舞台『鋼の錬金術師』第二弾公演より
石丸さち子率いる“劇団ハガレン”が挑む
舞台『鋼の錬金術師』第三弾公演が決定!
荒川弘氏が描くダークファンタジーコミックの金字塔『鋼の錬金術師』を原作とした舞台『鋼の錬金術師』第三弾が、2026年2月に上演決定!これまで2023年3月に第一弾公演、2024年6月に第二弾公演と上演を重ね、舞台効果や俳優の身体表現の限りを尽くした演出、原作から飛び出してきたかのようなリアルなキャラクタービジュアルなどで観客を魅了した人気作だ。主人公エドワード・エルリック(通称エド)の弟アルフォンス(通称アル)役を第一弾公演から引き続き演じるのは、眞嶋秀斗さんと桜田航成さん。生身のアルと鎧時の声を担当する眞嶋さん、鎧姿のアルをスーツアクターとして担当する桜田さん。2人で演じてきたアルフォンス役と作品への熱い思いを語ってくれた。
――まずは、待望の続編、舞台『鋼の錬金術師』第三弾公演が、2026年2月に決まったことについて、心境をお聞かせいただけますか?
眞嶋 続投できることは当たり前ではないと思うので、一安心しています。第一弾公演のときに長時間に及ぶオーディションを何日も重ねて掴んだ、僕にとってターニングポイントといえる役ですし、初演のときのガッツを思い覚まして、パワーアップできるように挑まなきゃいけないと思っています。
桜田 キャストで一番変えやすいのは、鎧の中の僕だから(笑)、続投させていただけてありがたいです。今作は、いつまでもやり続けたいライフワーク的なすごく大事な作品になっているので、もう第三弾かと思うと『ハガレン』の物語も終わりが見えてきて、一抹の寂しさも覚えます。今は、本番にケガをしないように、体のメンテナンスをしっかりしておこうと思っています。
――第一弾、第二弾に出演されて思われる、舞台『鋼の錬金術師』の魅力とは?
眞嶋 ファンタジーではあるんですけど、自分が生きている同じ世界のどこかをエドが走っているんじゃないかと思わせる、リアルな感じがあるんですよね。そこに一番惹かれるし、だから心を注いでアルを演じたいと思える。現実離れしたような場面もリアルに、どうやったら登場人物たちと同じ空気を吸っている感覚をお客様に届けられるか、考えながら演じています。僕自身が演じていて楽しいし、この舞台の魅力に取り憑かれていますね。
桜田 原作を読んだときに登場人物たちに共感できて、気持ちが全部わかるなと思いました。みんな人間くさいんですよ。それを舞台化するにあたって、どうしたら『鋼の錬金術師』の世界をお客様に届けられるのかを考えて、演出の石丸さち子さんが提示されたのが“マンパワー”。役者がとにかく動いて汗をかいて、肉体を全部使って心を表現してほしいというオーダーに、「わかりました!」と一致団結して臨みました。出演者は劇団ハガレンって言ってるんですけど(笑)。集まった集団じゃなくて、一個の劇団のようなチームワークでひとつの方向に向かっているのは、舞台『鋼の錬金術師』の魅力だと思います。
――眞嶋さんは生身のアルと声を担当され、桜田さんは鎧姿になったアルをスーツアクターとして担当され、アルフォンス・エルリックというひとりの人物を2人で演じられています。ご苦労されたのはどんなことですか?
眞嶋 ひとつの役を2人で演じるというシステムには、なかなか慣れませんでした。第一弾の稽古では、いろいろトライしましたけど、離れたところから台詞を発するので、どうしても若干のタイムラグが生まれてしまったりして。
桜田 稽古中は、僕の背後霊みたいになっていたよね(笑)。
眞嶋 一緒に動いて、台詞を言ってました(笑)。最終的に大切なのは、僕と航成さんがアルとして、心をシンクロさせるっていうことだけですね。本番では暗闇の舞台袖で僕ひとりだけで、誰とも目を合わせずに、自分とみんなを信じてやるしかないって感じです。
桜田 鎧を被っていると、声を出さない芝居だし本当に孤独なので、僕も似たような気持ちでいて。第一弾のゲネプロで、初めてしゅーてぃー(眞嶋のニックネーム)とひとつになったような感覚がありました。たぶん、お互い孤独だから共感できたんじゃないかな(笑)。
眞嶋 チャンネルが合ってきたんだ(笑)。
桜田 お互いに感じる空気みたいなものが、一緒になったのかもしれないね。実は、第一弾の公演の途中で、アルフォンスを演じる上でのコツを見つけたんです。僕の動きのほうをちょっと遅らせるんです。しゅーてぃーの発する台詞に後追いで、僕が動くほうが合うなと思って。語頭から動かないで、語尾追いで動くようにしています。
眞嶋 だから、僕が航成さんの動きを見て台詞を言うことって、あまりないです。舞台袖からだと見えないこともあるので。舞台を観た人から、「本当にその場で声出してるの?」って、いまだに言われますもん。
桜田 それだけ2人がシンクロしているってことだから。よっしゃー(笑)!
眞嶋 アハハハハハ!
――役を作っていく中で、お2人はどのようにコミュニケーションをとられていったのですか?
桜田 以前、違う舞台で共演していたので、「久しぶり!」みたいなところから始まったんですけど。
眞嶋 その舞台では、役柄でそんなに絡むことはなかったんですよね。でも、航成さんのことは、作品や役への愛がすごくあって、役のことを深く理解してアイデアを出してくださる方だなと思っていたので。だから、スーツアクターが航成さんだとわかったときに、どれだけ安心したことか。
桜田 ハハハハハ!僕も全幅の信頼を置いています!仲もいいですよ。
眞嶋 一番リラックスできます。
桜田 楽屋に2人でいて、特に会話もないんだけど気を遣わない熟年夫婦みたいな感じですね(笑)。
眞嶋 ハハハハ。僕は「疲れた~」とかすぐ弱音をはいてしまうんですけど、航成さんはそういうことは言わない人。航成さんが弱音をはかないなら、僕も言っちゃダメだと奮い立たせてくれる最高のパートナーです!
