THE CONVOY SHOW vol.35 『星屑バンプ』
今村ねずみ・本田礼生 対談

左:本田礼生 右:今村ねずみ

ダンス、歌、タップ、楽器演奏、そして芝居……様々なパフォーマンスを組み入れたステージで、人々を魅了し続ける男性エンタテインメント集団「THE CONVOY(ザ・コンボイ)」。
去年、東京・博品館劇場にて絶賛を集めたvol.33『星屑バンプ』が、2018年に全国を渡る。作・構成・演出を全て手掛けてきている主宰・今村ねずみと、vol.32『asiapan』からTHE CONVOYに加わった本田礼生の2人が、作品への意気込みを語った。

  1986年から「走り出したら止まらない」を合言葉に、独自のエンターテイメントショウを繰り広げてきたTHE CONVOY SHOW。
2017年に上演された『星屑バンプ』は、青春期を越えて尚、夢を追い続ける中年たちと、若き青年たちの出会いから始まる物語だ。圧巻のダンスパフォーマンスや歌唱シーンを織り交ぜながら、“夢に生きる事に老いも若きも関係ない”をテーマに掲げたストーリーが全ての世代の胸を打った。

本作の全国ツアーに対して、今村ねずみは「“今回だけで終わらせたくない、続けていきたい”というのは、去年作っている段階から思っていました」と明かす

今村「公演を終わる度に“もっと、もっと!”と思うのがTHE CONVOY SHOWですし、やればやるほど作品自体も成長していくのが演劇なので。全国に持っていきたい、という想いはスタッフを含めて全員が思っていましたね。今回その想いが叶って全国で公演が出来るというのはとても幸せなことです」

今村の隣で、その言葉に頷くのは25歳の本田礼生。ミュージカル『テニスの王子様』で注目を集めその後も順調にキャリアを重ね、ダンスの上手い若手俳優として注目される一人だが、“THE CONVOY”の現場は未知の体験ばかりだった模様。

今村「初稽古の時はヒドかったよね(笑)」

本田「思い出したくないほどヒドかったです(苦笑)」

今村「vol.32『asiapan』(2017年2月)の時から入ってやってはいたけど、ひとつの役を通してやるのは『星屑バンプ』が初めてだったから。THE CONVOYのセッションのし方とか、そういうところが初挑戦になったんだろうなと思う」

本田「やることの多さもありますけど、とにかく集中力や視野の広さが必要とされるので、稽古が終わったらもうグッタリしていました。でも大変じゃない稽古の方が怖いですし、行くと楽しい! と思えるし、とにかく熱い稽古場でした。言葉では言い表せないくらいハードではありましたけれど(笑)」

今村「稽古場の朝は俺たちオッサンが早くて、礼生は稽古場にはいるんだけど、稽古場に来てからオムライスを食っていた」

本田「朝、弱いんです(苦笑)」

今村「年取ると早くなるよ! それからみんなでアップして、踊って芝居して、つなげて返して……を毎日みっちり。何人か落ち込んで、時には落ち込んだ者同士が慰め合って?」

本田「僕の場合は、落ち込むヒマはなかったです!」

今村「そうだったか(笑)。でもその始まりを知っているからこそ、舞台で彼らを見た時に“こんな風になるのか!”と驚いたんですよ。伸びしろマックス、いやマックスどころか、やればやるほど伸びしろがどんどん伸びていく。そうすると、一緒にやっているオッサンたちも伸びしろを出してくる(笑)。彼らとのセッションはとても良い刺激になります」

本田たちを採用したオーディションを振り返り、「コイツとだったら一緒にできる、というメンバーを選びました」と今村は語る。

今村「8時間くらいあるオーディションだったので、その時間を一緒に過ごせば大体見えてくるんですよ。礼生は終盤の芝居で誰よりも楽しみ出して、一番、THE CONVOY SHOWに携わろうとしているなと感じました」

本田「ダンスの科目が未経験のジャンルのダンスだったので、全く出来なくて絶対に落ちたと思っていたんです。でもオーディションですけれど芝居に関してダメ出しをしていただいて、とてもありがたくて。今自分がやれるものを全部出したいと思ってやっていました」

今村「オーディションの時は、THE CONVOY SHOWを見たこともないのに受けに来てたけどね?(笑)」

本田「実は、劇場に行って見たことはなくて、ビデオで見ました。そんな僕みたいなヤツが二度と生まれないために(笑)、この全国を回る『星屑バンプ』で、より多くの人に実際に劇場で見ていただきたいと思っています!」

