アナログスイッチ 23rd situation『寝不足の高杉晋作』│佐藤慎哉(作・演出)×太田奈緒×土本燈子 インタビュー

アナログスイッチの23rd situation『寝不足の高杉晋作』が、東京・新宿シアタートップスにて上演される。本作は、2024年11月に同劇場で初演を迎えた作品を再演。幕末を舞台に忽然と姿を消した高杉晋作と、彼を表舞台に戻したい面々との攻防を描いたコメディとなっている。今回は、晋作とともに行動する妾・おうのを太田奈緒、晋作が泊まる宿の娘・お千代を土本燈子が演じている。2人はどのような想いで物語に飛び込むのか。作・演出を手掛ける佐藤慎哉とともに、話を聞いた。

――まずは、今作を再演するに至った経緯から教えてください

佐藤 初演のときに、劇場から出てきたお客さんがすごく笑顔で喜んでくださったのがとても印象に残っていて、自分の狙っているところでちゃんと笑いが起こっていたので「いい劇をやれたんだな」と思えたんです。アナログスイッチは笑いとシリアスなシーンが入り交じるのですが、そのバランスも、自分で見ていてもよかったな、と。それに、ありがたいことにチケットが売り切れて、「当日券で行こうと思ったけど諦める」という連絡を何件もいただいてしまって、見られなかった方も多かったので、ぜひ見てほしいなと思い、再演を決めました。

――高杉晋作を題材に作ろうと思ったきっかけは?

佐藤 もともと歴史が好きなんですよ。特に高杉晋作の「おもしろき こともなき世を おもしろく」という辞世の句を、人生訓のように大切にして生きてきました。そして、執筆当時は閉塞感や気持ちが落ち込むような空気感があって……そんな時に、その句を思い出して「書くなら今だ」と。調べてみたら、高杉晋作が主役のドラマや映画って意外と少ないんですよね。彼がやってきたこと自体は、好きかと聞かれてもそうでもないんですけど、その生き様は好きなんです。「三千世界の鴉を殺し主と朝寝がしてみたい」という歌も残しているんですけど、世の中のギャーギャー言っている奴は全員殺して、女の人と一緒にずっとゴロゴロしてたいという歌で(笑)。血生臭い時代に、そんな軽やかで愛しい歌を歌っている、その気持ちの持ちようが好きです。もともとのアイデアは、高杉の裏の顔が、ゴロゴロ休みたい、おうのとずっと寝ていたいのに、世の中がほっといてくれないという「弱さ」や、それを許さない世の中という「苦しさ」を描こうとしてスタートした作品でした。

――おうの役の太田さん、お千代役の土本さんは、出演が決まった時の第一印象はいかがでしたか?

太田 私は京都生まれなんですけど、すごく歴史が苦手で……。京都って歩けば歴史みたいな場所なんですけど苦手意識があって、最初はタイトルを聞いて身構える感じがありました。でも、初演を拝見したらすっとその世界に入れて、テンポ感もすごいですし、笑ってたらいつのまにか泣いてるみたいな感じで、心にジーンとくる素敵な作品だな、と思いました。初演の評判が良かったとお聞きしていたので、自分にやれるのか怖い部分もありましたが、今は楽しみです。おうのは芸妓を辞めてまで、晋作さんのために色々なところについていきます。その姿は、本当に真っ直ぐですごい愛だなと感じています。

土本 私は初演を観客として見ていましたし、前回公演の『伊能忠敬、測り間違えた恋の距離』から、引き続き呼んでもらえたのは素直に嬉しかったです。ただ、前回の役者さんが演じたお千代が、私とは全然違うすごくキュートで愛らしい造形だったので、私がやるのは大丈夫なのかな?という不安はありました。自分のできることをやるしかないという諦めからスタートしています(笑)。読み合わせをしてみたら、前回もあった「みんなで作戦を立てて実行する」シーンづくりが、本当にスポーツやリズムゲームのようにはめていく感じで、「あ、そうだ、アナログスイッチはこれが楽しかったんだ」と思い出しました。

――稽古場はどのような雰囲気で進んでいるのでしょうか?

