した本作は、ハリウッドでの実体験に着想を得て書き下ろされた、 究極の騙し合いと凄絶な人間ドラマを描いた作品。 日本初演となる今回は、権力を振りかざす大物映画プロデューサー・バディ役を田中哲司、脚本家志望の新人アシスタント・ガイ役を田中圭が演じる。

 

――この作品のお話を聞いたとき、率直にどう思われましたか?

田中「最近、(舞台の仕事は)1年に1本にしようと思っていたのに、実際は半年に1本のペースでやっているので、「ちょっとどうしようかな」と思ったんですが、「千葉哲也さんの演出いいよ」っていう周りの声も聞いたりしていて。「でもな~1年に1本でいいんだよな~」と思いつつ(笑)、すごく迷ったんですけど、今現在決まっている舞台の仕事を全部やって、そこで一区切りにしようと思って。それだったらやってみよう、と思いました」

 

――舞台の仕事はそれだけ消耗度が高い、ということでしょうか。

田中「そうですね、消耗度も高いですし、僕は舞台が好きなんですけど、好きだからこそあんまり(数を)やれないという部分があって。なので作品を選んでやっているところはありますね」

 

――この作品もなかなか消耗度が高そうですよね(笑)

田中「そうですね、大変だと思います。この作品を最初に知ったのは映画(邦題『ザ・プロデューサー』)だったんですけど、「ああ~~~~(低く唸るように)」と思いました(笑)。疲れそうだな、とは思いますが、やりごたえは絶対にあるだろうし、たのしくやれればいいな、と思っています」

 

――この作品のおもしろさ、魅力はどんなところに感じていますか?

田中「舞台なんですけど、すごく“人間の嫌な部分”が描かれていて。僕は人間らしさを感じられる作品が好きなので、そこが魅力ですね。まだ稽古も始まっていないので、これからどうなるか未知数ではありますが」

 

――ご自身が演じられるガイという役について、現時点ではどう捉えていますか?

田中「何も考えていません(笑)。いつものことですが、やりながらいろいろ感じて、役を作っていくので。だからこういうインタビューで、いつも何を話せばいいかわからないんですよね(笑)。特に今回の作品で僕が演じるガイは、(田中)哲司さんや野波(麻帆)さんが演じる、相手との役で変わるので、僕が作っていく必要性はあんまり感じていないんですね。作っていかない方が絶対おもしろくなるので。ガイは興味深い人物。出世に対する欲が僕自身そんなにないので、ガイをやったときにどう感じるか、今からたのしみですね」

 

――今回共演される田中哲司さんにはどんな印象をお持ちですか?

田中「僕のイメージは、「熱い、怖い、頑固」みたいな(笑)。実際に(田中)哲司さんとそんなに話したことがないので、どうしても作品や役柄でそういうイメージを持ってしまっているんですが、まっさらな気持ちでぶつかろうと思っています」

 

――作品の中で、ガイが映画にまつわる思い出を語るシーンがありますが、田中さんご自身にとって思い入れのある映画はありますか?

田中「『ネバーエンディング・ストーリー』とか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか、小さい頃に観た作品は今観てもおもしろいな、って思いますね。俳優を辞めようかな、って思ったときに窪塚(洋介)くんの『GO』を観て、やっぱり俳優やりたい、って思ったり、そういう自分の中で何か“残っている”作品はありますね」

 

――作品によって演じられる役の振り幅が大きい印象がありますが、ご自身の役柄を客観的に見ていかがですか?

田中「おもしろい役や作品に関わらせてもらっているな、と感じています。お芝居に関しては、台本を読むといつも「この役、俺にできねえよ」って思うんです。この前出演した『江戸は燃えているか』でも、三谷(幸喜)さん書き下ろしの作品でしたけど、「これどこが俺なんだよ!?」って思いましたし。でも、気が付いたらそういう風に思って演じていないので……。こればっかりはわからないですよね。今ちょうど、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)というドラマを撮っているんですが、台本を読んで、「俺このシーンできねえな」って思うんですよ。プレッシャーもあって、どうやっていいかわからない。できるかどうかわからないけど、現場行ってやって、気付いたら終わってる、っていう。でも、それは自分の中での理想の状態でもあるんです。その瞬間瞬間に嘘がなく生きていければ、そんなたのしいことはないので。その“瞬間”は僕一人で作るものではなく、演者さんやスタッフさんがいてできることでもあって。だからあんまり“形式的”なお芝居はしたくないなと思っています」

 

――敢えて役作りはせず、現場で感じながら役に向き合われているんですね。

田中「いざ始まると役のことしか考えていないので、そこの自分は信頼しているんです。よく、「ご自身といちばん近い役はなんですか?」とか、「素の自分と重なる部分はありますか?」っていう質問があるじゃないですか。「全部違うけど、全部僕ですよ」って言えるような俳優になりたいので、ちょっとずつその理想には近づいているのかな、と思います。前はもっと“役作り”をしていて、「形から入ろう」とか、そういうやり方が正解だと思っていた時期もあったので」

 

――それでは最後に、お客様へメッセージをお願いします!

田中「観に来た人だけが得をするのが、舞台ですから。おもしろくないわけがないので、ぜひ観に来てください!」

 

インタビュー・文/古内かほ