舞台『それってキセキ』ゲネプロレポート到着!

2025.08.01

北川尚弥、藤本洸大、丸山龍星、佐藤匠がGRe4N BOYZのはじまりを熱演

『キセキ』、『愛唄』など多くのヒット曲を持つGRe4N BOYZ。だが、私たちは彼らのことをほとんど知らないのではないだろうか? 2007年のデビュー以来、顔も名前も出さず、わかっているのはメンバー4人全員が歯科医ということだけ。ライブの熱さや言葉に込めた想いを知れば知るほどメンバーのことが好きになる。『それってキセキ』は、そんな4人との距離が今まで以上に近くなる舞台。

GRe4N BOYZの4人を演じるのはHIDE役に、舞台『刀剣乱舞』シリーズの北川尚弥、navi役に映画『ゲシュタルト崩壊』の藤本洸大、92役にミュージカル『新テニスの王子様』の丸山龍星、SOH役にミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』の佐藤匠。歯科医を目指していた彼らがいかにしてGRe4N BOYZを結成し、メジャーデビューに至ったのか? 初日公演直前に行われたゲネプロをレポートする。

7月31日(木)~8月4日(月)まで。シアター  1010にて上演。

ノンフィクション作家である小松成美が4年の歳月をかけてメンバーや関係者に取材した書籍『それってキセキ~GReeeeNの物語』を原案に、菅野臣太朗が脚本・演出を行うのが今回の舞台。メンバー4人の生い立ちを丁寧に追い、青春の煌めきが舞台上で“はじける”展開は、、GRe4N BOYZのことを知っていても知らなくても、どこか自分に当てはまるような構成になっている。

GRe4N BOYZのリーダーであるHIDE役の北川尚弥は、イメージカラーの赤を貴重とした衣装を着こなし、好きなことに一直線なHIDEを熱く演じる。厳格な父との関係、予備校時代に出会ったnaviとの阿吽の呼吸、進路に悩んだSOHへの想いの伝え方、92との信頼感。どんな困難が訪れようともメンバーの意見を聞き、歯科医とミュージシャンの両立を目指すことにブレない姿勢は北川のキャラクターとも合っている。

HIDEと共にGRe4N BOYZを結成したnaviを演じる藤本洸大はバランス感覚が秀逸。特に音楽に夢中になるあまり暴走してしまうHIDEの姿すらも楽しんでしまうあたりがnaviらしい。

SOHを演じる佐藤匠は、病気を克服し、やりたいことが見つかった喜びを全身で表現し、重要な場面のキーパーソンとして繊細さを見せる。地元の仲間とのやり取りなど、さり気なくもSOHの人柄を感じさせられるシーンだった。

バスケ部のエースでありながら、GRe4N BOYZに参加する92役を演じる丸山龍星は、登場した瞬間から陽のオーラで4人を照らす。丸山の天性の明るさはGRe4N BOYZの曲にも通じるものがあるのではと思えた。

劇中では、もちろんGRe4N BOYZの楽曲も数多くパフォーマンスされる。披露されるのは『声』、『Day by Day』、『道』、『愛唄』、『キセキ』など、GRe4N BOYZの節目節目で重大な鍵となった曲たち。はじめて作った曲、仲間の為に書いた曲、そして彼らの名を一躍有名にした楽曲。等身大の歌詞だからこそ、観ているこちら側の記憶も蘇ってくるのがGRe4N BOYZの楽曲の強さ。名曲を大音量で聴けるのは嬉しい。演者が客席に降りて一緒に楽曲を盛り上げるなど、老若男女を巻き込んだパフォーマンスも楽しい時間だ。ペンライトとサイリウムの持ち込みも可能とのことなので、本番でもライブと同じく盛り上がるはず。

菅野臣太朗による演出はシンプルでわかりやすく、GRe4N BOYZの楽曲イメージをまっすぐに客席に届けることに成功している。メンバーそれぞれの家族からの視点という切り口も興味深く、彼らが特別な存在ではなく、私たちと同じように夢を見て、進路に悩み、目の前にあるひとつひとつの階段を登ってきたのだとわかる。

後半ではメジャーデビューを控える彼らが所属事務所やメジャーレコード会社とどのようなやり取りを経て、顔や名前を出さずにデビューしていったかが描かれる。普段、なかなか知ることのない裏側を見せることで、GRe4N BOYZがどれだけ特殊なグループなのかがよくわかった。

面白いのは、GRe4N BOYZの4人が(俳優が演じているとはいえ)顔を出しているところ。普段は御存知の通り顔も名前も出さないまま活動している彼らなのに、舞台では北川尚弥藤本洸大丸山龍星佐藤匠がGRe4N BOYZとして目の前でパフォーマンスしている。それは、実在のGRe4N BOYZのライブではありえない光景であり、『それってキセキ』を見た人にしか体験できない特別なこと。俳優が目の前で演技することで、これまで大切に聴いてきたGRe4N BOYZがまた違う色合いで目の前に現れる。この感覚をぜひ、劇場で味わって欲しい。

取材・文/高畠正人