ミュージカル『サムシング・ロッテン!』稽古場取材会レポート

ミュージカル好き・芝居好きの心をくすぐる人気ミュージカル『サムシング・ロッテン!』の楽曲披露取材会が11月21日(金)、都内にて開催され、出演する中川晃教、加藤和樹、石川禅、大東立樹、矢吹奈子、演出の福田雄一らが登壇した。

『サムシング・ロッテン!』はルネサンス時代のイギリスを舞台に、劇団を経営するボトム兄弟が時代の寵児シェイクスピアに対抗心を燃やし、世界初の“ミュージカル”を作ろうと奮闘するドタバタを描いたミュージカル。ブロードウェイで2015年に初演され、トニー賞で1部門受賞・9部門ノミネートを果たした話題作で、日本では2018年に初演。今回は7年ぶりの再演で、主人公ニック・ボトム役の中川晃教、妻ビーを演じる瀬奈じゅんが初演から続投し、シェイクスピア役の加藤和樹、予言者ノストラダムス役の石川禅、ニックの弟ナイジェル役の大東立樹、ナイジェルが出会う美しい清教徒の娘ポーシャ役の矢吹奈子が新キャストとして参加する。

この日の取材会では4曲が紹介された。まずは本作を代表するナンバー「ミュージカル」。劇団経営に行き詰ったニックが予言者ノストラダムスに「次にヒットする演劇はミュージカルだ」と言われるシーンである。これは『コーラスライン』?『CHICAGO』?『RENT』?『ジーザス・クライスト=スーパースター』?『アニー』?『ガイズ&ドールズ』?……と、どこかで聞いたようなフレーズが次々と畳みかけられる大ナンバーで、ミュージカルファンならニヤリとすること請け合い。いかにも“口八丁”といった風に場を盛り上げる石川、「これで上手くいくかも!」と目を輝かせる中川、華やかなタップダンスで盛り上げるアンサンブルキャストが混然一体となり、大盛り上がり必至の一曲だ。衣裳も照明もセットもない稽古場でも、すでに華やかさが溢れんばかり!

続いて披露された「ボトムがトップに立つ」は、明るい未来が見えたニックが妄想の中で人気者になって「自分は天才作家だ」と得意げに歌う軽快なナンバー。中川の明るい歌声と、大東やアンサンブルによるタップダンスの軽やかな音が楽しい。大東と矢吹が中心となる「希望がみえた」は、二人の可愛らしいデュエットからゴスペル風のサウンドへ移行するユニークな楽曲。恋に落ちた二人が、大反対するポーシャの父を「説得しよう」とポジティブに盛り上がるこのシーンでは、ペアダンスなども見どころだ。

稽古場披露の最後は、シェイクスピアの代名詞的ナンバー「ウィルパワー」。甘い言葉を音に乗せ歌うシェイクスピア役の加藤に、押し寄せたファンたちがメロメロになっているという楽曲だ。「僕はみんなのウィル」とナルシスティックに歌うシェイクスピアは今まで加藤が演じてきた役柄とは一線を画し、新しい加藤の魅力が堪能できそう。計4曲の披露だったが、いずれもパワフルでワクワクする楽曲揃いで、本番が楽しみになった。

その後の囲み取材には、当初は福田とプリンシパルキャストが出席予定だったが、福田が「アンサンブルのみんなも入ろうよ」と言い、急遽全員参加に。稽古が進んでいる心境を中川は「初演が7年前。その後も福田さんと会うたびに、また『サムシング・ロッテン!』をやりましょうと言い続けていた。それが実現し動き出している喜びに浸っています」と語り、加藤は「ご覧いただいた通り、もうすでに完璧です。特に(アンサンブルの)ダンスナンバーの仕上がりは、こちらがプレッシャーを感じるほど」と太鼓判を。石川は「(この日披露した)『ミュージカル』というナンバーを聞いた時、涙腺がゆるむくらい感動しました。実際に自分がやってみたら、死にそうになるくらい大変(笑)。でもお客さまにとっては本当に楽しいナンバーが揃っていると思います」と音楽の魅力をアピールした。

個性的な登場人物揃いなのも本作の魅力だが、好きなキャラクターを聞かれ、大東は「達夫さん。人柄がステージにも出ている。すごい方なんですよ」とボーカルキャプテンを務める横山達夫の名をあげ、これには福田も「福田組の太陽!」と同意を。矢吹は「お父さん」と、この日も美声を響かせていたポーシャの父役の岡田誠を紹介。和気あいあいとしたカンパニーの空気感も伝わってくる。

再演の見どころを聞かれた福田は「初演でわりとやり切った気持ちがあったのですが、またやりたいと思ったのは単純にこのミュージカルが好きだから。ただ、やり切ってしまったから、キャストを変えたらまたまったく別のものになるかなと思い、アッキー(中川)とあさこさん(瀬奈)以外のプリンシパルキャストは変更させていただきました。再演は、この新しく入ってくれた役者さんのおかげで、より作品の構造が分かりやすくなっていると思います。話自体はバカみたいにシンプル。ぜひミュージカルを知らない方にも見に来てほしい」とアピール。

最後に中川が代表して「一年の締めくくりには、やっぱり笑いが必要なんじゃないでしょうか。舞台はそういうエネルギーをお届けできる場所。初演をご覧になった人も、今回初めて観る方も、ミュージカルを観たことがある方もない方も、すべての人が『なんだろう、この世界』とどんどん引き込まれていくようなミュージカルです。歌もダンスも笑いの要素もあります。福田さんの魔法にかかりに劇場にお越しください」と挨拶をしたのち、「お待ちしています。……せーの!」と突然の掛け声を。これには一同「何!?」「知らん知らん!」「俺だけ何も聞いてなかった!?」とどよめく。福田も「こういう座長なんです!」と嬉しそうに主張する。まさにこれぞ『サムシング・ロッテン!』の世界と言いたくなるような、笑いと脱力感とサービス精神を最後に中川が体現し、大盛り上がりで稽古場取材会は終了となった。

公演は12月19日(金)から1月2日(金)まで東京・東京国際フォーラム ホールCにて上演。その後、大阪公演もあり。

取材・文/平野祥恵