鈴木おさむ「山下健二郎は三代目の看板を背負って戦っている!」舞台「八王子ゾンビーズ」初日会見&ゲネプロレポート

2018.08.06

映画、ドラマ、情報番組のパーソナリティーなどマルチに活躍する三代目J Soul Brothers・山下健二郎の初主演舞台「八王子ゾンビーズ」が昨日、TBS赤坂ACTシアターにて幕を開けた。また、本番前にはゲネプロと初日会見が行われたのでその様子をレポートする。

 

まず、ゲネプロが始まる前に、出演の山下健二郎、久保田悠来、藤田玲、駿河太郎のほか、脚本・演出の鈴木おさむが初日会見に登壇。朗らかな雰囲気で会見がスタートした。
最初に、記者から現在の心境を尋ねられた山下は、込み上がる興奮を抑えるように「お客さんに早く見てもらいたいです」と誠実に応えると、「笑いだったり、演者の呼吸であったり、歌や踊り、心動かされる物語と全ての要素が詰まっていて、多くの客さんに楽しんでいただける作品になったと思います」と魅力を述べた。

本作は放送作家としてのみならず、映画や演劇の脚本、監督、演出とマルチな才能で活躍する鈴木おさむが「音楽×ダンス×ゾンビ」をテーマに手がけた完全オリジナルの舞台。

出演には山下のほか、久保田や小澤雄太(劇団EXILE)など若手俳優とともに、駿河、RIKACO、酒井敏也、隅田美保(アジアン)、早乙女友貴など幅広いタイプの豪華な顔ぶれが並ぶ。また、主題歌をm-flo、劇中曲を☆Taku Takahashiが務めるなど豪華なメンバーが集結した。

そんな座組の座長を務める山下の“座長っぷり”を尋ねられた八王子ゾンビーズの琉斗役を演じる藤田は「(山下は)分け隔てなく、同じ目線でみんなと接してくれたので、稽古場にクリエイティブな雰囲気が流れていた」と語り、同じく八王子ゾンビーズの仁役を演じる久保田は「山下さんがダンスにオリジナルのアレンジを加えたり、ダンスを教えながらみんなを引っ張ってくれて……、あと中華おごってくれました(笑)」と冗談を交えて山下の様子を明かす。

また、寺の住職・孔明役を務める駿河は「下積み時代を経て様々な経験をされているので人の痛みがわかる座長で、それって最高だなって(笑)」と語っていたが、どことなく羽吹という役は山下の背景とリンクする設定になっているように感じられた。

舞台は、鳴かず飛ばずのダンサー羽吹隆(山下健二郎)が30才になったことを機に夢を諦め、自分を見つめ直すため八王子にある「希望寺」に体験入門するところから始まる。

高額の入門費用を支払い希望寺の門を叩いた羽吹であったが、希望寺の住職・孔明(駿河太郎)から言われていた「満月の夜は外を出歩いてはいけない」という言いつけを破り、寺の墓場でこっそりダンスをしていると、希望寺にいた謎の剣客・一刃(いちは)が孔明に連れられゾンビに斬りかかる場面に遭遇してしまう。

ゾンビ退治を終えた孔明は一刃とともに「ここで見たものは忘れろ」と言い残し去っていくのだったが、浮浪者の太山(酒井敏也)が現れ「明日、もう一度ここに来い」と意味深な様子。次の夜、羽吹は訳も分からず墓場に行くと再びゾンビたちの群れが現れ、山下に「ダンスを教えてくれ」とせまるのであった。

彼らは「八王子ゾンビーズ」という元ヤンキーの集まりで、今は住職に邪魔をされ成仏できないまま、ゾンビとして夜な夜な悲嘆にくれていたのだった。また、成仏するには満月の夜に、希望寺の本堂にある月の石をかざし、ダンスを踊らなくてはいけない。そのため羽吹にダンスのレッスンを請うのであった。渋々事情を飲み込んだ羽吹は八王子ゾンビーズたちにダンスを教えることに。こうして羽吹と八王子ゾンビーズたちの交流が始まるのであった……。