――アルフォンスという人物を演じる上で大切にされていることは?
眞嶋 兄のエドからの愛が絶えず注がれ続けていることによって、アルは元の身体に絶対に戻るんだっていう気持ちが途切れないでいられるんだと思うんです。その愛を感じることは大切にしています。舞台『鋼の錬金術師』では、Wキャストで一色洋平さんと廣野凌大さんが演じる2人のエドがいるので、それぞれの愛の注がれ方があるんですよね。アルとしても役者・眞嶋秀斗としても、その愛にすごく励まされて自然にパワーが出てきて、元気に舞台で演じることができています。
桜田 僕は動きの部分では、指先まで気を抜かないということに注力しているかな。足を一歩前に出すだけでも、手を少し動かすのにも、ちゃんと意味をつけて流れではやらないようにしています。誰にも気づかれないかもしれないけれど(笑)。首をちょっと動かすだけでも、あの鎧だとどうしても意味合いが生まれてくるので。
――兄のエドワード・エルリック役は一色洋平さんと廣野凌大さんがWキャストで、第一弾、第二弾から続投されます。一色さんのエドと廣野さんのエド、どんな違いを感じますか?
桜田 第二弾公演になって、それぞれの色が出てきたんですよね。だから、僕らもそれに合わせていくっていう調整はありました。
眞嶋 洋平さんのときは、もう少し早く動こうとか。
桜田 芝居もまったく違う間で来るので、大変というよりも、逆に新鮮にできるというメリットはありますね。
眞嶋 洋平さんは、もうパワーって感じです。
桜田 暴走特急だね(笑)。
眞嶋 ハハハハ。でも、そこにすごく温度感はあって、冬の暖炉みたいな温かさのときもあれば、花火みたいに爆発しているときもありますし、日によって違う。廣野のほうは、ちょっとすかしたお兄さんのような…。
桜田 アルにいつも寄り添っている遠慮のない大親友のような感じで、愛情のアプローチのタイプが違いますね。
――第三弾でブラッシュアップされたいことはありますか?
桜田 鎧を着ていると、構造上、視界が相手の腹しか見えないんですね。第二弾のDVDを見て、ここは目線が合っていないなと、すごく反省したシーンがありまして。第三弾では、相手の目線にもっと合わせたいなと思っています。
眞嶋 自分の中でのテーマが、相手との声の距離感なんですけど、そこは極めていきたいところです。本番では距離を想像して意識を飛ばして、舞台袖から台詞を言ってる感じなので、航成さんの向きで這いつくばったりもしますし、会話によって場所を移動したりしているんです。
桜田 舞台の上手にいたり、下手にいたり、猛ダッシュで移動したりね。メイキングで、そういう本番中のしゅーてぃーの姿だけ追ってほしい!
眞嶋 いやいや(笑)。僕としては、舞台上に立っているキャストの邪魔をしたくない気持ちもあって、隙間スペースをみつけてやっています(笑)。
桜田 第二弾にキング・ブラッドレイ役で出演していた谷口賢志さんから言われたんだけど。しゅーてぃーは舞台袖ですごい身振り手振りをして激しく芝居をしていて、舞台上の航成はあえて動かないところが面白いって、感動してくれたらしい。
眞嶋 それは嬉しいですね。
――最後に、改めて意気込みをお聞かせいただけますか?
桜田 舞台『鋼の錬金術師』の折り返しになる作品で、アルフォンス的にも物語が動きます。本当にものすごいものになると思うので、期待していてください!
眞嶋 石丸さんが新しい演出を考えていらっしゃるので、僕らも楽しみにしています。舞台『鋼の錬金術師』は、発想力と人間パワーで作っている他にない作品だと思います。旅を共にしていただき、諦めずに前へ前へ進むエドとアルの生き様から、元気をもらって欲しいです。僕も大変な壁があっても演じることを諦めませんので、その戦いの光景をぜひ目に焼きつけてください。
インタビュー&文/井ノ口裕子
【プチ質問】Q:手土産を選ぶポイントは?
A:
眞嶋 僕は甘いスイーツを差し入れるんですけど、選ぶときに大切にしているのはビジュアル。華やかなデザインであったり、可愛く動物が描かれているとか、映えそうなものでちょっと差をつける(笑)。「コレ、眞嶋のだよね」って覚えてもらえるのも嬉しいんですよね。アートが好きなので、目でも癒されてほしいなという思いもあります。秋のおススメは栗のスイーツですね。
桜田 舞台の楽屋や稽古場には、しょっぱいものを差し入れるようにしています。「ハガレン」もそうですけど、汗だくになるので塩分を欲するんですよね。過去に大好評だったのはマクドナルドのハンバーガー。30個くらい買ったんですけど、一瞬でなくなりました。小籠包や鶏の唐揚げにも、みんな群がって食べてくれましたね。男子が多い舞台の場合は、とりあえず肉を差し入れておけば喜ばれます。
※構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載【ロングバージョン】

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
眞嶋秀斗
■マシマ シュウト
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンで注目を集め、以降、舞台を中心に幅広く活躍。2025年はact ACE Presents #01 舞台『君に似合う花言葉』に出演。
桜田航成
■サクラダ コウセイ
2010年に俳優デビュー。舞台を中心に活動。殺陣・アクションを得意とし、『仮面ライダーセイバー×ゴースト』『仮面ライダースペクター』に出演。
