爍綽と Vol.2『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』│佐久間麻由&萩田頌豊与 インタビュー【ロングVer】

俳優の佐久間麻由が立ち上げた企画ソロユニット「爍綽と」。第一弾で劇団アンパサンドの安藤奎を作・演出に招いて注目を集めたこの団体の第二弾公演が2025年1月末に浅草九劇にて上演。劇団・東京にこにこちゃんの萩田頌豊与を迎え、人気作品『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』をリメイクする。

萩田作品の「衝撃的な面白さ」に重い腰を上げた

──佐久間さんがソロユニット「爍綽と」第二弾で萩田さんに作・演出を依頼した経緯から伺わせてください

佐久間 そもそも「爍綽と」は、続けていくことを目的としていなかったんです。第一弾で作・演出をお願いした安藤奎さんの作品(劇団アンパサンド『されど止まらず』)を観たときに脳汁溢れるほど面白くて、安藤さんとご一緒したい、という想いひとつで始めたものなので、第二弾はそもそも考えていなくて。実際に第一弾公演を終えたあと、おかげさまで大好評で、自分の中でも燃え尽きた感があって。演劇を観る数も減っていたほどだったんですよ。

──そんなにも

佐久間 そんな中で、「面白いよ」と聞いていた東京にこにこちゃん(『シュガシュガ・YAYA 』)を観に行ったら、衝撃的に面白くて!帰り際、全くお知り合いじゃないのに萩田さんに「すごく面白かったです」と伝えて。それから「一緒にやってみたいなぁ」「お稽古はどんな感じなんだろう」と興味を膨らませながらもその想いを寝かせていたんですが、その気持ちが半年経っても変わらなかったので、意を決してお声がけしました。

──萩田さんはそのお誘いを受けてどう思われましたか?

萩田 僕は、安藤奎が好きなんです。夢に出てくるほど。

──それはすごく好きな感じがします……

佐久間 萩田さんと会っていて、安藤さんの名前が出ない日はほぼないですね。本当に好きなんだなぁと思うし、私ももちろん好きなので、これはもう安藤さんがつなげてくれた縁なのかもしれません(笑)。

萩田 面識がないとき、安藤奎に一方的に「ライバルだと思ってます」と伝えたこともあって。そしたら「私もです」と言ってもらえて。そんなこともあって、第一弾が安藤奎の第二弾にお声がけいただけたのは本当に嬉しいことだなと思いました。東京にこにこちゃんでは主宰としてやっていますけど、今回は佐久間さんが隣に立ってくれている。その形がとても心強いなと。

──『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』は2022年に東京にこにこちゃんで上演した作品のリメイクですが、なぜこの作品をと?

萩田 僕らはハッピーエンドを謳っている劇団なんですが、実はこの作品は厳密にいうと世間一般のハッピーエンドとは違う。悲劇の中にも幸せだった過程があった、という切ないお話なんです。だからこそ、劇団から離れた別の枠組みでこそ、のびのびと上演できるんじゃないかと思いました。それと、これはロミオとジュリエットをモチーフにした作品なんですが、佐久間さんがジュリエットという役柄にぴったりだという思いもありました。もうひとつ、初演をやったシアター711の天井が低くて、「ステージにバルコニーを作りたい」という僕の希望が、結局5cmくらいの段差にしかならなくて……。ぜひもう一度やりたいなと。

──萩田さんの「この作品で」というリクエストに、佐久間さんもすぐ同意を?

佐久間 そうですね。萩田さんにとってもやりたいことがやれる場所であればいいな、その後の劇団公演にプラスになるものがあればいいなという想いでいるので、新作にしようかという案も挙がったり、今作を含め3作品ほど過去作も読ませていただいたのですが、私もこれがいいなと思いました。

まぬけさと感動が調和する「絶対の自信作」

──キャストが多彩で、魅力的ですね

佐久間 萩田さんと相談しながら決めました。内田紅多さんは人間横丁というコンビでお笑いをやっている方ですが、絶対に合いそうだなと思って。この前、東京にこにこちゃんの芝居を観て、「すごく面白かった」と言ってくれたので、ほっとしています。清水みさとさんは約5年ぶりの舞台出演で、この作品を選んでいただけて嬉しいです。ブルーさんや吉増さんが出てくださるのも夢のようで!

萩田 今回のキャストの方はほぼはじめましてなので、緊張しています。ブルー&スカイさんも観て褒めてくださって、うれしかったです。絶対に褒めない人だと思っていたから(笑)。海上学彦くんは、カッコいいのに抜けてるところがあって、ロミオにぴったりだと思っています。地蔵中毒の東野良平は、僕が初めて外部で演劇をやったときに出てくれた大好きな俳優なので、今回一緒にやれてうれしいですね。

佐久間 加えて、これまでの萩田作品を支えてきた最強メンバーも!このキャストに集まっていただけたから、もう間違いない!と思っています。再演ではありますが、脚本は今回のキャストさんに合わせて書き直していただくのですが、萩田さんと話すたび「書き直し」のパーセンテージがどんどん上がっていくんです。最初は、「90%くらい書き直します」と言ってたけど、最近は「99%」と。これはもう新作なのかも(笑)。

萩田 僕、これまで再演は一度しかやったことがないんですが、その時に初演ですごくウケた箇所を残したら、全然ウケなかったんです。笑いって気づかないうちに進んでいたり変わっていたりするから、やっぱり書き直さないと。まして、このキャストの前でスベりたくないから。

──大半を書き直すことで、もっとも変わるのはどんな部分でしょう?

萩田 スピードですね。最近、どんどんスピードが速くなってきていて。昔は1公演の台本が60ページくらいだったけど、最近は80〜90ページ、でも上演時間は一緒、という感じなんですよ。それに比べると、『ワンス・アポン〜』の初演はまだゆっくりだった。だから今回はかなり速くなると思います。まぬけさと感動が調和すれば、最高の作品になります。本当、この作品って超面白いんですよ。めちゃくちゃ自信作です。

佐久間 私が言わなきゃいけないところを本人に言わせてしまってすみません(笑)。上演を発表したときの反響で、今作にはたくさんのファンの方がいるんだなと改めて感じました。初演が好きな方にもそうじゃない方にも、もちろん観たことがない方にも、新しい『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー!!』をぜひ観ていただきたいです。

──佐久間さんが感じる、萩田作品の魅力はどこにありますか?

佐久間 萩田さんの書く作品には、「生死」が漂っているんです。それを描きつつ、ハッピーエンドにするんだ!という心意気が大好きです。あらゆる手法で楽しませてくれるところもたまらないですね。作品はもちろん、お話をしてみて萩田さんの人となりも素晴らしくて、重い腰を上げる大きなきっかけにもなりました。ソロユニットで、ひとりで公演を動かしていくのってなにかとしんどいなぁと思う面もあるんです。でも萩田さんが会うたびに「なんとかします」「大丈夫です」と言ってくださるので本当に心強いです。その心意気は作品にそのまま反映されているなと思っています。「本当に面白いから観に来て」と自信を持って言える作品です。

──先ほど、佐久間さんから「萩田さんにとってもプラスになることがあれば」というお話がありましたが、今回の公演を経て、萩田さんは何が得られそうですか?

萩田 そうですねえ……。富は置いておいて、名声はほしいですね。

佐久間 頑張ります(笑)。

取材・文/釣木文恵
写真/明田川志保