−能 狂言−『日出処の天子』|野村萬斎&大槻裕一 インタビュー

壮大な宇宙観を表現した舞台が再び
能 狂言で見る『日出処の天子』

能 狂言『日出処の天子』の2026年公演が決定した。山岸凉子の名作漫画を野村萬斎が演出・主演する本作。昨年おこなわれた初演は原作&能 狂言ファン双方から大絶賛で迎えられただけに、期待も高まる。

萬斎 こちらはヒヤヒヤでした。長編作品なので、いかに纏めるかでもの凄く神経を費やしました。名場面もたくさんあるし、登場人物それぞれの行き場のない想いも外せない。蘇我馬子と物部守屋の大河ドラマ的部分も大切だとかね。そこがないと最後、厩戸王子が人生の何を取り、何を捨てたのかが見えてこなくなるわけで。初演のあと、皆さんは楽しかったと言ってくださいましたが、私は大変でした。

裕一 携わる全員が舞台上だけでなく、裏でやっていることも全て理解しないといけないのも能 狂言の特徴です。特に今回の目玉である“夢殿”の装置に関しては、いろいろな見え方ができるということもあり、後見の方たちもどこまで演技をするかなど、普段以上に気を使うことが多かったです。

能舞台を自由自在に使うのも能 狂言の面白さ。本作では舞台中央に置かれる“夢殿”が大きな存在感を放つ。

萬斎 衝立を“夢殿”や“玉座”にする仕掛けを作ったことで、作品の持つ壮大な宇宙観も表現できました。厩戸王子と穴穂部間人媛の関係や、愛の根源にある子孫を作るということを外的宇宙と内的宇宙としてどう見せるかを考えたとき、次元を作る場所として、衝立の演出を考えついたんです。シルエットを活かすアイデアはAdoさんやワハハ本舗さんの公演を見て思いついたんですよ。フフフ。

野村萬斎が演じる厩戸王子は、幼き頃から不思議な能力を持ち、聡明ながら恐ろしさも纏う。舞台上での存在感は圧倒的だ。

萬斎 山岸先生のご指名もあったので私が厩戸をやったのですが、なにしろ最初は10歳ですからさすがに困りました。でも、私たちの世界には子役が演じる“子方”という役があるので、彼ら特有の姿を真似しつつ、少しずつ大人になっていくことを意識しました。人ならざる者という点では『陰陽師』の頃からそういう感じがありますので、私に適した役なのかなと。

一方、刀自古郎女を演じる大槻裕一は、運命に翻弄される娘の心情を見事に演じきる。

裕一 最初、刀自古はスキップして出てくるほど天真爛漫な感じから、ある出来事を経て急に変化します。10分ほどの舞踊で、その気持ちを見せるのですが、とても勉強になりました。能の舞踊的なところ、謡い、囃子がすべて重なっているのが刀自古の場面だと思うので、皆様の印象に残ってほしいなと思います。

公演は大阪、愛知、札幌でおこなわれる。

萬斎 札幌市教育文化会館は能舞台ではなく、一般の劇場なので、これから打ち合わせて、ちょっと違う演出にしようと考えております。

裕一 初演の観世能楽堂とは雰囲気も変わるのではないでしょうか。名古屋能楽堂はとても大きいですし、大阪の大槻能楽堂は、客席の高低差もあるので、能舞台の見え方も違うと思います。札幌はなかなか行けないので、今回はとても楽しみしております。

再演まであと数カ月。すでに演出面では初演とは違うアイデアが生まれているようだ。

萬斎 公演を見た山岸先生からアドバイスをいただいたのでそれを反映させたり、舞踏の部分を増やしたり、いろいろバージョンアップする予定です。能 狂言というのはそうやって700年間、磨かれてきたわけで、今後もそうやって再演を重ねていけたらと思います。

インタビュー・文/高畠正人
Photo/篠塚ようこ

※構成/月刊ローチケ編集部 2月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

野村萬斎
■ノムラ マンサイ
狂言師。祖父・故六世野村万蔵及び父・野村万作に師事。3歳で初舞台。重要無形文化財総合指定者。

大槻裕一
■オオツキ ユウイチ
能楽師。2000年に「老松」で初舞台。能以外の舞台やテレビにも出演する。師父は人間国宝の大槻文藏。