こんにち博士(南極)×村角太洋(THE ROB CARLTON・爍綽と)│特別対談インタビュー

昨年10月に上演されたTANK PLAN『死んだ山田と教室』で初タッグを組んだ南極のこんにち博士とTHE ROB CARLTONの村角太洋。原作・金子玲介による同名小説は刊行まもなく読者の話題をさらい、ポテンシャルの高い俳優陣の共演と今をときめく劇作家の協働で挑んだ最速の舞台化も大きな反響を呼んだ。
自劇団での精力的な活動はもちろん、外部公演でも幅広い活躍を見せるこんにち博士と村角太洋。5月には南極『ホネホネ山の大動物』爍綽とvol.3『裏緑特技悲喜話』と、それぞれが作・演出を手がける新作公演の開幕も控えている。ともに関西で演劇活動をスタートさせ、作・演出のみならず俳優としても創作に奔走する二人が、その劇作において大切にしていることとは? 互いの作風の印象、劇作や演出における共通点や違い、それぞれの新作公演の意気込みや今後の展望までを話してもらった。

南極とTHE ROB CARLTON
互いの劇作に感じた印象

―昨年上演された『死んだ山田と教室』では脚本をこんにち博士さんが、演出を村角さんが手がける形で初のタッグを組まれましたが、実はこうした対談は初めてなのだとか!

博士 そうなんですよ。分業だったこともあり、なかなかゆっくりお会いできなかったので、すごく嬉しいです。

村角 僕も嬉しいです。あの作品は登場人物が17人と多かったこともあり、交通整備が大変だったのですが、博士さんがうまくテキスト化して下さっていたので、演出もやりやすかったです。青春群像のテイストも脚本段階でしっかり描かれていて、お芝居に立ち上がらせていただくうえですごく効果的でした。

博士 ありがとうございます! お写真は拝見していたのですが、その時から村角さんキャラの立ったムードがすごくいいなあと思っていたので「やっと実物に会えた!」って感じです(笑)。だって、すごくいいお顔じゃないですか。勝手にニヒルな印象を抱いていたのですが、めちゃくちゃ物腰柔らかで、それもびっくりしました。

村角 それで言ったら、博士さんもすごく個性的じゃないですか。団体も個性的だし、個人の宣材写真も「一体これはどこで撮ったんだ」、「このポーズはなんだ」とインパクト満載だったので、「絶対尖ってる!」と思い込んでいたんですけど、すごくソフトな人となりでいらっしゃって。お互いに、いい意味でギャップのある再会になりました!

―お二人はそれぞれの作品も観られているのだとか。まず、その印象からお聞きしてもいいですか?

博士 THE ROB CARLTONの『Meilleure Soiree』を映像で観させてもらったんですけど、すごく面白かったです。とくに、わかりやすさがいいなと思って…。ボケとツッコミがちゃんと会話として成り立っているんですよね。演劇の中のそういうラリーって流されがちで、なんとなくやっていることが多いと思うのですが、一つひとつがすごく丁寧に積み上がっている印象がありました。

村角 THE ROB CARLTON自体がコメディに振り切っている、というのもあるかもしれません。今、この人が何を思っているのか、やっているのかという前提をはっきりさせないと、お客さんの笑いにはなかなか繋がらないんですよね。一方で、コメディではないお芝居で全部を説明しすぎるとトゥーマッチになるし、それよりも些細な機微が大事になってくる。コメディだから、自団体だからあえて強めにわかりやすくやっているところがあるので、そこに気づいてもらえて嬉しいですね。

博士 熟練の技だなと感じました。

村角 僕は『wowの熱』のビデオ版を観させてもらったんですけど、まず思ったのは「どうやって作ったんだろう」という驚きでした。劇場版ではまた作り方が変わるんだろうなと思ったんですけど、ニュアンスとしては上演版とほぼ一緒なんですよね。

博士 そうですね。多少カメラの入るところは考えてはいたのですが、基本的にはあのままのことを舞台上でやっている感じですね。

村角 それこそ、「わかりやすさ」をどこまで漏らしていくのか、といった匙加減をすごく考えられているのではないかと感じました。結構意識をされましたか?

博士 基本はわかりやすくしたいと思っているのですが、『wowの熱』は構造自体が複雑なので、複雑に考えたものをできるだけわかりやすく伝える感じで作っていました。ただ、わかりやすいか、そうでないかというよりかは、「新しいことがやりたい」という気持ちが強くて…。新しいことやろうとすると、どうしてもわかりづらくなっていくので、そこを自分たちのカラーに沿って調整したようなイメージです。

小道具や美術…世界観のデザインへのこだわり

―対談にあたり、私もお二人の共通点をちょっと考えてみたんです。そんな中で思ったのは、美術・小道具を含めた舞台の世界観へ緻密なこだわり。ジャンルは違えど、「シーンを景色としてどう見せるか」といった追求は、お二人の一つの共通点かなと感じました。

博士 それで言うと、THE ROB CARLTONの舞台には必要なものが全部がちゃんとあるんですよね。例えば、ウィスキー瓶とかもそうですけど、劇中に出てくるものがちゃんと全部そこにある。そこが面白いなと思いました。個人的には、「喜劇とコントの違いってそういうところにもあるのかも」とも思っていて…。コントは小道具を最小限におさえる部分があると思うんですけど、THE ROB CARLTONのコメディには全部が本物としてちゃんと出てくる。さらに、出てくるものが上質で、お金持ちそうにも見えました!(笑)。

村角 わ!そこ気づかれました? そうなんです、お金を持っているように見せたいなって思っているんですよ。登場人物がね。決して劇団に潤沢なお金があるわけではないんですけど!(笑)

博士 お金の話で言うと、僕はお金のことを考え出すと何もできなくなるので、まずは好きに進めて、ストップをかけてもらうようにしています(笑)。

村角 健全な方法ですね!