あらすじだけ聞くと、突飛な設定に聞こえるかもしれない。しかし、鈴木おさむらしいユーモラスなセリフ運びと山下の自然な人間味あふれる演技によって、めくるめく「八王子ゾンビーズ」の世界が違和感なくアップテンポに展開されていく。

初日会見で鈴木は見どころについて「山下くんがゾンビたちにダンスを教える場面が面白いです。多分お客さんも一緒に山下くんからダンスを教わっている気持ちになれるだろうし、ゾンビたちの悪ふざけも楽しめるはず」と述べていたが、山下とゾンビたちのアドリブありの等身大なやり取りは、見ていて面白おかしく、また、つい見とれてしまうような可愛げがあった。
実のところ、ゾンビを舞台で表現するのは難しい。それは、やはりゾンビのリアリティーの問題である。映画やドラマなど映像作品では「ゾンビ」=「ゾンビ」として表現できるのだが、舞台では「ゾンビ」が「ゾンビを演じる俳優」に見えてしまうのだ。

しかし、鈴木おさむが作り上げたオリジナルゾンビは、心があって、個性があって、ラップでフリースタイルバトルもすれば、ダンスもする。一般的なゾンビの先入観を覆す、“鈴木おさむ節”の効いたコミカルでユーモラスなゾンビたちには何一つ違和感がなかった。むしろ愛着が湧き、ゾンビの出現が待ち遠しくなるほどであった。

そんな鈴木は初日会見で俳優としての山下を絶賛。「売れてる人の共通点って『根性がある』ってことだとぼくは考えている」と切り出し、「自分の知らない座組みに入るって怖いと思うんですよ。でも、山下くんはそこに突っ込んでいく勇気と根性、そして何より三代目の看板を背負って戦っている感が半端なくて、その姿がゾンビのみんなや出演者を引っ張っていたと思います」と太鼓判を押す。

それに対して山下は「(鈴木)おさむさんが、顔合わせの日に『みんなで青春を感じながら作っていきましょう』と仰ってくれて、僕もそういう青春をこの作品で感じたかったし、結果、稽古場でみんなとめちゃめちゃ青春を感じながら一体となって作ることができたので、早くその成果を舞台でお見せしたいです」と照れくさそうにしつつも、座長として誠実に応える。

また、山下はダンスについて触れ「ダンスに関してはなめられたくなかったので、みんなを“ダンス”のレベルまでもっていけるようギリギリまで攻めました」とコメント。また、現在のダンスの点数を聞かれると「100点」ときっぱり。「あとは本番を見たみなさんに判断していただきたいのですが、自信があります」と自信を露わにしていた。

事実、m-floと☆Taku Takahashiが書き下ろした楽曲に合わせて踊る山下と八王子ゾンビーズたちのコンビネーションは必見の仕上がりであった。さらに、山下が「(早乙女)友貴に怒られながら特訓した」という、殺陣のシーンは日本のアクション文化とゾンビが融合した臨場感あふれる場面となっていた。こちらも見逃さないでほしい。

最後に山下が「この夏最高の舞台にできるように頑張るので、みんなで青春を感じてどうぞお楽しみください!」と意気込み、会見を締めくくった。

まさしく、本作は山下と八王子ゾンビーズたちの青春譚であり、ダンスを介した彼らのかけがえのない交流にはゾンビものらしからぬ感動を覚えるだろう。

 

また、本作では「応援上演」という新しい試みが施され、舞台の途中ではオーディエンスも手拍子や物販のタンバリンを叩いて、羽吹&ゾンビたちと一体となって舞台を盛り上げられる場面がある。オーディエンスも一緒になって「八王子ゾンビーズ」の物語で青春を感じてほしい。舞台「八王子ゾンビーズ」は8月19日(日)まで、TBS赤坂ACTシアターにて上演となる。

 

取材・文/大宮ガスト
©舞台「八王子ゾンビーズ」製作委員会

 

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