太田 すごく和気あいあいとして、明るい稽古場です。私は初めてだったので、最初はちょっと緊張もあったんですけど、皆さんが入りやすい空気にしてくださっていて、素敵だなと思いました。

佐藤 僕はむしろ、みんな喋りすぎだろ、騒ぎすぎだよってちょっと引いて見てるんですけど(笑)。でもまぁ、僕は担任の先生みたいな立場で、お客さんが笑うだろうなという時は素直に笑うようにしています。笑いの稽古って何度も繰り返すと飽きてきて、どこでウケるかわかんなくなって迷い始めるので、一番観客に近い立場としてのリアクションは大事にしていますね。

土本 本当に教室みたいな感じですよね。佐藤さんは“友達みたいな担任の先生”です(笑)。それに最近は、劇団員たちが教室の隅の楽しそうなテンションのまま舞台の上にも乗っているのが、実はすごいことなんじゃないかと思い始めています。クオリティを上げるために……というより「もっと先生を笑わせよう」みたいなバイブスで、毎回いろいろ変えてチャレンジしている。それがアナログスイッチにしかない魅力だと思っています。

――それぞれの役どころについて、今感じていることを教えてください

土本 お千代は、宿の娘に扮した坂本龍馬の部下ということで、すごく知的で聡明で準備ができるタイプ。私とは真逆だなと感じています。でも、お芝居に迷ったときは……基本は“おもろい方”を選んで演じています。そのうえで、お千代の人間味をどこで出せるか、さじ加減を調整しながら考えているところです。

太田 おうのは、晋作さんが好きだからどうするか、という芯がしっかりある女性。可愛らしくて素直な子だなという印象です。私も「これは絶対こうしたい」と決めたら突き進むところがあるので、芯がある部分は似ているかもしれません。一つ一つの出来事に対して、顔に出ちゃったり言葉に出ちゃったりする素直さを大事にしたいです。

佐藤 おうのは、僕が歴史ものを読んできた中でのイメージですが、龍馬の妻のおりょうに近い、物事をはっきり言って怖気づかない強さをイメージして書いています。ふわふわ流されるだけの人間ではなく、強い意志を持って晋作を支え、最後は送り出す、現代にも通じる女性像にしたい。お墓を守り続けたという史実からも、彼女の強い意志を感じるんですよね。お千代については、実は土本さんのキャラクターのほうが最初のイメージに近いんです。めちゃくちゃハマってると思っています。

土本 それを聞けて、めちゃくちゃ安心しました(笑)。

――最後に、見どころと読者へのメッセージをお願いします

太田 私は囲炉裏のシーンがやっぱり見どころだと思っていて……。

佐藤 そうだね。それぞれA、B、Cと同時並行で作戦が進んで、それが囲炉裏のシーンでクロスするところは、やっぱりこの作品の最大の魅力になるんじゃないかな。

太田 そこに向かって、すごくみんなが一生懸命やってるところが、愛おしくて、おかしくて、面白くて。台本を覚えるために、何度も何度も読んでいるんですけど、何回も笑っちゃうくらい大好きなシーンです。私みたいに歴史が苦手な方も楽しめますし、キャラクターの一人ひとりを全員大好きになれる作品です。

土本 一人一人の俳優の、ふとした仕草みたいなものにたまらない瞬間があります。「私だけ笑ってるな」というツボがどの役にもあるので、一秒も気を抜かずに、ふざけているみんなを見つけてほしいです。絶対に笑顔にするので、大丈夫です!劇場を出るときには足取りが弾むような、軽やかな気持ちになれるはず。後悔はさせません!!

佐藤 ラストシーンでそれぞれの想いが明らかになったとき、今までのふざけたやり取りが、実はそれぞれの思いを持って行動してたんだな、と感じられる納得感を味わってほしいです。演劇が初めての方でも見やすいので、演劇デビューとしてぜひうちの劇団を使ってください。入り口としてぴったりの作品だと思いますよ。

インタビュー・文/宮崎新之