劇団7枠13番 第2回公演『ミックスアンドマッチ』|水上京香&秋山皓郎&佐伯亮インタビュー


「新しい女性」を目指す主人公の姿を「僕たちらしく伝えていけたら」

秋山皓郎と佐伯亮を中心に結成された劇団7枠13番。2024年6月に旗揚げ公演『折り合いの終幕』では、「役者」をテーマに出演者4人による会話劇を繰り広げ、大成功のうちに幕を閉じた。それから約1年、第2回公演が決定。『ミックスアンドマッチ』と題された今回の公演は、主人公が現代における「新しい女性」を目指す物語を描く。脚本・演出の秋山と佐伯、そして本作の主人公を演じる水上京香に、公演への想いを聞いた。

 

――最初に秋山さんと佐伯さんから、昨年の旗揚げ公演について聞かせてください。実際に自分たちで作品を上演してみて、どのようなことを感じましたか?

秋山 初めてだったので、実感があるかなと思っていたのですが、それよりも次の公演に向けて「もっとこうしたい」という気持ちが芽生えていました。終わった後の達成感よりも、次はどうしようという気持ちが強くて、それをずっと考えていたように思います。もちろん実際に自分たちでユニットを立ち上げ、作品を上演するというのは想像していた以上に大変で、余裕がなくなっていたと思うので、そうした反省を踏まえて第2回公演を行っていきたいと思います。

佐伯 あれもこれもやらなくてはいけない。役者としてステージにも立つので、役者同士のセッションを一番に考えなくてはいけない中で、初めてのことだらけで、気づいたら初日を迎えていたという感覚でしたが、初日に目の前に広がっていた景色は絶対に忘れられないものになりました。感動しましたし、これからの僕の糧になるような瞬間だったと思います。旗揚げ公演に出演してくれて、今回、舞台監督として入ってくれる村松洸希さんが、「自分の劇団の旗揚げ公演の初日は今でも忘れられない」と言っていましたが、まさしくその通りでした。

秋山 (佐伯は)初日は特に全く違う演技をしてましたからね(笑)。見たこともないほど輝いていて。稽古からそれをやってほしい(笑)。

佐伯 あはは(笑)。それ、めちゃくちゃ言われました。元々、稽古と劇場で全然違うと言われることがあるんです。稽古中もそれができたらいいんですよね、そうすればさらに上にいけるとは思っているんですが(笑)。


――客席とステージの距離が近い劇場だったので、それも芝居に磨きがかかる要因の一つだったのではないですか?

秋山 確かに、お客さんの力はすごく感じました。稽古でやってきたものをお客さんに観てもらうことで完成したという気持ちはすごく大きかったですし、ありがたいなという気持ちでいっぱいでした。

佐伯 こんなに一体感がある劇場はなかなかないなと思いましたね。しかも満席で。お客さんの力はめちゃくちゃ大きかったと思います。


――今回、第2回公演も決まりました。かなり早いペースでの2回目の公演となると思いますが、いつ頃から次の公演を考えていたのですか?

秋山 旗揚げ公演が終わってすぐに劇場を押さえました。

佐伯 年に1回は公演をしたいと話していたので、その形になっていると思います。秋山の師匠に「3回、劇団公演をするまでは劇団と認めない」と言われていたのもあって(笑)。

秋山 3回やるまではまだ「青春」なので(笑)。

佐伯 なので、とりあえず3回やるまではと。


――そうすると、秋山さんは旗揚げ公演が終わる頃には、次はどんな作品にしようというイメージはすでに出来上がっていたのですか?

秋山 ずっと考えてはいましたが、こうした作品にしようと決まったのは、昨年末くらいです。どんなテーマでどんなキャストでということを半年くらいは考えていました。旗揚げ公演は、男4人の芝居でしたので、女性を入れたらどうかと考えて、女性をテーマにしたところからスタートしました。


――なるほど。水上さんは、初めてお話を聞いたときは、どのように感じましたか?

