
6月9日(月)に開幕するミュージカル『梨泰院クラス』。韓国・梨泰院を舞台に、成功を求め格差や理不尽と戦っていく主人公を描いた漫画が原作で、ドラマ版も世界中で大ヒットした人気コンテンツだ。この物語の初のミュージカル化となる今回は、主人公パク・セロイを、歌・演技共に高い評価を受け『ザ・ビューティフル・ゲーム』『DEATH TAKES A HOLIDAY』などミュージカル出演が続く小瀧 望が演じる。
また、様々な人種が混じり合う自由な街・梨泰院を体現するように、日韓米のトップクリエイターが集結。その中で振付を手掛けるのがカイル・ハナガミ。YouTubeの登録者数498万人超、最も再生回数の多い動画は2.4億回超えという世界的コレオグラファーである。アメリカ・ロサンゼルス出身だが、祖母が日本人である影響で幼いころから日本文化に触れ、カイル自身も年に一度は来日していると語るように、日本との縁もある人物だ。
これまでにジェニファー・ロペス、ブリトニー・スピアーズ、アリシア・キーズ、ジャスティン・ビーバー、エド・シーラン、BLACKPINK、Red Velvet、aespaなど数々のアーティストの楽曲の振付を担当。中でもBLACKPINKにはデビュー前から関わり、彼女らを世界へ押し上げた立役者の一人と言われている。そんな彼が、初めて日本のミュージカル創作へ参加を決めた心境、本作『梨泰院クラス』の振付のポイントなどを語った。
――ミュージカル『梨泰院クラス』へ参加しようと思われた決め手は何でしょうか?
日本でミュージカルを創るのは初めてなのですが、日本のダンサー、パフォーマーの皆さんの仕事に向かう姿勢に感銘を受けておりました。それで参加したいと思いました。
――本作への参加は、カイルさんにとってどんな挑戦ですか?
僕にとってこの企画は、単に日本のミュージカルへ挑むということだけではなく、韓国の人たちを描いたミュージカルということで、2段階で翻訳しているものへの参加です。そこが一番の挑戦ですが、挑戦することは大好きです。
――『梨泰院クラス』という物語についてはどんな印象を受けましたか?
とてもクールで、いい物語だと思います。梨泰院は、多岐にわたるバックボーンを持つ人々が集い、共存する場所。アメリカにもこういう街はあるなと、いくつか思い浮かびます。
――今回の振付、ステージングでは、どのような部分に重点を置いていますか?
今回に限らず常になのですが、僕にとって何よりも大事なのは“人物”、キャラクターというものが中心にあることです。まったく異なる人物たちが豊かに描かれていますが、彼らがその時にどのように振る舞い、何を考えているのかを描くようにしています。それぞれのキャラクターのミュージカルナンバーがたくさんありますが、11曲の中でも彼らの軌跡をたどれるようにと考えています。

――今回のキャストの印象を教えてください
キャストは素晴らしい才能の持ち主ばかりで、本当にプロの方が集まっていると思います。初めて皆さんの歌を聞いた時は「鳥肌」が立ちました。本当に素晴らしいです。それぞれ個々に素晴らしい方々が一堂に会し、才能豊かな現場になっています。中でもノゾム(小瀧望)は本当にスーパースターですね。セロイという役を完全に自分のものにして、同時に原作に忠実なキャラクターとして描き出しています。また、彼のようなビッグネームな人が、あんなに謙虚で、みんなと手を取り合って仕事をしているということも素晴らしいと思っています。
――カイルさんは本作のみならず映画版『ミーン・ガールズ』の振付なども手掛けていらっしゃいますが、ミュージカルの振付の面白さはどういうところに感じていますか?
ポップソングとはまったくプロセスが違いますね。ポップソングの振付の時は、一人のアーティスト、一つのグループというものにフォーカスします。さらに、一つの物語を11曲かけて歌います。一方、ミュージカルには登場人物がたくさんいて、そのキャラクター一人一人がそれぞれ自分の物語を持ち、全体のストーリーを織り上げていく。そこがまったく違います。ミュージカルでは個々の俳優さんの才能を見つけ、それをどのように魅せていくかを考え、さらにそれぞれの物語を語っていく作業を味わえます。『梨泰院クラス』もそのようなプロセスを経て作っている最中です。ぜひ劇場でご覧ください!
取材・文/平野祥恵
【プロフィール】
■カイル・ハナガミ(Kyle Hanagami)
インターネット界を席巻するディレクター兼コレオグラファー。SNS総フォロワー数は800万人を超え、1動画あたりの平均再生回数は450万回にも及ぶ(YouTubeチャンネル:KYLE HANAGAMI YouTube)。
興行収入11億ドルを突破したパラマウントのミュージカル映画版「ミーン・ガールズ」の振付を手がけ、演出チームにも参加。コレオグラファーとして関わったその他の映像作品にその他の映像作品にはNetflix配信ドラマ「エミリー、パリへ行く」、オーブリー・プラザが主要キャストを務めたMGM映画「マイ・オールド・アス~2人のワタシ~」、Amazonプライム配信作品「赤と白とロイヤルブルー」、アカデミー賞ノミネート作品「フェイフェイと月の冒険」などがある。
音楽界ではBLACKPINK、ジェニファー・ロペス、ジャスティン・ビーバー、サブリナ・カーペンターをはじめとする世界的な人気アーティストの振付を手がけ、Google、Netflix、ディズニー、ジバンシィ、カルバン・クラインといったグローバルブランドとパートナーシップを結んできた。