★『六月博多座大歌舞伎』会見レポートが到着★

襲名披露公演『六月博多座大歌舞伎』
二代目松本白鸚丈、十代目松本幸四郎丈のアツイ会見をレポート!

 

6月2日(土)に初日をむかえる『六月博多座大歌舞伎』。今回は高麗屋の襲名披露という大舞台で、襲名としては異例の通し狂言から古典の名作まで幅広い演目と、ベテランを中心とした豪華な役者陣がそろう。公演を前に松本幸四郎改め二代目松本白鸚丈、市川染五郎改め十代目松本幸四郎丈が福岡市内で会見を開いた。

 

松本幸四郎改め二代目松本白鸚丈(以下 白鸚丈)は

「7年前に『加賀鳶』で伺い、その後『ラ・マンチャの男』、『アマデウス』と博多には楽しい良い思い出がたくさんございます。博多座で松本白鸚として、息子の十代目松本幸四郎とともに襲名興行ができようなんて考えてもおりませんでしたが、みなさんで実現していただいて、自分としては奇跡のような感じがいたします。歌舞伎を愛するみなさんが起こしてくださった奇跡ですね。そんな気持ちを持ち続けて6月の博多座にうかがいたいと思います」とまずは挨拶をした。

 

市川染五郎改め十代目松本幸四郎丈(以下 幸四郎丈)は

「今年の1月に十代目松本幸四郎を、父、倅とともに三代同時に襲名披露興行をさせていただきました。博多という町は私にとりまして第2の故郷です。母が博多出身でございまして、僕の体には半分の血が博多でできてございます。また博多座が誕生いたしましてからは歌舞伎の1ヶ月興行を年に2回、2月と6月にさせていただいておりまして、定期的に博多に伺えるのは、本当に私にとって嬉しい限りでございます」と話し、好きな博多銘菓の名を次々と上げながら、博多に縁の深い幸四郎らしいエピソードを披露した。

2018年1 月、東京・歌舞伎座を皮切りに始まった襲名興行。現在の心境を問われると、37年前にも同じように、三代同時襲名披露が叶ったことに触れ、白鸚丈は、

「37年前、私が幸四郎になるときにも三代揃っての襲名でした。(今回もまた三代と)奇跡のような襲名です。歌舞伎座では、みなさんよく演(や)ってくださって、みなさんでつくっていただいた襲名でした。その時の気持ちをそのまま6月の博多座にもっていきたいです」と語った。

 

一方、幸四郎丈は、

「1月は車引の松王丸、勧進帳の弁慶、2月は大蔵卿、熊谷陣屋という本当に大きなお役で、高麗屋にとりましても大事な演目でご披露させていただきました。言い方を変えればこれ以上高いハードルはないというハードルでスタートしたように思っております。思えば、この役を自分が受け継ぐ、これから勤めていくんだという宣言の意味でのご披露だったかと思います。幸四郎襲名披露というのは一生に一度しかないものでございます。いつか振り返ったときに大変だったなと思えるぐらい、大変なことを自ら探し、積極的に大変にしよう、というのがこの披露公演のテーマです。博多座においてもそういう思いで勤めたいと思います」と襲名披露興行にかける思いを述べた。

 

続いては演目の見どころについて語ってもらった。まずは昼の部の『伊達の十役』。スーパー歌舞伎で知られる、市川猿翁(三代目猿之助)丈が復活させた人気演目で、かつて幸四郎丈は染五郎時代に博多座でも上演している。幕開けのはじめには解説がある上、わかりやすいストーリーと、早替り、宙乗りなどスペクタル感満載。歌舞伎を初めて見るという方にはぴったりの作品だ。

「『伊達の十役』は博多座という劇場があるからこそ、九州で上演ができる作品でございます。今回は襲名披露興行のため、特別版的な感じにいたします。三浦屋女房の役を、博多座襲名披露興行版は三浦屋亭主という役に変えましてその役を父が演じます。松嶋屋のおじ様(片岡仁左衛門丈)をはじめ、鴈治郎兄さん、魁春兄さんなど普段ではありえない配役で、驚いています」と幸四郎丈。

