『越路吹雪を歌うスペシャルコンサート「愛の讃歌」』 製作発表レポート

2018.03.02

坂東玉三郎が「愛の讃歌」を披露。 
『越路吹雪を歌うスペシャルコンサート「愛の讃歌」』 製作発表を開催

歌舞伎俳優の坂東玉三郎が、2月28日、『越路吹雪を歌うスペシャルコンサート「愛の讃歌」』の製作発表に出席した。同コンサートは、4月~5月にかけて、NHKホール(東京)、フェスティバルホール(大阪)などで開催される。

コンサート「愛の讃歌」は、越路が残した歌の遺産、歌のバトンを次の世代に引き継ぐという熱い思いのもと、玉三郎が、元宝塚トップスター、ミュージカル俳優とともに送る、スペシャルコンサートだ。アコーステイック編成のオーケストラとともに、シャンソン、ミュージカルの名曲を届ける。

世界的に賞賛を受ける、五代目坂東玉三郎の活躍はもはや歌舞伎界にとどまらない。2017年3月には、敬愛してやまない越路の三十七回忌追悼特別公演に出演。越路の晩年の代表作でもあった、アズナヴールの名作「妻へ」を熱唱し、シャンソニエとしての評価を高めた。11月には、シンガー・玉三郎の根幹を表したアルバム『邂逅 ~越路吹雪を歌う』の発表に至っている。

『越路吹雪を歌うスペシャルコンサート「愛の讃歌」』は、この『邂逅 ~越路吹雪を歌う』の発売を記念して行われるもので、玉三郎をはじめ、6人の元宝塚歌劇団トップスターと、ミュージカル界の注目のスター、海宝直人が参加を果たす(公演本番は全国各地で出演者が異なる)。

玉三郎とシャンソンがなかなか結びつかないかもしれないが、「ある程度の年齢になると、声がでにくくなるんです。そこで、15年くらい前からボイストレーニングを始めました。10年ほどたった頃、『ここまでやったのなら、歌ってみれば』と言われて」と、歌をはじめたきっかけについてもあかした。

銀座「ブルガリ プライベート ラウンジ」で行われた、製作発表会見では、玉三郎をはじめ、コンサートに出演する、真琴つばさ、姿月あさと、大空ゆうひ、水夏希、霧矢大夢、凰稀かなめ(元宝塚歌劇団トップスター)、海宝直人(ミュージカル俳優)が参加。玉三郎は、「お恥ずかしながら」と、「愛の讃歌」を披露し、その後、宝塚歌劇団元トップスターらと海宝とともに、「すみれの花咲く頃」を歌った。「すみれの花咲く頃」は、越路も在籍していた、宝塚歌劇団を象徴する楽曲だ。歌唱のあと、玉三郎は、「70年代後半に、越路さんが一人で歌われていたことを覚えています。とても印象的でした」と、過ぎし日に思いを馳せた。

玉三郎は越路について、「若い頃からあこがれの存在。越路さんのコンサートには何度も通い、日生劇場では、(越路のマネージャーを務め、また、「愛の讃歌」をはじめ越路が歌ったシャンソンの訳詞を手がけた)岩谷(時子)さんにチケットを切ってもらったこともあります。どのくらい前に楽屋入りするか、家での過ごし方、作曲家との付き合い方など、越路さんの舞台裏を勉強して、舞台人のあり方を学びました。越路さんが、50、60年代に歌った歌は、今の人たちにとっては、新曲に近いかもしれません。心の入った歌を歌います」と意気込んだ。

 

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また、ほかの出演者もそれぞれコンサートへの抱負、越路への思いを語った。

「越路さんがいいたからこその企画。越路さんへの感謝を込めてつとめたいと思います。私は生前の越路さんにお会いしたことのないので、玉三郎さんから越路さんのエピソードをお聞きするのも楽しみにしています」(真琴)
「大好きな越路さんの歌を歌えるのは幸せ。心をこめて歌います。越路さんが宝塚出身であることをご存知でない方もいらっしゃると思いますが、ドラマも放映され、注目されている今、いいタイミングでのコンサートだと思います」(姿月)
「録音や録画されたものからでも、越路さんの思いは伝わってきます。生きるエネルギーを歌に注ぎこんでいたのだと思います」(大空)
「同じ時代に生きられることが光栄だと感じていた、玉三郎さんと一緒の舞台に立てるのは夢のようです。緊張しています」(水)
「このような場に立たせていただいて光栄です。私たちの歌への思いを伝えたいです」(霧矢)
「大先輩である越路さんの歌を、上級生や海宝さんと歌えるのがうれしいです」(凰稀)
「今まで歌ったことのないジャンルの歌を歌えるのは本当に楽しみです。越路さんのことは、もちろん存じ上げていましたが、今回改めて録音を聴き、歌い手として目指すべき方だと実感しました」(海宝

なお、コンサートでは、越路が歌った歌はもちろん、越路も生前、数々の作品に出演した、ミュージカルの楽曲も歌われるという。唯一、玉三郎とともに、全公演に出演する真琴からは、「玉三郎さんがあの曲を? という意外なミュージカルナンバーも、私たちと一緒に披露します」という発言も。また、玉三郎は衣裳にも相当こだわっているとのことで、「間もなく、イタリアから生地が届きます。みなさん、背が高いので、舞台で映えると思います」(玉三郎)。衣裳も見どころのひとつとなりそうだ。

 

コンサートは、4月8日(日)、群馬・伊勢崎市文化会館の公演を皮切りに、全国11カ所をまわる。

 

写真:岡本隆史
文:長谷川あや