
ものすごいものを舞台で表現できそうな予感がしています
パルコ・プロデュース舞台『ヴォイツェック』が森田剛の主演で上演される。原作はドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲。実際に起こった殺人事件を基に描かれており、今回は2017年にロンドンで上演されたジャック・ソーン翻案のバージョンが、小川絵梨子の演出で日本初演を果たす。
「何年か前、西尾まりさんと共演した時に『小川絵梨子さんと合いそう』と言っていただいて、その時からずっと頭の中に小川さんの名前があって、気になっていました。そこから何回か小川さんの舞台も観させていただいていたので、今回は小川さんの演出で、と聞いた時にはぜひ、と思いました。その後で演目が『ヴォイツェック』になったと聞きました」
共演には伊原六花、伊勢佳世、浜田信也、冨家ノリマサ、栗原英雄と、個性的な面々が揃う。
「小川さんを含めて初めてご一緒する方が多いので、そこも楽しみ。初めての人ばかりの現場も嫌いじゃないんですよ。新しい気持ちで臨める楽しさがあるし、みんなで助け合って、アイデアを出し合って、小川さんのイメージをしっかりと落とし込んでいきたいです」
物語の舞台は冷戦下のベルリン。トラウマを抱えて生きるイギリス人兵士の主人公ヴォイツェックは、愛する人への執着と嫉妬に苛まれ、予想を裏切るような運命へと身を投じていく。
「好きな感じの物語ですね。翻訳物はどうしても先に違和感が出てきてしまうのですが、そういう違和感を消せたり、楽しんでいきたいです。自分に負荷がかかる役はありがたいんです。自分だけでは限界というか無意識でストッパーがかかってしまうようなところもあるのですが、そういう大変な役をやれることは嬉しいし、やりがいがある役だろうなと感じています」

森田が演じるヴォイツェックは、幼い頃の貧困の記憶や、薬物による幻覚とフラッシュバックにより心を蝕まれ、現実と過去の境界があいまいになっていくという難役。ただ森田は同役に共感できる部分もあると話す。
「根本にあるところは傷ついたり悩んだりと、少なからず誰にでもあること。そこをどれだけ膨らませるかということだと思うんです。そういうヴォイツェックの純粋な、真っすぐな部分は大事に演じたい。そういう部分って、大人になると霧がかかったようになってしまうところがあるんですけど、まっすぐに、一途であろうとするところは、自分もそうありたいと願うし、その反動で落ちていってしまうところも理解できるし想像できる。そこを表現できるのは、すごく楽しみです。単純に言えば、純粋だからこそ傷つきやすいということなんでしょうけど、政治のことや母親のことなどが絡んできて、もっと複雑にいろんなことが絡み合ってくる。やっぱり究極的というか、人が追い込まれていくとどういう思考になるのか…まだ整理はできていないですけど、いろいろと見つけていきたいです」
新たな視点でつづるニュー・アダプテーション版の上演に、森田自身も大きな期待を寄せる。
「この物語を舞台でやろうとすることは、結構チャレンジングじゃないかと思っていて、何かものすごいものを舞台で表現できそうな予感がしています。作ったものとリアリティとが混合した、ある種の気持ち悪さができそうで、お芝居ですが“生きている”ものを見られるはず。新しい感覚と、何か気付きを感じてもらえるような作品になる気がしているので、興味を持たれた方はぜひ、観に来ていただきたいです」

インタビュー&文/宮崎新之
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本作は9月23日(火・祝)東京公演で開幕し、岡山公演を経て、現在は広島、北九州、兵庫、豊橋、東京リターン公演をめぐるツアー中だ。

過去のトラウマと自身の心の闇と闘いながら生きるヴォイツェックの姿を通じて現代社会の様々な問題を浮き彫りにし、内面的な葛藤に直面する現代人の姿を映し出す。愛を求めて懸命に生きる青年を熱演する森田剛の姿をぜひ劇場で目に焼き付けて欲しい。
◆舞台映像入りSPOT動画
※構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載
※本記事は、本稽古前のインタビューとなります

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
森田剛
■モリタ ゴウ
2021年にMOSSを立ち上げ、俳優として数多くの映画、舞台、テレビドラマに出演する。