高輪ゲートウェイ駅直結のMoN Takanawa:The Museum of Narrativesの開館を記念して実施される『マンガローグ:火の鳥』。本作は手塚治虫の『火の鳥 未来編』を“劇場でマンガを体験する”というコンセプトのもとに展開される特別な公演だ。
上映にあたっては、VOICEキャストとして、夏木マリ、梶裕貴、本郷奏多、古田新太、あの、山寺宏一がキャラクターに魂を吹き込むほか、ステージキャストである「MANGALOGUER」として又吉直樹、寺脇康文、花總まり、古川雄大、小森隼(GENERATIONS)、新内眞衣、千葉一麿が日替わりで物語を案内する。
今回は通し稽古を終えたばかりの小森隼(GENERATIONS)に、謎多き『マンガローグ:火の鳥』について話を聞いた。
――『火の鳥 マンガローグ』への出演にあたって、どのようなお気持ちですか?
個人的にずっと好きだった作品に携われることがとにかく嬉しいです。
――本公演は、マンガ原作の舞台化でもアニメ化でもないとのことですが、小森さんはどう捉えられていますか?
新しい“マンガ体験”ってところがピンと来る言葉なのかなと思っています。お芝居でもないし、かといって朗読劇でもない。イマーシブ空間でのマンガの新解釈だと思っています。
――巨大3面LEDに『火の鳥』の原画を投影し、物語が展開されるんですよね?
いやあ、これがね、凄いんですよ。実際の原画を見るだけでテンションあがります。しかもカラーですから。原作を知っている側からすると感動的です。しかも、着彩をしてくださったのは、手塚治虫先生の元アシスタントの方なので、手塚テイストというか、現代ではありえない色の配合で再現してくださっています。赤色でも普通の赤色じゃなくて綺麗なんですよね。黄色もちょっとマスタードっぽい感じだったり。早く実際に見て欲しいです。
――マンガはページを捲りながらひとりで読むものですが、今回はそうではない?
マンガって基本的にはひとりで読むだろうし、自分のペースで読めて、集中する場所も違う。それこそセリフや場面も頭の中で解釈して物語を完結させちゃうと思います。ですが、マンガローグはそれを開放的にして、会場に来たみなさんと共有しあえるのが一番のポイントだと思います。みんなで同時に没入していけるというか。
――声優キャストも豪華です。火の鳥役の夏木マリさん、マサト役の梶裕貴さん、ロック役の本郷奏多さん、猿田博士役の古田新太さん、タマミ役のあのさんと錚々たる顔ぶれです。
皆さん手塚治虫作品への愛情をダイレクトにキャラクターに投影されていて素敵です。特に火の鳥の声を演じられている夏木マリさんの声は、本当に火の鳥に囁かれている気になります。
――小森さんは、もともと『火の鳥』がお好きだったんですか?
大好きです。10代から読み始めて、3年に1回くらいは読み返しています。なので今回のオファーも「俺しかいないでしょう!」って立候補して出演しているようなものです。
――『火の鳥』のどこが魅力なのでしょうか?
最初はビジュアルに惹かれました。アトムやブラック・ジャックより火の鳥が目についたんです。それで読んでみたら……意味がわからなかった。どのエピソードを読んでもわからなくて、でもそれが魅力的だったというか、全部の解釈を放り投げて、読んでいるあなたに任せますという部分にどんどんハマっていきました。
――わからないからこそ何回も読み直す?
歳を重ねて読み直すことで感じ方が全然違います。20代で読んだときは、SFとして読んでいたんですけど、30代で読むとそれこそ社会情勢とか、当時の自分ではキャッチできなかった情報と照らし合わせて読めました。読むタイミングや時代によって解釈が違って読めるというのは凄く面白いと思います。
――今回は全12編ある『火の鳥』シリーズのなかでも“未来編”が上演されます。『火の鳥』は地球創生から果てしない未来までを描いた壮大な物語ですが、“未来編”はそのなかでも、もっとも先の時代となる西暦3404年から物語がスタートします。小森さんが惹きつけられた部分は?
電子頭脳同士のバトルです。人類を支配している大国のAI同士が会話するところとか。この作品は1967年に描かれたそうですが、当時はきっと荒唐無稽な話として受け止められていたと思うんです。ですが、60年後を生きる現代人として読むと、全く違和感がない。なにしろAI同士で会話をさせたら違う言語で勝手に会話をはじめたりするってことが現実で起きていますからね。今はめちゃくちゃリアルに感じます。
――小森さんはステージキャストで「マンガローガー」として出演されます。どんなことをされるのですか?
ロボットアームの“鉄腕アーム”と共に『火の鳥』の世界に巻き込まれていく役です。マンガを見ているみなさんと同じ気持ちで参加するので、大げさなリアクションやセリフを言わず、ニュートラルな状態を意識しようと思っています。
――共演者が“ロボットアーム”というのも考えてみれば不思議ですよね。
凄く面白いですよ。“ロボットアーム”はただの機械じゃなくて、実際に振り付け師の方が動きを考えて、それを反映させています。キャストのひとりとして演出されているんです。そこに山寺宏一さんの声が入るので、舞台上の小道具ではなくて、キャストとして存在感があります。
――巨大なLEDで見る手塚マンガに加え、素晴らしい声優、ロボットアームと小森さんの掛け合い、照明や音楽、コマを見せていく演出も相まってまさに“新たなマンガ体験”ができそうですね。
音楽も素晴らしいです。まだ音楽は完成していなくて、稽古中も何度も入れ替わっていますが、とても良いBGMができてきています。本番はどんな音楽になるのか僕もワクワクしています。マンガってイメージを膨らませるものですし、読んでいる人の脳内でしか再生されないものですが、それを五感で感じるのは楽しい体験になると思います。会場の匂いや、照明の光で感じる肌の感じとか、家でひとりで読むよりは情報量が凄く多いですからね。
――新しい会場というのも興味深いです。
会場のBox1000も素晴らしい場所です。まさにイベント、ライブをするために作られた場所だなと思いました。照明やスピーカーの自由度も高いですし、自分自身も普段から音楽をやっているので、ここでライブをやってみたいなと思わせてくれる場所でもありました。あの装置が本番でどんな相乗効果を生むか僕も楽しみです。
――『火の鳥』のテーマをどう受け止められていますか?
この作品を通して今の自分が思うことは、『自分の意思を持ちましょう』ということです。自分が意思をもって素直にいることが未来を変えることなんだろうなと捉えています。もちろん、子どもたちが見たら違うテーマを感じるだろうし、だからこそ終わった後に「あそこ怖かったね」、「ああいうところに共感するね」って話すことに意味があるのかなって思います。
――受け取った思いを話し合えるマンガ体験ってなかなかないですもんね。
そう。マンガについて話し合えるっていうのは、マンガローグのいちばん魅力的なところかなと思います。世代だったり、立場だったり違う人たちが同時に見る機会になると思うので、いろいろなことを話し合って、広がっていってほしいですね。
――最後にチケットを購入しようと迷われている方へ声をかけるなら?
マンガローグって新しいエンターテイメントだと思います。それをMoN Takanawaという新しい施設のなかで、50年以上前に描かれた作品を、新しい技術を使って上演することはエンターテイメントの分岐点に立てているということでもあり、僕はとても意味のあることだと思います。この特別な瞬間を逃すことなく体験して、語り継いで貰えたらなと思っています。
インタビュー・文/高畠正人