 

母と子の情愛や、勧善懲悪など、芝居の部分でも歌舞伎らしい歌舞伎がしっかりと楽しめるのも魅力。幸四郎丈が一人十役を演じ分けるのだが、なかでも注目は、女方の大役ともいわれる、乳人(乳母)の政岡と仁木弾正だ。

「十役の中で、政岡は最高といっていい役だと思っています。政岡を演じたいがために、この演目をかけるといっても過言ではありません。これは真女方の気持ちで演じたいと思います。仁木弾正は拵えにも高麗屋の紋や柄が入っているように、松本幸四郎にとっては大事な役です。宙乗りはただ上がっていくだけのように見えますが、(ある意味)これ以上の宙乗りはないと思います。いちばん行き着いた形の宙乗りで、難しいとは思いますけど、みなさまを非現実の世界にお連れすることができればと思っています」と演じどころについて話した。

 

夜の部では舞踊の大曲、『春興鏡獅子』を勤める。これについて幸四郎丈は、

「鏡獅子は大好きな踊りです。でもこれほど苦しい踊りはないです。突然、呼び出されてここで踊りなさいといって、踊らされるという設定からして苦しいんですけど、これだけ明日も踊りたいと思える踊りはありません。毎日鏡獅子を踊っていたいと思えるぐらい、好きな踊りです。弥生と獅子については、私は二役という解釈で勤めます。弥生でどれだけきっちり踊り、後シテでどれだけ力強く大きく踊れるかが、大事だと思います」と自身の解釈を踏まえて語ってくれた。

 

白鸚丈は夜の部の『魚屋宗五郎』を演じる。江戸時代の庶民の日常などを描いた、いわゆる世話物。セリフもわかりやすく、歌舞伎にまだ馴染みの薄い方でも、存分に楽しんでいただけるだろう。ちなみに高麗屋が世話物の名作である『魚屋宗五郎』を演じるのはめずらしいこと。これも見逃せない。

「『魚屋宗五郎』はたいへん面白い芝居でございます。襲名も高麗屋の芸も大事だけれど、やっぱり一番大事なのはお客様に喜んでいただけるような演目だと思います。高麗屋はいわゆる勧進帳の弁慶が知られていて、世話物とは縁遠いとお思いでしょうが、私の大叔父に十七代中村勘三郎がいまして、私の父の兄弟に二代目尾上松緑という叔父がいました。この二人の大叔父と叔父が六代目尾上菊五郎を崇拝しておりました。『魚屋宗五郎』は松緑の叔父は何十遍も演じたほどなんですね。ですから高麗屋には魚屋宗五郎のような世話物の血も流れているんですね。この演目は演じている役者は面白くて楽しくてしかたないんですよ。お客様にもそう思っていただけるような舞台にしたいですね」と白鸚丈。

 

また、過去の経歴に驕ることなく、二代目白鸚として、九代目幸四郎時代、九代目市川染五郎時代よりももっといい仕事をみなさんにお見せしたいと、プロフェッショナルな一面も覗かせながら、

「(魚屋宗五郎は)簡単そうに見えるんですよ、鏡獅子や『伊達の十役』に比べるとね。ところがこれが簡単にはできないんですよ。いわゆる世話物の間がある。『伊達の十役』何するものぞ、『春興鏡獅子』、何するものぞと。役者というのは子であろうと孫であろうと祖父であろうとライバルですから。『魚屋宗五郎』がいちばんだと、一番面白かったと思わせます」と六月の博多座の舞台にかける熱い思いを滲ませた。

 

期待が高まる『六月博多座大歌舞伎』。ほかに夜の部は片岡仁左衛門丈や中村鴈治郎丈、尾上梅玉丈らが出演する『俊寛』、幹部俳優による口上がある。

チケットは4月14日(土)10:00より発売開始!公演の詳細は下記よりご確認ください。