その『星屑バンプ』。間を置かずしての再演となるが、今村は曲目や作品自体を「あえて変えよう、という意識はない」という。

今村「どう考えても、このシーンではこの曲しかない! というところまで初演の時に突き詰めて考えていたので……というのは自分でいうのもアレなので、たぶん礼生が言ってくれると思うんですけど」

本田「はい、曲を変えるなんて考えられないです!(笑) でも本当に、全てに理由があるのがねずみさんの作品なので。順番から何まで変えられないものだと思います」

今村「みんなで必死に通した芯があるので、簡単にはブレないですね。流れもセリフと同じように体に入っているので、もし変えたら気持ち悪いと思う。それだけ『星屑バンプ』という柱はぶっといものが出来ていると思います」

一方で「必然的に変わるもの」として挙げたのが、新キャスト加入による空気感。
新キャストの加藤良輔が加わることで、今村は「去年とは違う、今年限りの『星屑バンプ』になると思います」と宣言した。

今村「つくり手側が役者側に近付くというセッションがあるので、意図せずとも変わってくるとは思いますね」

本田「一人変わると全く違うものになるのが舞台。その変化が刺激にも勉強にもなるので、楽しみです」

今村「僕らは30年やってきて、彼らは数年というキャリアの差はあるけど、THE CONVOY SHOWはそこにいるヤツが全て。年数ではないんです。今、一番輝いているヤツが強い。その意味では、初参加のキャストも前回出ていたキャストも全員一緒です」

本田「僕、役者仲間たちから“羨ましい”って言われるんです。こんなにキャリアの差がある方々と密にやらせてもらえる作品は滅多にないので。でも臆していたら何もできないですし、“同じプレイヤーだ”と思わないとやれないので、その覚悟を持って毎回挑んでいます」

今村「THE CONVOY SHOWって、必ずワンラインになるシーンがあるんです。それはキャリア関係なく、みんな同一線だよ、という意味。その時に、今の礼生が言ったように思えていないヤツがいたら、どこか引けちゃうんです。でも彼らと一緒にやっていると、“今時の若い奴らは”なんて言葉はないんだなと思います。やるヤツはやるんだなと思ったし、自分たちの20代の頃と比べると、彼らの方が断然行儀がいい(笑)。彼らは彼らで揉まれてきている証を感じる時もあります。ただ単純に若いから、という言葉は彼らには当てはまらない。今のメンバーに出会えて良かったです。彼らには、たまに思い出してくれたらいいよ、という話をしています(笑)」

本田「絶対に思い出します! 30代40代、そして50歳になった時の明確な目標を目の当たりに出来るのは、なかなかないことだと思うので」

今村「大丈夫、軽々と越えていくよ! まだまだ行きますよ、本田礼生は。キレイ、カワイイで終わる役者じゃない。ちゃんとやるヤツだということも知っているし……って言うと、他の若い子たちにジェラシーが沸くんだけど(笑)」

本田「(笑)」

公演は9月7日(金)東京・博品館劇場にて開幕し、大阪、札幌、新潟、仙台、福岡、名古屋を巡る。

本田「歌って踊ってお芝居して、ということだけがTHE CONVOY SHOWの凄さじゃない。バランス力がすごいんです。特に、芝居のラストの方に“これがTHE CONVOY SHOWなんだ”と僕が思っているシーンがあるので、そのパワーを劇場で目にしていただけたらうれしいです」

今村「最近、THE CONVOYを知らない人から“EXILEさんの前身だよね”と言われたことがありました。“男版・宝塚”とか“ジャニーズ・シニア”と言われたこともあります。そういう要素もあるので否定はしないのですが、そこだけを切り口にされてしまうのはちょっとツライ(苦笑)。THE CONVOY SHOWは“THE CONVOY SHOW”。この歳になったら図々しく言おうと思うようになりました。まだご覧になっていない方には、騙されたと思ってぜひ一度観ていただきたい。こんな集団は他にないと思います。そして去年観た方にも今年ならではの『星屑バンプ』をお見せできればと思いますし、長年応援してくださっている方には、その時その時のTHE CONVOY SHOWを見ていただきたいと思います」

取材・文/片桐ユウ