男劇団 青山表参道X 旗揚げ公演 『SHIRO TORA ~beyond the time~』 稽古場レポート

2018.06.11

オスカープロモーションに所属する多数の若手俳優・モデルの中から選抜された30名によるエンターテインメント集団「男劇団 青山表参道X」。彼らが結成時より掲げていた舞台の初日が目前に迫ってきた。
旗揚げ公演となる舞台『SHIRO TORA ~beyond the time~』は、時空を超えて現代に現れた白虎隊と、現代を生きる廃部寸前の演劇部の高校生たちとの交流を描く青春群像劇。フレッシュな俳優たちの熱気が高まる、稽古場の風景をレポートする。

 

5月31日(木)、都内の稽古場。
この日は曇り空ながら肌寒さも薄れてきており、体を動かすにはもってこいの気温。
男劇団 青山表参道X 旗揚げ公演『SHIRO TORA ~beyond the time~』の稽古場には、キャストほぼ全員が参加していた。ローチケ演劇宣言スタッフが訪れたのは稽古開始目前、メンバーたちがアップしている最中だった。

稽古場に入って、まず驚く。

「あれ?“男劇団”だけど……全然男臭くない?」

男子のみ30名の劇団。多少なりともムッワァアアとした部室的な空気が漂うものと身構えていたのだが、何か爽やか。そしてキラキラ。コンテストかオーディションの最終会場に迷い込んだのかと思うくらい、カッコイイ男子たちばかり。
それもそのハズ。「男劇団 青山表参道X」は、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリや特別賞に輝いたメンバーや、特撮ヒーロー、2.5次元ミュージカルで活躍したメンバーを中心に、ドラマや雑誌など芸能の多方面で実績のある面々が揃っているのだ。

稽古場をただ横切る男子すら、まるでドラマの1シーンのような決まり具合。ストレッチをして笑い合う二人組や、丸く輪になって台本を広げミーティングをする数人、何気ない仕草だけでも絵になるメンバーが集っている。さすが、平均年齢22.73歳、平均身長178.5cm。

その中でも、鏡を見ながら黙々と刀を振る栗山航の姿勢が光っていた。『牙狼<GARO>』シリーズの主役を演じ「ジャパンアクションアワード2016」にてベストアクション男優賞の優秀賞を受賞した栗山は、この集団でリーダーを務めている。

副リーダーの塩野瑛久もまた、凛々しく刀を構える姿に貫禄すら漂う。稽古前の僅かな立ち振る舞いの中にも、『獣電戦隊キョウリュウジャー』や舞台『戦国BASARA』シリーズで培ってきた殺陣の経験値がにじみ出るのだろう。

このふたりの他に帯刀しているメンバーは、最年少タイ記録で「仮面ライダー」シリーズの単独主演を務めた西銘駿のみ。
今回の舞台は「白虎隊」がテーマだが、隊士役はこの3人。他のメンバーは現代の高校生たちを演じる。
物語の中心となるのは、福島県の名門の男子校。
来月に控えた学園祭に向けて、様々な部活や同好会がパフォーマンスの練習や準備に励んでいる。生徒たちが目指しているのは、最も輝いた部活に贈られ、内外問わず最高のステータスとされる“シロトラ賞”。
部員不足から廃部の危機にさらされている演劇部は、この“シロトラ賞”を獲得することで廃部を免れようと打開策を練り、「白虎隊」を題材にした舞台を発表することに決める。
勉強のため、白虎隊が自決した地・飯盛山を訪れた演劇部員たち。そこに突然、タイムスリップした白虎隊の隊士たちが現れる……。

白虎隊の隊士と演劇部の部員たちを軸に、ストーリーは展開。戦いの渦中にいた若者たちと、現代を生きる若者たちが150年の時を超えて出会い、友情を育んでいく。
男劇団のメンバーそれぞれが属する部活と同好会も個性豊かで、歌やダンスといった明るく賑やかなシーンもふんだんに織り込まれる。脚本・作詞は東京パチプロデュースの亀田真二郎。演出は伊藤マサミが担当。
稽古の開始時間。
伊藤マサミから「はい、時間でーす」と声が掛かり、メンバーが一斉に「ハイ!」と返事をする。稽古場の空気が一瞬にして凛とした。
昨日まで稽古していたという、飯盛山のシーンからスタート。甦った白虎隊の隊士たちと演劇部のメンバーが出会う重要な場面だ。芝居に入る前、伊藤に出ハケの確認をする塩野。細やかなところから周囲を見ている様子が伺える。

