ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc1 Produced by TBS 橋本さとし インタビュー

東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京で上演される、劇団☆新感線の『メタルマクベス』、そのdisc1がいよいよ7/23(月)に幕を開ける。宮藤官九郎が脚本を書き、いのうえひでのりが演出するというこの異色のシェイクスピア作品、タイトル通りヘヴィメタル、ハードロック調の音楽だけにとどまらず、様々なジャンルの曲、様々な種類の笑いを散りばめた、てんこ盛りのエンターテインメントとなる。この舞台で“マクベス”の役まわりにあたる、主演のランダムスターを演じるのは、橋本さとしだ。古巣である新感線の舞台に立つのは実に21年ぶりで、おのずと力が入る橋本に意気込みを語ってもらった。

 

――今回、『メタルマクベス』という演目で新感線に出演できる、という話を聞いた時はまずどう思われましたか。

橋本「『メタルマクベス』の初演(2006年)当時は客席で観させていただいていて、「俺も出たかったなー」と思っていたんですが、まさかこの作品で自分が新感線に復活できるとは思っていなかったので、本当にうれしかったです。だけど僕としては、いのうえさんのGOサインが出たらいつでもどんな作品でもなんでもいいから新感線に戻りたい!と、心の準備だけは常にスタンバっていた21年間だったので。なんせ僕の20代は、ずっと新感線に費やしてきたようなものでしたからね」

 

――しかも今回は観客席が360°回転する、IHIステージアラウンド東京という劇場での上演です。

橋本「そう、まさに独特の機構を持つ劇場で。噂に聞くと、どうやら舞台裏でたくさん走らないといけないらしいんです。僕、方向音痴なので迷子になるんじゃないかと、周りからとても心配されています(笑)」

 

――脚本は宮藤官九郎さん、演出はいのうえひでのりさんですから、シェイクスピアが原作とはいえ、相当ハジけた内容の作品になりそうですね。

橋本「僕、宮藤さんの書かれた脚本に出させていただくのは、今回が初めてなんですよ。もちろん演出はいのうえさんなので当時の新感線での自分らしさというものも出しつつ、やっぱり新たな面も見せられたらと思っているんです。宮藤さんのセリフまわしや、ストーリー性という魅力に委ねさせてもらいながら、自分としてもいろいろと発見していきたいです」

――本番に向けて準備していることは。

橋本「まずは心の準備から入って、稽古前からウォーキングとかして徐々に体力をつけていって。体重も落としたほうがいいんですかねえ……。以前、劇団にいた頃に比べると10キロくらいは増えてしまったので、あの頃に近いくらいにまでにしないとアカンかなと思っているんです。せっかく新感線の舞台に立つなら、当時みたいにガリガリの僕を見せたほうがいいのかな、と」

 

――昔は、かなり痩せていましたものね。

橋本「痩せてましたよね~。まあでも今の、脂身たっぷりのメタルをお届けするのでも良いのかなとも思いますが」

 

――20年以上経っていますから、身体的にも精神的にも大人になっているでしょうし(笑)。

橋本「そうですよ。芝居って、どうしても人間性とか生きざまが出てくるものなので。この20年間、僕がどう生きてきたかというものも、自然と出てくるのではないかと思います」

 

――滲み出ますね、きっと。

橋本「アホな部分だけが、滲み出てきたりしてね。まあ、それはそれで新感線での橋本さとしが復活した!って思っていただけそうですが(笑)」

 

――そう言われると、新感線ではお馴染みだったアホなキャラクターは、他の場所では全然出していないような。

橋本「こう見えて意外と僕、『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンとかやっていたりするんですよ!(笑) でも、新感線時代の僕を知る方が帝国劇場に観に来ると「おまえが帝国劇場の真ん中で立ってカーテンコールやってるところが一番面白かったよ」なんて言われていましたし。シャーロック・ホームズとか、難しい謎を解くような賢い役をやっていた時には楽屋に中島かずきさんが来てくれて「時代は変わったねえ、おまえが謎を解くってどういうことだよ、漢字もあまりちゃんと読めなかったおまえが!」って言っていましたし(笑)。そういう感想を聞くたび、あの頃の自分にはいつでもすぐ戻れるなと思っていたので、その環境にいよいよ今回は戻れるわけですから、また思いっきりバカになれそうだなという気がしています」

――そしてdisc1のランダムスター夫人を演じるのは、『二都物語』(2013年)と『マーダー・バラッド』(2016年)の時に共演されたこともある、濱田めぐみさんです。

橋本「めぐちゃんとは既に別の作品(『二都~』)でも夫婦役を経験しているんですよ。彼女の舞台に対する想いにしても姿勢にしても本当に素晴らしいですし、歌も演技もただうまいだけじゃなくて魂が入っていますし。本番で、全力で投げかける球をバチーって受けることをお互いに楽しめる関係性だとも思います。その上、ふだんはとても気さくで可愛らしい方なので。きっと今回もまた、舞台を降りたあとも含めて一緒に楽しく遊べるんじゃないかな、と思っています。めぐちゃんが舞台に立つと、その周りには渦が湧くみたいに空気が動くんですよ。そのくらいのエネルギーがあるから。今まで劇団☆新感線でめぐちゃんを見たことがなかったのが不思議なくらい、すごくマッチするはずです。とにかくめぐちゃんらしくやっていただけたら、それで絶対に大丈夫だと思っています」

 

――またdisc1、disc2、disc3と、3パターンの座組の『メタルマクベス』が誕生することに関してはいかがでしょう。

橋本「disc2の尾上松也さんと共演したことはまだないんですが、『エリザベート』でルキーニを演じている時の松也さんを拝見したことがあって。やはりひとつひとつの動きというか、表情ひとつとってもすごく残像が残るんですよ。コミカルな芝居もお上手で、コミカルな中にも決めるところはすごく決めてくる。説得力もあって、お客さんの目をひく役者さんだな、さすがやなあっていつも思います。そして(浦井)健治は、カッコよすぎますよね。きれいで、しかもカワイイだなんて卑怯ですよ。人となりも天然さんでふだんはふわーっとしているけど、舞台に立った時の情熱は誰よりもアツくて。ミュージカルだけにとどまらず、超大作の作品やら、よくこんなセリフ覚えられるなっていうストレート・プレイやら、ものすごくがんばっていて勢いも華もある、とても眩しい存在です。そんなお二方と並んで、僕ひとりオッサンが混じっているんで大丈夫なのかなあ、と心配ですよ(笑)」

 

――三人の中では、一番年上ですね。

橋本「ダントツで、年上ですよ。彼らのほうが体力は充分あるだろうし、じゃあ、僕は一体どこで勝負すればいいのかなと、いろいろ考えるんですけれど。僕の場合はバカ一直線でやってきていて、とにかくぶち当たってナンボですからね。ケガしない程度に身体をいたわりつつ、劇団☆新感線と『メタルマクベス』という作品と、このIHIステージアラウンド東京という立ったことのない未知の劇場、すべての環境にぶち当たっていくしかないなと思っています。僕なんか、ひいたらアカン役者なのでね。あの二人に対抗するには、ロック魂で勝負するしかないですから! disc1で一発目だし、とにかくガンガンいったろかなと思ってます。ロック魂でガンガン飛ばして、しっかりと勢いをつけてから二人へバトンを渡していきたいですね」

 

インタビュー・文/田中里津子
Photo/村上宗一郎

ヘアメイク:小口あづさ
スタイリスト:JOE(JOE TOKYO)