劇場全体が物語の一部に——円形ステージが生む新たな没入体験
「父は、家族のために人を殺した。」「愛のために犯した罪は赦されるのか。」
2017年から2024年まで「ヤングマガジン」(講談社)にて連載された、山川直輝(原作)、朝基まさし(作画)によるジェットコースター・クライム・サスペンス漫画『マイホームヒーロー』が演出・加古臨王の下、品川プリンスホテルクラブeXにて開幕した。
円形に設計された舞台をぐるりと囲むように客席が配置された本公演。観客はその一員として、キャストの芝居を色々な角度から見ることができる。角度によって見える表情や動き、視線の交錯までもが異なり、まさに“見る度に違う表情を見せる”舞台だ。

さらに客席も演出の一部として巧みに取り込まれており、観客自身が物語の目撃者として存在しているような感覚を覚える。舞台と客席、キャストと観客の境界があいまいになり、劇場そのものが物語の空間となる瞬間に立ち会うことができる。
主人公・鳥栖哲雄を演じるのは、舞台『刀剣乱舞』シリーズなどで確かな実績を誇る鈴木拡樹。ある事件をきっかけに“普通の父親”から“犯罪者”へと追い詰められていく哲雄を、鈴木は繊細かつ緊迫感のある芝居で体現した。その眼差しには、恐怖と決意、家族への愛が同居し、観る者の心を掴んで離さない。リアルな心理描写の積み重ねが、作品全体に深みと説得力をもたらしている。

哲雄の前に立ちはだかる半グレ集団の実行部隊・間島恭一を演じるのは、舞台『鬼滅の刃』などで主演を務めてきた阪本奨悟。冷徹な青年として登場する恭一だが、物語が進むにつれて彼の中の迷いや人間らしさが浮かび上がっていく。その変化を阪本は、わずかな表情や間の取り方で繊細に描き出していた。敵対から共闘、そして複雑な絆へと移ろう二人の関係性が、作品の緊張感をさらに高めている。

哲雄の妻、鳥栖歌仙役には元宝塚歌劇団星組の男役スターの天華えま、娘の零花役は『「ROCK MUSICAL BLEACH」~Arrancar the Final~』井上織姫役などを務める佐當友莉亜、組織上層部の凄腕の詐欺師で哲雄が殺した延人の父親、麻取義辰役を「薄桜鬼」シリーズで土方歳三を演じる久保田秀敏、半グレ組織のリーダー、窪役をミュージカル『テニスの王子様』など数多くの舞台経験がある髙木俊が演じるなど、錚々たるキャスト陣が勢揃いで舞台を盛り上げる。




感動的なエンディングの後、鳴りやまない拍手とスタンディングオベーション。同じ物語でも、観る位置によってまったく異なる印象を与える本公演。角度を変えれば、別の真実が見えてくる——そんな新感覚の観劇体験がここにはある。一度だけではもったいない。
舞台『マイホームヒーロー』は11月24日(月・祝)まで品川プリンスホテルクラブeXで上演。観客一人ひとりが物語の一部となるこの劇場で、ぜひ何度でも新たな視点から物語を見届けてほしい。
日程:
11月24日(月・休)12:00公演
11月24日(月・休)16:00公演
※全てライブ配信+1週間見逃し配信付きでの販売配信期間:
各公演配信開始~2025年12月1日(月)23:59配信チケット料金(税込):
各公演3,800円
舞台写真














[あらすじ]
「父は、家族のために人を殺した。」
「愛のために犯した罪は、赦されるのか」
しがない会社員、47歳の鳥栖哲雄は、反抗期の娘・零花に煙たがられながらも、愛する妻・歌仙と共に、彼女の成長を誰よりも願い、日常を送っていた。
零花の“半グレ”彼氏・麻取延人。は元カノを殴り殺した過去を持ち、ヤクザと共に、零花を貶める“ある計画”を進める超危険人物だった———!
「零花だけは守らなきゃ。たとえ僕たち夫婦に、最悪の結果が訪れても……」
愛する家族のため、“ただの弱いおじさん”は、裏社会の猛者たちを相手に、命と知力を賭けた闘いを始める!
