「ブラザーアッシュ vol.2」|北村健人 インタビュー

colyが贈る2D(コミック)×3D(演劇)ハイブリッド型IPプロジェクト『ブラザーアッシュ』の本公演第2弾、舞台『ブラザーアッシュ vol.2』が2026年1・2月に上演。実在するカフェ店内で上演される本作は、唯一無二の新感覚没入型演劇として注目を集めている。

本作は、禁煙法が制定された20XX年を舞台に、シロサカの町を守る反禁煙法組織「ゴールデンシガー」のメンバーたちのハードボイルドな物語が展開される。

キャストは2Dおよび3Dにて同一。斑鳩ヒジリ(いかるが・ひじり)を北村健人、佐平堂ツルギ(さへいどう・つるぎ)を足立英昭が演じるほか、新納 直やKaitoが出演。また本作では、新たに華埜井ジョー(はなのい・じょー)役として佐藤永典が声の出演を、さらにお披露目公演でマスター役として活躍した早乙女じょうじが、同役にて出演する。

「新たな観劇体験を届けたい」と意気込むヒジリ役の北村健人にインタビューを実施。カフェという特殊な空間での上演体験や、理詰めで挑む役作りへの思いを聞いた。

――まずは本プロジェクトについて、率直にどんな印象を抱きましたか?

最初はあまり想像ができなくて、「自分で合っているのかな?」と思いました。これだけお客様と近い距離で芝居をするというのは、また別の技術が必要なのではないかなと。そういう意味で、最初は戸惑う気持ちもありましたが、それ以上に、また新たな角度からお芝居と向き合える機会になるのではないかなと楽しみでした。

――お披露目公演や前作「ブラザーアッシュ vol.1」で、実際にカフェでの上演を経験されてみていかがでしたか?

いやぁ、痺れましたね。すごく特別な体験でした。僕は窓際の席に座っていて、客席を挟んで向こう側のカウンターに出てくる登場人物を見る、というお芝居があったんです。僕がカウンターを見ると、50cmくらいの距離にいるお客様と目が合う。しかも僕がカウンターの奥を覗く仕草をすると、お客様も一緒に覗くんですよ(笑)。あの感じはこの作品ならではですよね。

アクションもあるので、当然、お客様に怪我があってはいけないので細心の注意は払わないといけない。でも、この距離感だからこその臨場感もお届けしたかったので、ギリギリのラインを攻めるための集中力を求められる感覚でした。1時間ちょっとの公演でしたが、3時間の作品をやったような緊張感で。しかも前回はそれを1日に3公演やる日もあったので、すごくエネルギーを使いました(笑)。

――前作から引き続き作品の軸を担う足立さんや新納さん、Kaitoさんへの印象をお聞かせください

ひで(佐平堂ツルギ役の足立英昭)は同い年なんですよね。たぶん彼とは芝居の感性が似ていて。お互い、感覚派というよりも理論的に芝居を作っていくタイプなので、稽古初日に相性の良さを感じて、彼と一緒なら大丈夫だなと確信しました。作品が描く裏稼業の要素を体現してくれるのが、ひでの説得力ある芝居で生まれたツルギの存在なので、そういう意味でもすごく感謝していますし、心から頼りにしています。

直(四菱ダイヤ役の新納 直)は本人も言っていたのですが、今、いろんな先輩のお芝居を吸収している最中で、本当にお芝居が楽しくて仕方がないんだろうなと。会う度に新しいお芝居を見せてくれて、僕も刺激をもらっています。

Kaito(黒羽ミツバ役)は心をすごく大事にする子ですね。それを放出する技術を、公演中もどんどん自分の中に落とし込んで進化していったのが印象的です。とくに前作は、ミツバが核を担うキャラクターだったので、彼の感情を中心に据えたお芝居がクライマックスに向けて大きな意味を持ったなと思います。

――ヒジリの役作りについてもお聞かせください。理詰めでお芝居を作っていくとのことでしたが、ヒジリをどう捉えていらっしゃいますか?

プロデューサーの相吉さんから「ヒジリには理想を詰め込みました」とお聞きしたんですが、彼と向き合っているとその言葉の意味が分かってくるんです。本当に完璧なキャラクターで隙がない。言葉ひとつとっても本心なのか、それとも深層心理とはあべこべなことをあえて言っているのか。その時々によって違うので、このセリフはどっちのニュアンスでいこうか、シビアに向き合いながらチョイスしています。それこそヒジリは理詰めじゃないと作れない役かなと、僕は思っています。

――今作ではヒジリにどんな変化が起きそうですか?

ヒジリ自身はそう思っていないかもしれませんが(笑)、ヒジリとしては前作で周りに救ってもらって、心の中にある時限爆弾から解放されたような感覚がある。だから、ツルギに対しても感謝の気持ちがあるだろうし、それをふとした瞬間に表現してもいいのかなと、現段階(取材時点)では思っています。

前回はダイヤとミツバが成長する話でもあったので、その姿を見たことで、今回のヒジリは2人に任せる部分も出てくるのかな。自分は一歩下がって見守るという部分も、前作を経たからこその変化として生まれると思うし、それがお客様にも感じ取ってもらえるような役作りをしたいなと思っています。

――ストーリーが大きく動く予感のする第2弾となりそうです。ネタバレにならない範囲で、今作の見どころや、注目ポイントをお聞かせください

4人のキャラクターで織りなされていた物語に、ここへきて5人目の新たな登場人物が……!というのは大きいですね。外からの要素が入ることで、4人にも変化が生まれてくると思うので、それぞれの新たな一面を楽しんでいただける作品になるんじゃないのかなと思っています。

――本作は1月上演ということで、2026年の抱負や挑戦したいことを教えてください

11月23日で役者人生15周年を迎えました。これまでの感謝を心に、一層素敵なお芝居と作品を、心を込めてお届けする1年にしたいなと、改めて思っています。

――15年役者を続けてきて変わったこと、また変わらないこととは?

変わらないことは、どんな作品も役も平等に愛していて、その役でお客様の何かを変えたいという思いですね。そして、15年間ずっとお芝居が好きです。
変化でいうと、シェイクスピア作品に出演したことが大きいのかな。これまで15年間でやってきたものと全然違う、セリフや芝居への向き合い方を求められたんですね。改めて芝居の奥深さに触れて、面白いなと感じて。だから、これからも変化を恐れず、新しいものを吸収しながら芝居と向き合っていきたいなと思っています。

――最後に、北村さんが感じる本プロジェクトの魅力と共に、公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします

この作品を通して、特別な観劇体験をお届けしたいという思いがあります。実際にこの作品を観劇してより舞台が好きになった、という感想をたくさんいただいていて、僕にとってもすごく大切にしたい作品です。ここ最近イマーシブシアター形式の作品が増えてきたという体感がありますが、そういった新たな演劇形式の黎明期に立たせていただいているという感覚もあります。

ここまで作品を応援してくださったお客様の愛のおかげで、こうして未来を掴ませていただいています。前作からの変化や第2弾だからこその新しいことを皆で模索しながら、そしてお客様に新たな観劇体験をお届けできるよう作品と向き合っていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

インタビュー・文/双海しお