劇団た組。第17回目公演『貴方なら生き残れるわ』 加藤拓也&藤原季節 インタビュー

ステージ上でバスケットボールの白熱の試合が繰り広げられる!?
毎公演話題の劇団た組。、若手注目株・藤原季節を主演に迎えた最新作

作品ごとにガラッと印象の違う作品を提示している劇団た組。の主宰、加藤拓也。2018年は7月に衝撃作『心臓が濡れる』で話題を集めたばかりだが、早くも11月に次回作『貴方なら生き残れるわ』を上演することが発表された。今回のモチーフは、バスケットボール。またしてもこれまでと違う方向性の表現に挑むステージが展開されそうだ。主演は、昨年の劇団た組。の公演『まゆをひそめて、僕を笑って』で舞台初主演を果たした藤原季節。その藤原と加藤に、この新作がどんな舞台になりそうかを語ってもらった。

 

加藤は野球部出身、藤原は剣道部出身でバスケはほぼ未経験。そこで、本格的な芝居の稽古が始まる前にはバスケの練習期間が設けてあるという。

加藤「芝居中、バスケのゲームをそのままステージでやることになるので、練習してもらいます。もちろんセリフもありつつ約2時間、基本的にずっと走っているようなことになるので、もしかしたら実際にバスケの試合をやるよりもしんどいかもしれません(笑)。本番を迎える11月には、キャストはみんな筋肉がバキバキになっていると思いますよ」

藤原「今回も、まったく油断しちゃだめだなと覚悟しています。僕自身、脚本を読んで泣いたのが2回目だったんですけど、今回の『貴方なら生き残れるわ』は、読むたびに毎回泣いてしまいますね。人によるとは思いますけど、誰にでも刺さる内容だと思います。高校時代の部活動って、みんな通ってきている道じゃないですか。そして昔の、青春時代のことに縛られたまま生きている人も多いと思うんですよね。登場人物に感情移入ができて、そういったどうしても忘れられない想いに繋がるものがあったらたぶん相当、胸に響くものがあると思います」

 

と、観客だけでなく出演者の心をも大きく揺さぶる作品を生み出し続ける加藤だが、実は本人としては「誰かに何かを伝えたくて演劇をやっているわけではないんです」と言い切る。

加藤「“何かを伝えたい”だなんて、なんだか上から目線のような感じがしませんか? こっち側がそんなに偉いわけでもないのに。だから“伝える”と言うよりも“ただ、思ったことを言っている”みたいな感覚なんです。」

 

その加藤と藤原は、1歳違いのまさに同世代。 

藤原「加藤さんはいつもものすごく真面目に作品を作り続けているので、同世代のクリエイターとして尊敬していますし、刺激ももらっています。そして藤原季節という役者、僕のことを最も知ってくれている演出家でもあるので、信頼もしています。最近の公演のお客さんの感想をチェックするとみなさん「やっぱすごいな、加藤拓也!」という感じで絶賛されていて。なんだかちょっと悔しいなって思うくらいです(笑)。『まゆをひそめて~』の時も「“愛”というものに中指を立てる作品だ」と言っていたのに、結局はその描きたくないと言っていたはずの“愛”が一番描かれる作品になっていて。僕は本番中そのことに気づいて、ちょっとニヤニヤしていました(笑)。そういう皮肉さ、面白さもあるので、今回もそうやって中指立ててること自体が褒められるという逆説があり得ますね。ホント加藤さんは、いや~な感じのおじいちゃんになりそうですよね、褒めても褒めても「迷惑だ!」って言っていそう(笑)」

 

今回の出演者は男ばかりの27人という大所帯。そしてこの8月早々にはバスケ特訓もスタートするとのことだが、どうやら藤原にはプレッシャーと共に過酷なミッションが課せられそうだとも。なんと芝居の本番中に、どうしてもゴールを決めなければならない場面があるらしい。

藤原「意味がよくわからないんですよ、台本を読んでいても。シュートが決まらないと一点差にならないシーンがあったりするんで「どういうことだろう?これ、演劇の台本だよなあ?」って(笑)。加藤さんはたぶん、自分が一番見たい場面をそのまま書いているんです。でもがんばりますよ、僕、やる時はやる男ですから!」

加藤「もう僕としては、今回は演出家としてではなく、監督として稽古場にいることになるのかも。稽古中、何度も吠えまくりそうです、今まで一度も吠えたことなんてないですけど(笑)」

 

今作もやはり、あらゆる意味での挑戦作になることは間違いない。

藤原「『まゆをひそめて~』の初めての本読みの時、自分なりに読み込んでいったつもりだったのに「僕が書いたキャラクターと全部逆だった」と加藤さんに一言で一蹴されたんです。めっちゃ傷つきつつも(笑)、その自分の頭の中でイメージしていたものとは全然違う場所まで力強く連れて行ってくれて、おかげですごく面白くて新鮮な経験ができました。だから今回もいろいろなことをたくさんイメージしていき、それがどう変わっていくかを見てみたいという単純な好奇心があります。それにまた前回のように新しい自分に会わせてくれるのかな、というのも楽しみのひとつです」

加藤「もちろん、季節とまた一緒にできることは僕もとてもうれしいです。それと音楽で『まゆをひそめて~』の時と同じく、谷川(正憲)さんに生演奏で入っていただくんですが、演奏と歌の新たな形を試してみるつもりなので、このことも今からすごく楽しみなんですよ」

 

インタビュー・文/田中里津子

 

※構成/月刊ローチケ編集部 8月15日号より転載

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