劇団た組。第18回目公演『在庫に限りはありますが』橋本淳×徳永えり インタビュー

左:橋本淳 右:徳永えり

脚本家・演出家の加藤拓也が主宰を務める劇団た組。の第18回目公演『在庫に限りはありますが』が4月10日(水)からすみだパークスタジオ倉にて上演となる。行き場のない感情をシニカルかつ、リアリスティックに描く加藤が次に選んだテーマは、とある夫婦の肖像。
夫婦役を務めるのは本劇団初参加となる橋本淳と徳永えり。そこで今回、本作の魅力や現在の心境を聞くべく、橋本と徳永にインタビューを実施。さらに、アテンドとして同行していた作・演出の加藤も混ざりトークが繰り広げられた。

 

――橋本さんと徳永さんが主演を務めた『月極オトコトモダチ』(2018年11月公開作品、監督:穐山茉由)が初めての共演だったそうですね?

徳永えり(以下、徳永)「そうなんですよ。撮影も2018年に行われたので、またすぐ共演することができました」

橋本淳(以下、橋本)「映画ではカップル役だったなんだけど、今回は倦怠期の夫婦役っていう(笑)」


――加藤さんはそのことを知っていてキャスティングしたんですか?

加藤拓也(以下、加藤)「いいえ、知りませんでした」

(一同笑い)


――橋本さんは本公演の出演に際してコメントで「役者の力量、感性、品性、を試されている作品」と述べていますよね。

橋本「台本のト書きに人物の行動を指示する描写がない、役者に委ねられる部分が多い戯曲なんですよ。なので、ひとつひとつの台詞に対して色々なアプローチをすることが可能で、読み返すたびに人物のイメージが変わるんです。果たしてこれは加藤さんが演技の余白を残しているのか、それとも役者を試しているのか……。また、どちらにしても僕にとっては挑戦の舞台になりそうです。ただ、2019年はまさにチャレンジの年だと考えていたので、ちょうどいいタイミングで最高のオファーを頂きました」


――徳永さんは戯曲をはじめて読んだ時、どう思いましたか?

徳永「女性のリアルな心情が描かれていて、身震いしたのを覚えています。読んでいるとそれぞれの人物が抱えている複雑な心境が痛いくらいわかってきて、読む手がとまらなくなるんです。最終的には泣いていました」

橋本「実生活で色んなストレスを抱えているんでしょうね……」

徳永「ちょっと、誤解を招くからやめてよ(笑)。女性らしい複雑な気持ちが描かれていて、理屈抜きで泣いてしまったんです。だけど、この舞台に私が出演するのかって思うと、恐怖で……」


――徳永さんは本作が9年振りの舞台出演なんですよね?

徳永「舞台に立つ機会は何度かあったのですが、ストレートプレイに出演させていただくのは9年振りで、すごいプレッシャーです。それだから、夫役はよく知っている方だといいなと思っていて。台本を読んでいる最中は、なんとく橋本さんをイメージしていたんです。そしたら、見事夫役に橋本さんがキャスティングされていて、とても驚きました」


――なぜ、橋本さんをイメージしていたのでしょうか?

徳永「夫役の妙な空気感とか間合いがとても橋本さんっぽいんですよね(笑)」


――本作は、人前でご飯が食べられなくなってしまった洋食レストランを経営する水野洸一とその妻・里奈の倦怠感漂う日常が描かれていますよね。橋本さんはこの夫婦をどう捉えていますか?

橋本「一緒にいるのは楽だけど恋愛的なドキドキ感はない、兄弟みたいな夫婦だと思いますね」


――夫・水野に共感できる部分はありますか?

橋本「近い部分もありますし、遠いと感じる部分もあります。ただ、仕事やパートナーに対する思い、夫婦としての外づらといった要素が散りばめられた物語なので、夫の気持ちに共感する男性は多いんじゃないかと思います」


――徳永さんは先ほど、女性のリアルな心理が描かれているのとおっしゃっていましたよね。

徳永「はい、すごく理解できました。でもだからといって、自分のまま演じればいいってわけでもない難しい台本なんです。些細な人間関係や出来事の積み重ねでお話しが転がっていくので、それぞれのバランス感がとても大切になる作品だと思います」


――なるほど。二人の話を聞いて、加藤さんはどう思われますか?

加藤「バランス感覚がとても優れているお二人だと思うので、みんなでどんな稽古をしていくか、ルールを作っていければいいなと思っています」


――座長はどなたが務めるのでしょうか?

徳永「そりゃあもう橋本さんが!」

(一同笑い)

橋本「誰かひとりが抜けても成立しないし、誰かが嘘をついたら全てが崩れてしまうようなお話なので……、強いていえば、みんなじゃないですか? ね、座長」

徳永「ちょっと! いい話かと思いきや、なに?! 9年ぶりの舞台で座長はちょっと大変すぎだから(笑)」

(一同笑い)

徳永「ただ、本当に誰も気を抜けない舞台になると思うので、やっぱりみんなで超えていく座組みになると思います」


――それでは、最後に一言ずつ意気込みを聞かせてください。

橋本「人間って滑稽だなって思える作品になると思うので、その部分を笑いに来てもらえたら嬉しいです。伝わることがたくさんある作品になるよう頑張るので、お楽しみに!」

徳永「すみだパークスタジオ倉という密度の高い空間で、ある夫婦の日常が繰り広げられるので、人の生活を覗き見するような気持ちで、演劇が初めての方も気軽に来てくださったらいいなと思います。お客様が十分満足できるような作品になるよう、橋本さん筆頭に頑張ります(笑)。また、私も一から新人の気持ちで挑みますので、ぜひお越しください!」

 

インタビュー・文/大宮ガスト

 

※構成/月刊ローチケ編集部 2月15日号より転載

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
橋本淳

■ハシモト アツシ ’04年にドラマ『WATER BOYS2』でデビュー。舞台では商業から小劇場とジャンルを問わずさまざまな演出家の作品に出演。

徳永えり
■トクナガ エリ ’04年にドラマ『放課後。』で女優デビュー。映画・テレビドラマに多数出演。‘18年『恋のツキ』で連続ドラマ初主演。ドラマ『フルーツ宅配便』に出演中。