博士 あと、僕はウェス・アンダーソンの映画の世界観がすごく好きなんですけど、THE ROB CARLTONの舞台にはそれに通じるテイストを感じたりもしました。僕も演劇を作る時は極力そのもの自体を出したくて、できるだけ見立てを使わずにいたい気持ちがあるので、そのあたりは近い気もします。

村角 南極さんは物量がめちゃくちゃ多いですよね。あれを全部手作りで作るのは相当のことだと思います。僕らはできるだけ物を使わないようにしていて、ウイスキーセットだけとか、ノートだけとかに留めているんですよ。舞台中に物があればあるだけ動機が増えちゃうというか、人物の動きが制約されるんですよね。例えば、机に向かう動機はウイスキー飲む時だけに制限しておけば、俳優の動きが逆に自由になる感じがあるんです。対して、南極さんはそもそもの人数が結構いらっしゃるし、物量自体にも意味がある感じがしますよね。

博士 こうして改めてお話を聞いて思ったのは、村角さんはすごく考えて物を出されているということでした。というのも、僕はあんまり考えずに出している節があって…。「出てきたら面白そう」と思ったものをどんどん作って出しちゃう感じなので、しっちゃかめっちゃかになるところもあるんですけど。どちらかっていうと、舞台上パンパンにやりたいことをやって、好きなところを見てもらう感じにやりたくて…。

村角 それが南極の一つのブランド性に昇華されているというか、カラーとして成立している感じがします。僕はそれができないし、なんなら今後はもっと減っていくかも! もう小道具がペンだけとかにして、いつかそれで1時間半ぐらいできたらいいなみたいな…(笑)。

博士 面白そうですね! あと、観客が自然に誘導されるというか、視点が繊細にデザインされているとも感じました。

村角 そう言っていただけるのはすごく嬉しいです。稽古場でも時間をかけて視線誘導を考えているので。「このタイミングはお客さんがこっちを見てるから、あっちで物を出すときはこの人がここまで動いた時にしよう」とか。どこまでお客さんの視界に入るのか、みたいなことはすごく考えます。

作家と演出家と俳優
3つの脳をどう切り替える?

ー南極『ホネホネ山の大動物』と爍綽とvol.3『裏緑特技悲喜話』では、お二人とも作・演出だけでなく、出演もされますね。

博士 僕も割と出る方なんですけど、村角さんがボブ・マーサムさんとして別名義で出演されているのがすごいいいですよね。ちなみに、『裏緑特技悲喜話』はどのくらい出演されるんですか?

村角 爍綽と主宰の佐久間麻由さんがオファー段階から「いっぱい出て下さい!」と言ってくださったんですよ。これまでホーム以外のプロデュース公演や外部公演の時はポイント出演が多かったのですが、今回はせっかくなので、THE ROB CARLTON本公演くらい出させてもらおうかなと。「稽古場も劇団稽古のようにやってほしい」と言っていただいているので、すごくありがたいですね。南極『ホネホネ山の大動物』では、博士さんはどのくらい出演されるんですか?

博士 僕も今回は結構がっつり出演するんです。4年前に上演したものを書き直し、再制作として作っているのですが、僕とメンバーの和久井がめちゃくちゃ喋る役なんです。昔アメリカで実際にあった化石戦争をテーマにしていて、平たく言うと、どちらがその化石を発見したかを取り合う話で、競争が抗争となり、ヒートアップして周囲が巻き込まれていくという…。僕は出ること自体は好きで、いつもはあまり考えずに舞台上に出ているんですけど、今回そうは行かず、俳優も必死にやっています。

―たしかに、作家脳、演出家脳、俳優脳みたいなのがそれぞれある気がしますよね。作家脳と演出家脳は互いに持ちつ持たれずの脳みたいな感じですけど、そこに俳優脳が入ると、すごく大変そう!

博士 そうなんです。作・演出・出演を全部やるって、実際のところめっちゃ大変じゃないですか? 村角さんがどんな風に稽古を進めていらっしゃるのか知りたいです!

