OOPARTS vol.3「HAUNTED HOUSE」 鈴井貴之 インタビュー

“お化け屋敷”を舞台にしたとにかく笑えるコメディー

 

「水曜どうでしょう」(HTB)のミスターこと鈴井貴之のソロプロジェクト「OOPARTS(オーパーツ)」。今春幕が上がる第3弾企画は、お化け屋敷のバックヤードを舞台にした、とにかく笑えるコメディー「HAUNTED HOUSE(ホーンテッド ハウス)」だ。

鈴井「今回はじわじわ物語が始まるようなものではなくて、“つかみはオッケー!”みたいな芝居を作りたかったんです。僕自身、テレビ番組などで扮装する機会が多いこともあって、奇抜な衣裳とかメイクとか、見た目が強烈なキャラクターがいっぱい出てきたら面白いんじゃないかなというアイデアがあったんです。そんなシチュエーションを探していて思いついたのが“お化け屋敷”でした。営業が終わった後のバックヤードで、メイクを落とさず着替えもしないドラキュラやフランケンシュタインたちが真剣に口論している光景って、バカバカしくていい。『これだ!』と思いました」

 

実はこの“お化け屋敷”という設定を思いつくまでに、紆余曲折あったとか。

鈴井「僕はいつも舞台の本番期間中に次の舞台のアイデアを思いつくんですが、まさにOOPARTSの前回公演中に構想がいくつかあったんです。そのなかのひとつは、プロットを作って、スタッフとも打合せをして、これで行こうってところまでいった。でも、台本を10ページくらい書いたところで、『なんだか面白くないな』ってなっちゃってやめちゃったんです(笑)。その時点でもう劇場を押さえていたから、みんな『おいおいおい』って青ざめてましたけどね」

 

本来のお化け屋敷は客を怖がらせてなんぼのものだが、鈴井が手がけるお化け屋敷は「笑わせてなんぼ」らしい。

鈴井「コントみたいにげらげら笑えるバカバカしいものにしたい。劇場に来てくれるお客さんは、仕事とか学校、プライベートなことでもたくさん大変なことを抱えていると思うんです。ニュースを見ても、どれが本当でどれがウソかわからない世の中になっているのに、楽しむために観に行った芝居にまで問題提起されたら、ちょっと酷だなと思うんですよ。そういう自分も考えさせるようなお芝居を作ったりしてきましたが(笑)、今回に限っては、とにかく2時間笑ってもらいたい。リフレッシュできたねって、帰りの電車のなかで思い出し笑いできるようなものにしたいんです」

 

渡辺いっけい、森崎博之、上地春奈、藤村忠寿など、お化け屋敷という設定に負けない出演者を迎える

鈴井「森崎はね、彼から『出たい』って言ってきたんですよ。お寿司屋さんでご飯食べてるときに、たまたま次回の舞台の話になって、フランケンシュタインが出てくるって話したら、『それ僕でしょ。僕見るからにフランケンシュタインでしょ』って。『水曜どうでしょう』の藤村くんにしても、『出せよ』って強引に言われましたね(笑)。いっけいさん、森崎、藤村、僕と、いい年こいたオヤジがバカをやろうとしてるところに、若い俳優さんもテンション高く乗ってきてくれたらいいですね。上地さんはかなりの破壊力がありますから。もしかしたら、初日と千秋楽はまったく違う芝居になってるかもしれない。現に僕自身がいちばん同じことをやらないですからね。いたずらもするし」

 

「Out Of Place ARTiSt」という正式名称のとおり、OOPARTSではほかとは違うライブ感を大切にしてきた鈴井。今回はどんな気持ちで?

鈴井「劇団としてどんなものを作っていくかという僕の思いは、いったんリセットしてしまっていいと思っているんです。僕がどういう思いでこの作品を作るかということよりも、来てくださるお客さんがどう受け取ってくれるかのほうが大事だから。今回の芝居も、どうやったらみんなが喜んでくれるのか、観に来てよかったと思ってくださるのかを探りながら作っています。作り手のメッセージ性だとかそんなのはもう勝手に自問自答しとけばいい(笑)。それよりも、みなさんとともに楽しく!劇場のお客さんと一緒に、毎日毎ステージ完成させていく舞台になれば。みなさん、とにかく2時間笑いに来てください!」

 

インタビュー・文/まつざきみわこ
スタイリスト/鍛冶古翔三(Yolken)
ヘアメイク/白石義人(ima.)

 

【プロフィール】

鈴井貴之
■スズイ タカユキ ’62年、北海道赤平市出身。大学在籍中から演劇活動を始め、現在までタレントや構成作家として数々の番組の企画に関わる。’10年より表現の枠を問わないソロプロジェクト「OOPARTS」を始動。