こまつ座第157回公演『国語事件殺人辞典』|筧利夫 インタビュー

筧利夫、初のこまつ座、初の新歌舞伎座出演作に意欲
「井上ひさしさんに挑む姿を見てほしい」

こまつ座第157回公演『国語事件殺人辞典』で主人公の国語学者・花見万太郎を演じる筧利夫が、上演に向けて意気込みを語った。

脚本は井上ひさし。筧は台本から受ける印象をこう語る。

「普段、日本語を使っていますが、日本語の成り立ちをはっきり知らないまま使っていたんだなということがセリフから伝わってきました。お芝居としての面白さはもちろん、非常にためになる作品だなと思いました。井上ひさし先生は普段から言葉を大事にして台本を書かれていたと思うのですが、本作はさらに言葉に集中して、格闘された作品ではないかと思います。楽しむと同時に、ちょっと勉強もするつもりで劇場に来ていただければ」

国語学者の花見万太郎の人物像は、井上ひさしそのものであると受け止める。

「花見万太郎は井上ひさしさんの考えの象徴でもあるかなと思いました。井上さんがご自身について書かれている印象です。それを演じるのは、やりがいがありますね。稽古で相手役の立ち上がり方やバランスを見て、そこで感じたことが花見というキャラクターの色づけになると思いますので、稽古でいろいろトライしていきたいですね。役に向けても、今までとはちょっと異なるアプローチになるだろうと思います」

こまつ座も初めての出演となる。

「僕は井上ひさしさんの作品に出るのも初めてなので、挑戦のしがいがありますし、責任の重さも感じます。最初に台本を読むときは、いつもはオファーされた役を自分が演じるつもりで読むのですが、今回は全くそんなことがなくて、客観的に読みました。その後に、この役を俺がやるんだと思って少し慌てたのですが、今は自主練習しながら、だんだんと自分は花見万太郎だと思うようになりました」。

還暦を過ぎた今、芝居に対する向き合い方にも変化が生まれたという。

「今の方が前よりも難しく考えるようになりましたね。昔は考えなかったような細かいことまで考えるようになりました。昔は勢いだけでやっていたので、とにかくセリフを覚えて、完璧にして、稽古で皆さんとぶつかって、あとは野となれ山となれというところがありましたが、最近はそれだけでもないな、と。今までと違う試みとして思うのは、きちんと相手に伝わるようにしゃべること。もちろん決まったセリフをしゃべるのですが、なおかつきちんと相手に理解してもらえるようにしゃべる。相手に100%伝わるようにしゃべるということは、今まであまり考えていなかったかもしれないですね。でも、今回の芝居ではかなり大切なことだと思います」

そして、「言葉というものに挑戦し続けた井上ひさしさんに挑む我々の姿を、明るく楽しく見届けてください」と語り、劇場へいざなった。

取材・文/岩本和子
撮影/河上 良