『熱海殺人事件』LAST GENERATION 46 今泉佑唯 インタビュー

つかこうへいによる初演から46年、春の風物詩「熱海殺人事件」が、「『熱海殺人事件』LAST GENERATION 46」と題し今年も上演される。キャストには今回で3年連続、木村伝兵衛部長刑事を演じることになった味方良介、昨年に引き続き出演する熊田留吉刑事役の石田明(NON STYLE)のほか、犯人大山金太郎役にlol(-エルオーエル-)の佐藤友祐、婦人警官水野朋子役に今泉佑唯がキャスティングされた。今泉は昨年11月に欅坂46を卒業して、初めての舞台出演となる。大役に挑む今泉に、その胸中を語ってもらった。

 

――今回、欅坂46をご卒業されてから初めての女優としてのお仕事になるかと思います。ご出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

今泉「舞台に出演すること自体が初めてで、ええっ!って思いました(笑)。とにかくビックリして、何も考えられなかったです。信じられない気持ちでいっぱいでした。舞台自体はミュージカルなんですが「アニー」を2回だけ観たことがあって、体全体で表現していて、歌の発声もまったく違っていたんです。私も舞台らしく発声しなければならないんだ、と思うと不思議な気持ちになりました。そういう舞台に私も立つ訳ですが…正直、まったく想像ができない。本当に未知なんですよね。逆に、何も染まっていないというところが強みというか、唯一の救い(笑)。初めての舞台なので、不安が大きいというか…不安しかないんですけど、不安を感じていてもしょうがないし、やり切りたいので。不安を感じすぎずに、楽しんで演じられたらいいなと思います」

 

――つかこうへいさんが手掛けた歴史ある演目の「熱海殺人事件」ですが、どのような印象をお持ちですか?

今泉「そういう歴史のある作品に出演できることになって、大変光栄に思っています。作品のイメージは殺人事件っていうタイトルなので、少し怖いようなイメージが最初はあったんです。でも、映像などの資料を拝見させていただいて、笑える部分もたくさんあったので、少し気がフッと軽くなりました。皆さんが一緒に踊っていたりとか、パッと揃うセリフがあったりとか、観ていてすごく楽しい気持ちになれたんです。でも、それを意識しすぎると真似になっちゃうので…。変に観すぎず、というのを今は心がけています。やっぱり、私らしく演じたいと思うので」

 

――今回出演するにあたって、今泉さんにどんなことが求められていると思う?

今泉「えぇ! 何だろう…全然わからない(笑)。でも表情が豊か、というのはよく言っていただけるので、舞台でもそれを活かせたらいいな。女優としての経験はほとんどないので、自分としても何を伸ばしていけばいいか分からないんです。これからやっていく中で、見つけていけれたらいいな、と思います」

 

――女優というお仕事には以前から興味があった?

今泉「欅坂46の時に、少しドラマに出させていただいたことがあったんですが、撮影していた時に自然に涙が出てきた瞬間があったんです。実際に使われた映像は別なんですけど…。でも、そのときに少し役をつかめたというか、すごく嬉しくなったんです。“泣くってなに?”ってそれまではずっと思っていたんですけど、演技をする流れの中で号泣できて、何か達成感もあったんです。そこから、演技をまたやりたいと思うようにもなりました。そう思っていたところに、今回の出演が決まったので、嬉しかったです。舞台は映像のお仕事とは違って体全体の動きが大切になってくると思いますし、発声も今こうやって会話しているような声では全然ダメだということはわかっているので…これからどんどん磨いていきたいです」

 

――憧れている女優さんはいらっしゃいますか?

今泉「映画の「スマホを落としただけなのに」がすごく好きで、北川景子さんの演技にすごく惹かれてしまって、3回も観に行っちゃいました(笑)。最近は、セリフひとつにしても“こんな言い方もあるんだ”とか、“この方はこんなふうに言うんだ”とか、気にして観るようにもなりました。正解は無いんだな、面白いな、と思い始めたばかりです」

――今回演じられる役・婦人警官水野朋子はどんな女性だと思いますか?

今泉「まだ、勝手なイメージですけれど…強い女性ですね。強さを出していきたい。でも恋の部分では色っぽいな、と思います。今まであんまり恋とかは無かったので、どう演じたらいいのか…。まだこれからですね」

 

――憧れている恋のイメージはありますか?

今泉「私、身長が低いので、背の高い方と身長差のある恋愛に憧れがあります。ちょっと見上げたりとか…でも、基本的にどなたでもほとんど見上げることになっちゃうと思うんですけど(笑)」

 

――水野朋子の恋の相手、木村伝兵衛部長刑事役の味方良介さんも高身長で身長差がありますね。味方さんの印象は?

今泉「今日は写真撮影で一緒だったんですが、いろいろと教えていただけました。ご迷惑をおかけしないように、必死についていきたいと思います。聞きたいことはたくさんあって、今日も少し聞いてしまったんです。覚えていると思ってもふと、ど忘れしてしまうことってあるじゃないですか。もし舞台上でそうなってしまったら、どうするんだろう?ってお聞きしたんです。そしたら、周りの方がサポートしてくれたりするから、ってお話してくれました」

 

――そういう信頼関係を稽古の中で作っていくということですね。そのほか、キャストにはNON STYLEの石田明さんが熊田留吉役で出演されますね。

今泉「石田さんは、お笑いのライブも観に行ったことがあって、芸人さんとしてのイメージが強いんです。だから、舞台ではどういう感じなのか気になりますね。アドリブがすごく多いと聞いたので、頑張って突っ込めるくらいになりたいですね」

――舞台に向けて、楽しみにしていることはありますか?

今泉「お稽古はすごく楽しみです。絶対にキツくて大変なことはわかっているんですけど、その過酷さを味わいたい。これまで、演技のレッスンとかワークショップとかも経験したことが無いので…。まだ何も癖もついていない状態なのでしんどい、ってなりながら本番を迎えたい。しんどいと思っているくらいが、すごく好きなんですよ」

 

――今、自分の中にある課題は何でしょうか?

今泉「恥じらい、ですかね。ちょっと恥ずかしいと思ってしまうところがあるかも。出来てないから、気持ちがマイナスになって、ちょっと縮こまっちゃう。でも、環境が変わったばかりなので、何を言われても、言われた通り、そのまま私はやり切ります。恥ずかしいとか思っていられないですから」

 

――欅坂46を卒業されて、気持ちに変化はありましたか? 今後挑戦してみたいことはありますか?

今泉「気持ちに余裕ができるようになりました。自分の考えがすごくしっかりしましたね。色々なことに挑戦してみたいですし、演技ももっとしてみたい。やってみたい役は…サイコパスな役! これも「スマホを落としただけなのに」を観たからなんですけど(笑)、成田凌さんの演技を観てそう思ったんです。サイコパス診断をやってみたりしました(笑)。10項目あるうちの4項目くらいが当てはまっていて、私、けっこうサイコパスかもしれないです…! その診断は、1つでも当てはまるとサイコパスらしいので」

 

――意外なはまり役になるかもしれないですね(笑)。最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします!

今泉「私のことを知らない方がほとんどじゃないかと思うので、この作品をきっかけに私自身のことも知っていただけたらいいなと思いますし、皆さんと最高の作品をお届けできるように努めてまいりますので、ぜひご覧いただければと思います」

 

インタビュー・文/宮崎新之