村角 基本的には「舞台上に僕がいる」ていで進めますが、稽古が後半になるにつれてそうはいかなくなってくるので、役に入り込んだら演出もへったくれもない感じになっていきます(笑)。俳優として舞台に立ちながら演出をしたら、双方が機能しなくなっちゃうので、切り分けて稽古をするようにしていますね。前半は自分がいない状態で幅を持たせて作りつつ、後半にその幅の部分に入り込んで、ドッと詰めるような感じですね。

博士 なるほど! 映像を拝見したとき、俳優としてのボブさんが舞台上ですごく自由自在にいらっしゃる感じがしたのですが、そういった過程があったからなんですね。

村角 後半に僕が入ることでみんなの芝居のバランスも変わると思うので、ある程度役者に幅を与えるというか、ゆとりを持って設計したところに入るという感じですね。でも、今回のこんにちさんは、僕よりもガッツリ出るんじゃないですか? お話を聞く限りメインどころですよね。

博士 そうなんです。ただ、さっきもちらっと話した「同時多発性」にこだわりたいとも思っていて、ホネホネ山という世界では、いろんなことがいろんなところで起きているから、それを好きに見てもらう感じにできたらなと思っています。

村角 たしかに、作・演出・出演を兼ねているからこそ、「全体を引きで見る」という視点は重要ですよね。あと、気になっていたのは、博士さんは南極の主宰ではないんですよね? 作、演出が主宰を兼ねることが多いなか、キャプテンが別にいるって珍しいなと思って。

博士 僕は南極では、作・演出のみを担当していて、キャプテンも別で、会社化もしているのですが、その代表も別のメンバーが務めています。

村角 素晴らしい分業! ところで、いつか聞こうかと思っていたんですけど、みんなには何て呼ばれているんですか?こんにちさん? 博士?

博士 メンバーからは「こんちゃん」とか言われるんですけど、演劇を通じて知り合った最近の人からは「博士」と呼ばれることが増えました。

村角 じゃあ博士で!

博士 名前の話で言うと、僕もぜひ聞きたかったんですけど、村角さんがお名前を2つ使い分けているのは、どういう経緯や意図があってのことなんでしょうか?

村角 実は、ボブ・マーサムっていうのは演劇を始める前の高校時代から使っていたニックネームなんですよ。お芝居を始めるにあたり、本名の村角太洋も気に入っていたからどうしようか悩んだんですけど、作・演出は本人がやるからいいとして、舞台上の役者は別人物という設定に自分の中でしてしまえば、相反することもできるというか、共存しなくて済むんじゃないかなと思ったんです。だからか、僕はボブ・マーサムがやってる芝居をすごく客観的に見られるんです。

博士 へえ〜面白い! 演出と俳優の脳の違いの話にも通じる話ですね。すみ分けの秘訣はそういうところもあったんですね。

村角 いい効果にはなっているんですけど、ややこしいので、説明しないとわからないんです。本当に2人の人間がいて、なんなら一人は海外の人だとも思われかねない名前なので(笑)

演劇、流行ってきてません?
演劇界の未来と新作への展望

―それぞれの団体や作家のスタイルに秘められた哲学を伺えるお話でした。そんなお二人は、今の演劇シーンをどんな風に見つめていらっしゃるのでしょう?

村角 南極は全員で10人。この人数を維持するのも、役割を回せるのもすごいですよね。僕は少し世代が上ですが、南極の世代の団体からは並々ならぬエネルギーを感じます。

博士 嬉しいです! 僕は、演劇がちょっと流行ってきているのを実感しているんですけど、村角さんはどう思われますか?

村角 あると思います! 

博士 同時に、今が正念場やとも思っていて、南極としては演劇をマジでバズらせたくて、エンジンをふかしている感じなんです。

村角 そうしたアグレッシブさからはすごく刺激をもらいますし、作風としても、博士は僕のイマジネーションにはないものを作られるから、話を聞いていてもすごく面白いです。

―お二人それぞれの劇作や演劇シーンへのまなざしの深さが伝わる対談でした!最後に、開幕を控える南極『ホネホネ山の大動物』、爍綽とvol.3『裏緑特技悲喜話』の見どころをお聞かせ下さい。

村角 THE ROB CARLTONの公演のように作らせていただきつつ、プロデュース公演ならではのキャストの皆さんとご一緒できるので、今までにない魅力の詰まった作品になる気がしています。特に女性のキャストに多く出演いただくというのは、THE ROB CARLTONではなかなかないことなので、どんな化学反応が起きるのか僕も楽しみにしています!同時に、爍綽とvol.3『裏緑特技悲喜話』を観て「THE ROB CARLTONを観た」と勘違いしてもらえたら最高だなと思っていますので、過去にご覧になったお客様にもそうでない方にも楽しんでもらえたらと思っています。

博士 『ホネホネ山の大動物』は、4年前の初演時は外部の客演さんとともに作った作品なのですが、今回はオールキャスト南極で挑みます。メンバーにとっても、過去作の中でも思い入れが強く、愛が深い作品なのですが、それこそ1回根っこから掘り返すように新たなクリエーションを重ねています。再演当時は80人くらいの方にしかお届けできなかったので、この4年で南極ができるようになったことや成長の軌跡をしっかり込めて、グレードアップした姿を団体としても、作品としても見せられたらと思っています。過去の自分たちよりも確実に面白いものを作れている自信があるので、楽しみにしていて下さい。

インタビュー・文/丘田ミイ子