舞台「八王子ゾンビーズ」稽古場レポート

2018.08.03

映画、ドラマ、情報番組のパーソナリティーなどマルチに活躍する三代目J Soul Brothers・山下健二郎の初主演舞台「八王子ゾンビーズ」が、間もなく初日を迎える。

脚本・演出を務めるのは、映画・ドラマの脚本や小説など様々なジャンルで活躍している人気放送作家の鈴木おさむ。脇を固める強力な俳優陣に加え、イケメンで陽気なゾンビを演じるのは旬の若手俳優たち。初日を数日後に控え、熱気の高まる稽古場を取材した。

 

ローチケの取材スタッフが稽古場を訪れた時は、通し稽古の真っ最中だった。
都内でも猛暑が続いた週の後半。それでも稽古場の誰一人集中力を途切れさせることなく、稽古に臨む真摯なカンパニーの姿があった。
稽古場には既に舞台装置が組まれており、所々に配置された墓石やお地蔵様が、この物語の主な場所が“墓場”であることを伝えてくる。

“音楽×ダンス×ゾンビ”をテーマにした、完全オリジナルストーリーの内容はこうだ。

 

――ダンサーになる夢が破れ、八王子の山奥のお寺に辿り着いたタカシ(山下健二郎)は、とある満月の夜にお寺の墓場でゾンビVS住職(駿河太郎)の壮絶な戦いを目の当たりにする。
気になったタカシは、再びゾンビたちがうごめく墓場を訪れる。しかしよく見ると、そこにいるゾンビたちは陽気でイケメンばかり。彼らは“満月にダンスをすることで成仏できる”というが、それを住職たちに邪魔されているらしい。
「俺たちにダンスを教えてくれ!!」とゾンビたちにせがまれ、タカシとゾンビたちの交流が始まる――

 

聞くところによると、鈴木おさむの稽古スタイルは「初日から通し稽古を繰り返して膨らませていく方法」とのこと。
そのためか、取材スタッフもかなり完成度の高い通し稽古を見学することになった。

主演の山下は、動作の確認のため衣裳を着用して通し稽古に参加中。
袈裟姿がしっくりくる落ち着きぶりで、長台詞を回していく。

山下を取り囲むゾンビたちには、あらすじ通り“陽気でイケメン”のキャストが勢揃い。
特撮ドラマや映画、舞台と活躍する久保田悠来を筆頭に、グランドミュージカルから2.5次元ミュージカルまで股にかけて活躍中の藤田玲と丘山晴己、若手俳優陣の中でも注目を集める高野洸と牧島輝、井澤巧麻、前田隆太朗。そして劇団EXILEの小澤雄太が、成仏を願う“ゾンビーズ”として山下にダンスレッスンを乞う。

山下を中心に据え、踊り始めるゾンビーズ。主題歌はm-flo、劇中曲は☆Taku Takahashiが担当。J-POPにノッて軽快に踊る彼らのシーンは、見どころのひとつとなりそうだ。
もちろん、見せ場はダンスだけではない。クライマックスに巻き起こる殺陣のシーンでは、ゾンビーズキャストの身体能力が遺憾なく発揮される。芝居でじんわりと泣かせるシーンもあれば、お互いのアドリブに肩を震わせている瞬間もあり、ゾンビたちの“イキイキ”ぶりにホッコリする。

脇を固める俳優陣の演技も見逃せない。
加藤啓と酒井敏也のトボけたやり取りには、稽古場でも爆笑が巻き起こっており、一緒の場面に立っている若手俳優の中には堪えきれないキャストもチラホラ。

早乙女友貴の剣さばきの美しさと、隅田美保(アジアン)の体を張った(?)ギャグは、稽古場でも光っていた。
RIKACOは芝居をしっかり締めつつ、若手俳優たちを優しく見守る。
駿河太郎は、ゾンビーズに立ちはだかる住職役として強い存在感を放つ。
駿河と山下が対峙する場面には凄みがあり、同時に強いメッセージ性を含んでいた。

鈴木おさむは正面からじっくりと稽古を見つつ、丁寧に台本を確認。

この日は照明を詰めている様子で「ここは彼と彼、それと彼には光を当てて欲しい」「この場面は明るい方がいいな」と、隣に座るスタッフに伝えながら展開を追いかけていた。

通し稽古が終わると、山下はセットに大の字。仰向けになって放心状態となっていた。
淀みのない台詞回しと姿勢で堂々たる主演ぶりに見えたが、怒涛の展開とアクション、ダンスでかなり消耗する模様。
しかし、その状態は1分も無く。
すぐに起き上がって「どうしても引っかかるシーンがあるんです」と鈴木おさむに提案。
ゾンビーズたちとのやり取りで、気になる間があるという。

山下が鈴木にその場面を説明していると、察した久保田が山下の隣に立つ。藤田や丘山も自然に立ち位置に付いて、山下の言葉に耳を傾ける。
タオルやボディシートで汗を拭いていた他のゾンビーズに、先輩ゾンビーズが「やろうか!」と声を掛けると、一同がサッと駆け寄ってきた。

山下が「今は段取りの都合で止まっているんですけど、この時に上手が空いていたら、タカシは逃げようとしちゃうと思うんです」と、役の心理を解説すると、鈴木が「じゃあ、ココに誰かが立ちふさがってみようか」と提示。ゾンビーズの面々がそれぞれの立ち位置を図りながら動き、調整に入っていく。

山下の芝居にかける熱意、その情熱を共有するカンパニー。
夏の暑さに負けない熱量が込められたステージになる予感がした。

 

上演は8月5日(日)から、東京・TBS赤坂ACTシアターにて。

 

©舞台「八王子ゾンビーズ」製作委員会
取材・文/片桐ユウ
写真/村上宗一郎

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