水上 素直に嬉しかったですし、驚きました。

佐伯 僕と水上は、大学の同級生なんですよ。18歳のときに知り合って。

水上 当時、同じ駅に住んでいたんです。大学に入って、ホームシックにならずにすんだのは、佐伯を含めて一人暮らしをしていた、近所に住んでいた同級生たちのおかげなので、そうした仲間だった佐伯からお仕事のお話をもらったということが嬉しいし、驚きでしたし、小っ恥ずかしいです(笑)。


――これまでお芝居で共演したことはなかったんですか?

佐伯 なかったですね。僕たちは日芸(日本大学芸術学部)の映画学科の演技コースを卒業しているので、学生時代は実習でペアを組んだり、一緒に作品を作ったりということはありましたが、その程度です。

水上 学校の授業でしかないので、こうしてしっかりとお芝居をするのは初めてなんです。


――そうするとお互いにまた新しい一面が見られそうですね。

水上 どうなるのかなとドキドキしています。それに、私自身が久しぶりの舞台出演です。舞台に出演したいという思いはずっとありましたが、離れれば離れるほど、時が経てば経つほどプレッシャーが大きくなっていて、どんどん遠ざかっていたんです。なので、お話をもらったときはすごく嬉しかったけれども、同時にできるのかなという不安もあって。でも、10年以上付き合いのある佐伯が呼んでくれたからこそ頑張れるかもしれないと思って、背中を押してもらいました。


――秋山さんと佐伯さんは、女性をテーマにしようと考えたときに、すぐに水上さんが思い浮かんだのですか?

佐伯 そうですね。話をしていく中で、「こういう子がいるよ」と紹介して、秋山からもいいねと言ってもらったので、水上本人に話してみるところからでした。いつか何らかの形で一緒にお仕事をしたいと思っていたので、自分の劇団に大学の同級生を呼べるというのはすごく嬉しいです。

水上 私も声をかけてくれたことが嬉しかったです。劇団を立ち上げたことは知っていたんですが、そこに出させてもらえるとは思ってもいなかったのでびっくりで。気づいたらここまで来ていました(笑)。楽しみです!


――今回、「新しい女性」がテーマということですが、旗揚げ公演ともまた色合いの違う作品になるのでしょうか?

秋山 前回は4人の男たちの話でしたが、今回は女性が入ることでまた変わると思います。ちょうど作品のテーマを考えていたときに、「新しい女」という女性解放運動のワードを聞く機会が多く、演劇ではイプセンの「人形の家」もありますが、僕たちは現代に生きる人たちに観ていただくので、「現代に生きる新しい女性」をテーマにしていきたいと思います。


――旗揚げ公演は、アドリブが多いのかなと感じた台本でしたが。

佐伯 実はあれ、8割くらいは台本通りなんです。

秋山 “おふざけパート”がアドリブだったくらいで、他は台本ですね。観に来て下さったお客さんからも「アドリブなんですか?」という感想は多かったです。日常的な空気感を大事にしたいと思っていたのもあると思います。

佐伯 前回は「役者」がテーマで、「30歳を目前にした主人公の役者が、このまま役者を続けるのか、違う道を進めるのか」という話だったので、それぞれが実際に考えていることや悩みをテーブル稽古で話したところから派生した部分もありました。

秋山 そこで出た話を膨らませたりしたので、よりリアリティや日常感は出たのかなと思います。


――今回も同じ作り方を考えているのですか?

秋山 今回はそれとはまた違った作り方を考えています。タイトルに『ミックスアンドマッチ』とつけましたが、これはファッションで違う系統の洋服をコーディネートするという意味で使われる言葉なんだそうです。「男と女」を「人と人」と考えたとき、補い合う存在なのかなと思ったので、そうしたことを描いていけたらと思います。前回は役者でしたが、今回はより人にクローズアップしたいと思います。


――とはいえ、劇団7枠13番が作り出す芝居ですから、堅苦しいものではなく、どなたも楽しめるものになるのですよね?