伊藤の合図で音響が入り、芝居開始。

舞台の中心に立つのは、本作が舞台初出演・初主演となる飯島寛騎。第28回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞し、『仮面ライダーエグゼイド』で主演。以降もドラマや映画と出演作が続く注目株だ。
飯島が演じるのは演劇部部長・小野田陽斗。同じく演劇部に所属する小日向真希役を定本楓馬、蓮沼吉貞役を中村嘉惟人と岡宮来夢がWキャストで演じる。今風のノリとテンションで、軽快に場面を進めていく3人。
一方、彼らと対峙する白虎隊たち、安藤藤三郎役の栗山、間瀬源七郎役の塩野、伊藤悌次郎役の西銘は勇ましい物腰。現代の高校生たちとのギャップと、お互いの勘違いが可笑しみを醸し出す。

そこに、演劇部とは犬猿の仲であるダンス部メンバーが現れる。仲田博喜が演じるダンス部・部長役の名前は板垣泰二。白虎隊の敵であった新政府軍の指揮官・板垣退助と同じ名字であったことから、先程まで齟齬を感じていたハズの白虎隊の面々が、たちまち演劇部側に付く様子が愉快だ。

物語の起点のひとつとなる、明るく盛り上がる場面だが、シーン稽古を終えると伊藤からのダメ出しが開始。
「間延びしている」「台詞が抜けた。何度も言わさないで」「後ろは演技で埋めて欲しいけど、やられ過ぎると気が散る。舞台と映像は違うよ」と、次々に鋭いダメ出しが飛ぶ。
表情を引き締め、注意点を心に刻むように耳を傾けるキャストたち。出番ではないメンバーも、舞台袖の位置で食い入るように芝居を見つめていた時と同様、ダメ出しに耳を澄ませている。
伊藤のリクエストはセリフの言い回しに至るまで細やかだが、説明が簡潔で分かりやすい。何故そうあるべきか、そうすべきかの理由が提示されるので、キャストがしっかりとそれを飲み込み、消化していく様子が伝わってきた。
再度、同じシーンの稽古。すると先程よりグッとテンポが良くなった。一人ひとりが役を深めようと、チャレンジする意欲に溢れている。栗山がふと動いたアドリブの仕草に、伊藤が思わずといった様子で「いいね、それ」と笑った。

あっという間に時が過ぎ、休憩時間。
各自、補給や着替えを済ませて次のシーン稽古に備える。稽古場のあちらこちらから、台詞をブツブツと呟く声が聞こえる。

ひと度芝居に入れば、そこはまさしく「男劇団」。劇団として一度しかない旗揚げ公演に向けて、全員がひたむきに“演劇”に向き合う稽古場そのものだったのだと、認識を改めた。
とはいえ、張り詰めているだけではない。芝居中にトライする予定なのか、両足を揃えてあげて悶えるポーズをしておどける定本に、西銘たちが爆笑。休憩中には和気あいあいといった和やかな空気も流れていた。

次のシーン稽古は、学園祭で“シロトラ”賞を目指す演劇部メンバーたちが、白虎隊にしごかれてヘトヘトになる場面。
等身大の高校生たちと、現代に馴染み出している隊士。なんとなくコンビ感が出てきている様子が微笑ましい。白虎隊に圧倒されてばかりの男子高校生ではなく、時には現代男子に隊士たちが叱られる。どちらも「負けていない」パワーバランスが絶妙だ。
その中に時代の違いを匂わせる切なさもあり、ただの学園青春モノではない、この作品オリジナルの良さが漂う。そこに宇野結也が演じる、読書愛好会の斉藤良一が演劇部の脚本執筆を書き上げてやってきて、一同に気合が入る。

演劇部は、学園祭の栄光“シロトラ”を獲得することができるのか?
タイムスリップしてきた白虎隊の行く末は……?

最後まで見逃せない展開が盛りだくさんだ。

ダメ出しを経て、シーンの最初から稽古を繰り返す。
第一声のタイミングが合わず、「すみません!」と慌てる飯島。周りから「もう一回やろう!」と優しく声を掛けられる姿に、初舞台・初主演らしい初々しさが垣間見えた。
それでも伊藤からリクエストされた箇所に対しては、瞬時に演技のカラーを変えてみせる。飯島の柔軟性とセンスが煌めいていた。

オリジナル舞台は、原作モノの舞台化とは違い、観客に“愛着”を芽生えさせるところから始めなくてはいけない。だが、彼らはそのポイントを簡単に飛び越えている。
短いシーン稽古の中でも各自のキャラクター性が現れており、それぞれの強みや個性、そして弱点にも似た愛らしさが伺えた。この個性に、より磨きがかかった本番が楽しみになる稽古場取材となった。

 

公演は6月14日(木)~6月17日(日)まで、渋谷・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて。チケット発売中。

 

取材・文/片桐ユウ