2003年12月から2006年5月まで「週刊少年ジャンプ」に連載され、映画やドラマ、アニメなど幅広いメディア展開を遂げてきた人気漫画「DEATH NOTE」。そのミュージカル版となる『デスノート THE MUSICAL』が2025年11月24日(月・祝)に開幕した。初日前日となる11月23日(日)に行われた、加藤清史郎と渡邉蒼、三浦宏規による囲み取材、夜神月を渡邉が演じた回のゲネプロの様子をレポートする。
2015年に日本で世界初演が開幕するや瞬く間に観客を虜にした本作。その後、韓国で韓国人キャストによる上演、ロンドンではコンサートバージョンが上演されるなど、海外でも高い評価を受け、今や世界中から注目を浴びる大ヒットミュージカルとなった。初演から10年の記念公演となる今年、本作の初演オリジナルキャストである浦井健治と濱田めぐみが8年ぶりに帰ってくる。

囲み取材には、夜神月をダブルキャストで演じる加藤と渡邉、L役の三浦が出席。加藤は、初日を直前に控えた心境を聞かれ、「稽古始まってから人間としても役者としてもいろいろなことを日々、感じながら、ライトとして『デスノート』の世界で生きるということは、ものすごく覚悟のいることだなと改めて実感しています。でも今は楽しみです。緊張感ももちろんありますが、とにかく無事に初日を迎えられるように進んでいこうと思います」と思いを語った。

一方、渡邉は「約2カ月、稽古を積んできて、演出の栗山(民也)さんとカンパニーの皆さまと、この作品、そして演劇というものがこの世の中に与える影響や、今この社会が現実で抱えている問題などについても話し合ってきました。間違いなくミュージカルという枠を超えて社会的に影響を与えられる作品になっているのではないかなと思っております。この作品の強さに負けないように、強い心を持って臨んでいけたらいいなと思っています」と意気込んだ。

三浦は「今まで体験したどの現場よりも濃縮した稽古期間を過ごせました。この作品を通して、人としても成長させてもらえたのかなという感覚があります。お客さまにどう受け取っていただけるのかは私たちが決めることではないので、自由に受け取っていただけたらと思います」とコメントを寄せた。
初共演となる3人だが、稽古を通して仲を深めたそうで、渡邉は「今、楽屋が3人一緒なのですが、クリスマスソングが流れています」と明かす。三浦は「楽屋用のクリスマスツリーも頼みました」と言い、「作品が重いテーマなので、裏ではみんなで1日1個ずつオーナメントを買ってきて、それを飾っていこうと思っています」と楽屋での楽しみを披露した。
また、加藤は「ここにいる3人だけじゃなく、みんなそれぞれすごいんです。みんな向き合い方はそれぞれのスタイルがありますが、形は違えどみんな真面目で、めちゃくちゃ変という印象です」と今回のカンパニーの印象も明かした。
囲み取材の最後に、改めて三浦は「カンパニー全員の熱量が初日に向けてどんどん高まっています。いろいろなことを考えながら私たちは作品に向き合っています。そうした思いをお客さまにもぜひ受け取っていただけたらと思っております」とアピール。
渡邉は「舞台上に『デスノート』の壮大な世界観が広がると同時に、今の社会の問題も描いています。それにプラスして、フランク・ワイルドホーンさんの素晴らしい楽曲が物語を後押ししてくださり、素晴らしい作品になっています。ぜひ劇場でお会いできたらうれしいです」とメッセージを寄せた。
最後に加藤は「人間というものを感じていただけたらうれしいです。そして、この作品を通して、今、この世界に持って帰っていただけるものがあれば、これ以上のことはないと思います。夜神月として『デスノート』の世界を泥臭く生き抜けたらと思いますので、ぜひ楽しんでいただけたら」と笑顔で語り、取材を締めくくった。

ゲネプロレポート
物語は、死神リュークが退屈しのぎに、人間界にある一冊のノート“死のノート”(デスノート)を落としたことから始まる。ある日、成績優秀な高校生・夜神月(やがみライト)はそのノートを拾い、そこに「このノートに名前を書かれた人間は40秒で死ぬ」と書かれていることを発見する。犯罪者を裁ききれない法律に限界を感じていたライトは、テレビで幼稚園に立てこもっている誘拐犯の名前を知り、その名前をデスノートに書いてみる。すると、誘拐犯は突然、心臓発作で息絶えた。ライトは「自分こそが神に選ばれ、犯罪者のいない世界を創る“新世界の神”だ」とデスノートを使って犯罪者の粛清を始めていく。
壮大な世界観の原作を約3時間(休憩込み)で見事に描いた本作。テンポ良く進むストーリーをフランク・ワイルドホーンの音楽が強い力で引っ張っていく。楽曲は荘麗でありながら、キャッチー。そのメロディは観劇後、劇場を後にしてからも耳にいつまでも残っていた。


この日のゲネプロでは夜神月役は渡邉が務めていたが、心地よく響く歌声は、ライトの心境の変化を伝える説得力にあふれていた。そして、正義感が強く優等生のライトがどんどんと狂気を帯びていくさまを渡邉は目線や表情の細やかな表現で丁寧に作り上げていく。その芝居力は見事だった。


また、ライトと対峙するLを演じる三浦は、頭脳明晰ながらつかみどころのないLを好演。抑揚のないゆっくりとした話し方がLのキャラクターを如実に表していた。何気ない動きもしなやかで美しく、それがまたLの妖しい魅力につながっていた。


弥海砂を演じるのは鞘師里保。鞘師は海砂をキュートでありながら、純真で愛を貫く強さを持っている女性として描き出した。ライブで歌って踊るシーンはアイドル時代を彷彿とさせるキレのある動きで会場を魅了した。




そして、何といっても死神リューク役の浦井と死神レム役の濱田の圧倒的な存在感に心を揺さぶられた。登場した瞬間から、劇場の空気を変え、観客の目を引き付ける。周知の事実だが、その歌唱力も圧巻だ。縦横無尽に舞台上を動き、転げまわってリュークを演じる浦井は、きっと心から楽しんでこの役を演じているのであろう。生き生きと人ではない何かを圧巻の芝居で演じた。一方、濱田は一切の感情を排除したかのようなセリフ回しが耳に残った。異質さと不気味さにあふれていたレムだが、物語が進むと徐々に歌声に感情が入り込んでくる。死神の心が動く瞬間を感じられ、その繊細な表現に舌を巻いた。
加藤が夜神月を演じると、きっと作品の色合いはまた大きく変わる。ぜひそれぞれのライトの物語を劇場で味わってもらいたい。
取材・文・撮影/嶋田真己
ゲネプロ舞台写真









撮影/嶋田真己
