舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』|ゲゲゲの鬼太郎役・荒牧慶彦 インタビュー

1965年の週刊少年マガジンの連載に始まり、漫画、アニメ、映画、小説、ドラマ、ゲームなど、半世紀以上にわたり多くの人に愛され続けてきた不朽の名作『ゲゲゲの鬼太郎』。2022年には舞台『ゲゲゲの鬼太郎』として上演され話題を呼んだ。その舞台版の新作、舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』が、水木しげる没後10年にあたる節目の本年8月に、東京:明治座と大阪:新歌舞伎座で上演される。今作では、鬼太郎たちと世界征服を目論む西洋妖怪の吸血鬼軍団との戦いが描かれる。前作に続き主人公・ゲゲゲの鬼太郎を演じる荒牧慶彦さんに、3年ぶりに鬼太郎役に挑む心境や役作り、新作の見どころ、共演者についてなど、たっぷり語っていただきました。

――舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』の公演が決まったときの心境から伺えますか。

「2022年の初演のときに、コロナ禍で何公演か中止になってしまったんですね。その悔しさがあったので、またこうして上演できることは、すごく嬉しく思っています。今回は再演ではなく新作で、ねずみ男役が前作の藤井隆さんから大塚明夫さんに変わられたり、前作では砂かけばばあを演じられた浅野ゆう子さんは吸血鬼カミーラという役で出演されますし、気持ち新たに、またたくさんの方々に観ていただけるように頑張りたいと思っています」

――2022年の公演で嬉しかったことは?

「やっぱりそれは、原作ファンの方々が舞台版の『ゲゲゲの鬼太郎』も愛してくれたことです。楽しんでくださっているのが見られたので、そこはすごく嬉しかったです」

――それは嬉しいことですね。荒牧さんが思う鬼太郎という人物の魅力はどういうところでしょうか。

「鬼太郎は幽霊族(現世の人類が誕生する遥か以前に地球を支配していた妖怪の種族)なので、妖怪と人間の中立にいる立場で公正なジャッジを下せるところが、僕はすごく好きです」

――鬼太郎を演じる楽しさはどういうところですか?

「楽しさよりも、国民のほぼ全員が知っているというキャラクターを演じさせてもらえるという嬉しさと、プレッシャーが強いですね」

――鬼太郎を演じる上で大切にされたこと、役作りで拘られたことは?

「鬼太郎独特のテンション感と、怪しげな雰囲気ですね。そういう鬼太郎らしさは今回も全面に出していきたいなと思っています。それから、原作の鬼太郎は少年ですけど、舞台では青年のイメージで演じています。あまり子供っぽくし過ぎず、少し経験値を踏まえた鬼太郎です」

――原作漫画やアニメはご覧になられていると思いますが、荒牧さんが思う水木しげる先生が描く妖怪の世界の魅力、『ゲゲゲの鬼太郎』の物語の魅力とは?

「妖怪って、日本人にとってすごく身近な、共に生きてきたような存在で、みんなに愛されていると思うんですよ。僕の周りでも、大学や高校の友達で、“実は『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪ファンで、『水木しげる妖怪図鑑』持ってるよ”って人もいて。“え!そうだったの?”って(笑)。やっぱり身近に根付いているんだな、愛されているんだなって、感じましたね。『ゲゲゲの鬼太郎』の物語の魅力っていうのは、時代を変えれば登場する妖怪も違うし、起こる事件も違うし、妖怪のする悪さも違う、そういう社会風刺を交えているところ。そこが世の中の方々に愛されているところだと思いますし、僕も好きな部分です」

――子供のころ、好きだった妖怪は?

「僕は昔から、ねずみ男が好きなんですよね。問題児ですが、彼がいるから物語が彩られる部分がたくさんあると思います。あとは、やっぱり鬼太郎は好きでしたね。舞台と全く関係ないところで言うと、キジムナー。ちっちゃくてマスコットっぽい感じが好きでしたね(笑)」

――『ゲゲゲの鬼太郎』はアニメ化、映画化、ドラマ化などもされていますが、舞台だからこそ楽しめるところを教えてください。

「『ゲゲゲの鬼太郎』に限らず舞台のいいところって、生身の人間がその役の空気感を作って、今ここで演じているってことだと思うんです。映像では味わえない、今ここで行っているっていう空気感そのものが舞台の素晴らしいところだなと思います。そして、僕ら演者だけじゃなくて、お客様が空気感を作ってくれるところ。あの舞台独特の「今ここでこの事件が起きているんだよ」っていうのを共有できるところが、やっぱりすごく好きなので。今回の舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』は、笑いはもちろん、ピリッとするところもありますし、少し怖いところもありますし、五感で楽しんでもらえるんじゃないかなと思います」

――新作ということで、新キャストの方々も加わります。楽しみにされていることや期待していることをお聞かせください。

「僕は、ねずみ男役で出演される声優の大塚明夫さんがやられているキャラクターが好きなんですよ。『ONE PIECE』の黒ひげとか、(ゲーム)『メタルギアシリーズ』のスネークとか、大ファンだったので、稽古場が今から楽しみです。あの声で、名前を呼んでもらいたいですね(笑)」

――仲のいい植田圭輔さんが吸血鬼エリート役、共演作も多い廣野凌大さんが人気インフルエンサーのムサシP役で出演されますが、今作について何かお話しはされましたか?

「植ちゃんは同じ事務所ですし、廣野くんも僕がやる作品によく出てくれていて。見知った仲なので、やるべきことをやるだけだねって。あとは、せっかく彼らがいるなら、僕らが得意としている殺陣も、この『ゲゲゲの鬼太郎 2025』の舞台で見せられたらいいね、みたいな話をしています」

――今作の脚本・演出を手掛けられる堤泰之さんの演出に関しては、どのような点を楽しみにされていますか?

「僕は、舞台では初めて演出をしていただくのですが、前作の演出の田村孝裕さんとは変わったものになるんだろうなと、思っています。とても楽しみです」

――今作では、鬼太郎たちと世界征服を目論む西洋妖怪の吸血鬼軍団との戦いが描かれます。荒牧さんが注目してほしい見どころは?

「視覚的に楽しみにしてもらいたい部分はもちろんなんですけど、『ゲゲゲの鬼太郎』ならではの部分も観てもらいたいなって思います。鬼太郎の良さって、少し怪しいというか、愚かさや醜さを包み隠さず表現するのが、『ゲゲゲの鬼太郎』だと思っているので。水木先生の世界って、人間の醜いところをしっかり描いて、「人間は愚かだな」と完結するじゃないですか。その部分も好きなんですよね。人間ってやっぱりそうだよね、と。もちろん、僕は人間が大好きですし、光の部分があると思っていますけど、闇の部分もあると思うので。そして決して妖怪だけが悪なわけではなく、人間も妖怪も、自分たちのエゴで動いている『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観はすごく好きで。水木先生が『ゲゲゲの鬼太郎』を通して伝えたかった部分は、舞台でもしっかり受け継いでやりたいと思います」

――今作の鬼太郎のキャラクタービジュアルがすごく素敵なのですが、ご自身のご感想は?

「前回からグレードアップさせてもらって、ちゃんちゃんこがより派手になっています!ウイッグも“荒牧くんに似合うような鬼太郎のウイッグを作ってきたよ”と言ってくださって。毛の跳ね方はより可愛く、前髪の具合はスタイリッシュに変化してます。衣裳もウイッグも進化しているので、すごく嬉しくなりました」

取材・文/井ノ口裕子