秋山 全く堅苦しくないです!

佐伯 この劇団は楽しい作品づくりをしたいという思いがあるので、一見すると考えさせられるようなテーマであっても、僕たちらしく伝えていければと思っています。


――水上さんは今回のテーマを聞いていかがですか?

水上 まだ分からないことだらけですが、最近、性別というのはもちろんくくりとしては存在していても、男女という2つには収まらない人たちがたくさんいることを実感するようになりました。ただ、ジェンダーを超えてそれを主張し過ぎて、全てを多様性で押し通したらいいわけではないという意見も見ます。今回、改めて多様性や、この世にある性についてどう向き合ったらいいのだろうと考える時間になるのかなと思っています。

佐伯 そんなに堅い話じゃない(笑)。

水上 でも、どうしてもジェンダーについて話すと堅苦しくなってしまいますよね(笑)。私も今年30歳になったので、改めてこうしたことも考えていきたいと思います。旗揚げ公演では、テーブル稽古があったとおっしゃっていましたが、もし今回もそうしたものやディスカッションの機会があるのであれば、腹を割っていろいろな話ができたらと思います。

佐伯 今のところ、我々は答えが出ないテーマばかりやっています。今回のテーマも、考え方は人それぞれです。第1回公演の「役者」もそうでしたが。


――「役者」というテーマの答えは、公演を終えても出ないですか?

佐伯 そうですね。とりあえず楽しいからやっているし、続けている。

秋山 一般的な答えは出ないけれど、自分の中の答えはそれぞれが持っているので、そういう意味では答えは出ているのではないかと思います。

水上 お客さんも作品をどう受け取るかは自由ですからね。

秋山 それが演劇の楽しいところだと思います。僕の考えに乗ってほしいわけではないので、いろいろなこと考えさせられる舞台になれたらいいなと思っています。


――先ほど、水上さんが腹を割って話したいとおっしゃっていましたが、今回もテーブル稽古やディスカッションを行う予定ですか?

秋山 そうですね。やっぱり演技の中で心を大きく動かせるのは、その人自身がもともと持っているものが見えたときなのかなと思います。普段から使っている言葉で言うセリフはやっぱり説得力がある。それに僕は、稽古前に雑談をしたいと思っているんです。みんなで空気感を揃えて楽しくやりたい。それはすごく重視しています。


――水上さんは、これまで映像作品でご活躍されてきた印象があるので、こうした作品の作り方はあまり機会がないのではないですか?

水上 そうですね。これまでの舞台では、1度だけ、演出家の方が作品についての知識を入れるための時間をとってくださったことがありましたが、ディスカッションをしながら作るという経験はないです。そもそも同世代の方と共演するということもあまりなくて。自分が一番年下ということが多かったので、いろいろと新しい経験になると思います。


――最後に公演に向けての意気込みと読者へのメッセージをお願いします。

秋山 最新作が最高傑作という気持ちを持って、常に面白いものを目指していく劇団でありたいと思っています。なので、第2回公演の今回は最高傑作になります!

佐伯 旗揚げ公演が成功したことで、第2回公演に繋ぐことができました。観に来てくださる方や関係者の方に感謝の気持ちでいっぱいです。その思いを背負って第2回公演も7枠13番らしく楽しくやっていきます。重いテーマに感じるかもしれませんが、リラックスした気持ちで観に来ていただける作品を作り上げていきますので、どうぞよろしくお願いします!

水上 久々の舞台になりますが、前回、舞台に出演した際も下北沢の劇場だったので、どこか帰ってきたような嬉しさがあります。10年来の友達との共演など、いろいろと新鮮な現場になると思うので、深く考えすぎず、たくさんのものを吸収して、風通しよく頑張っていきたいなと思います。ぜひ観に来てください。

 

インタビュー・文/嶋田真己