八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露『六月博多座大歌舞伎』取材会レポート

6月2日(火)~6月22日(月)に福岡・博多座で上演される『六月博多座大歌舞伎』を前に、八代目尾上菊五郎が来福し、取材会が行われた。今回は尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎襲名披露と、尾上丑之助改め六代目尾上菊之助襲名披露でもあり、博多座は東京・大阪・愛知・京都と続いてきた大劇場公演の締めくくりとなる。

はじめに襲名披露から一年が経った今の心境を問われた菊之助は、八代目という名前がようやくなじんできたと和やかな表情で話し、「初代の菊五郎に自分の芸を認めていただけるかどうかという緊張感をもって舞台をつとめています。名前の重みを日々感じながら舞台に立たせてもらっています」と明かした。

今回は息子である尾上丑之助改め六代目尾上菊之助の襲名披露でもある。「菊之助は12歳で襲名の機会をいただきました。この1年を通して懸命に努力をして、大人でも骨が折れるような大役を勤めさせていただき、精神的にも肉体的にも成長していると思います」と目を細めた。菊之助は博多座初お目見えとなる。

昼の部はご祝儀舞踊の『寿式三番叟』で幕を開ける。能楽の「翁」を題材にしたもので「彩り豊かな衣裳を身につけた五人の三番叟が華やかに踊ります。翁は彌十郎さんにつとめていただきます」。絢爛な舞台で劇場は一気に、二代同時襲名という華やいだムードに包まれることだろう。
二つ目には義太夫狂言の三大名作の一つ、「菅原伝授手習鑑」から荒事と様式美が楽しめる『車引』が上演される。九州にも縁がある話で「初代の菊五郎も菅原道真公を信仰しておりました」。梅王丸を菊之助、松王丸を中村鷹之資、桜丸を上村吉太朗が勤める。菊之助は昨年6月に梅王丸を演じている。1年を経て、菊之助が今回はどのように梅王丸を演じるのか、そこも見どころとなる。
昼の部の最後の演目は新古演劇十種の内『茨木』。新古演劇十種は五代目菊五郎が定めたものだ。源頼光の四天王の一人である渡辺源次綱が羅生門に出る鬼を退治したという伝説が元となっており、綱と、腕を切られた鬼とが登場する。菊五郎は音羽屋の家の芸として初役となる。見どころのある舞踊劇でもあるが加えて、「人間が鬼を退治するという物語ですが、作品の根底に流れる悲しみや憎しみなどを感じていたければと思います」。

夜の部は夫婦愛が描かれた人気の『ぢいさんばあさん』からはじまる。「こちらは心の温まる素晴らしいお話で、あたたかい人の思いが流れる作品です。博多のお客様にも感じていただき、興味をもっていただけるものと思います。言葉も平易で非常にわかりやすいです」。

次の『男伊達花廓』は市川團十郎が襲名披露に花を添える。「團十郎さんの颯爽とした姿と華やかな立ち回りの舞踊をご覧いただきたいですね」。そして口上を挟んで、最後は『連獅子』となる。子を思う親と、その親の元で育ってきた子、親子の獅子の姿が、菊之助・菊五郎にそのまま重なる。「一年ぶりに菊之助と踊らせていただきます。襲名という大きな節目にあたり、私も懸命に彼に稽古をつけてまいりましたし、彼も食らいつくように努力してきました。親子の獅子が勇壮さや華やかさをご覧になっていだたきたいですね」。

初代が尾上菊五郎という名前を京都で名乗ってから約300年。七代続く名跡であり、その名前は歌舞伎と共に歴史をつくってきた。「襲名にあたり、歴代の菊五郎がどういう役を大事にしてきたのかを勉強し直し、考え続けながら舞台に立っています。代々の菊五郎はいつのころもその時代のお客様に歌舞伎の魅力をどう伝えるのかを考えてきたのではないかと思います。私も古典の魅力、復活狂言の魅力、新作歌舞伎と3本柱で、今後も魅力を伝えていきたいですね」。菊之助については、今の歌舞伎が好きという思いを持ち続けられるように育てていきたいと力を込めた。

菊五郎の博多座の登場は3年ぶりとなり、襲名披露公演はここでひと区切りとなる。「大好きな劇場」である博多座で、新菊五郎と新菊之助誕生という、歌舞伎界の新たな幕開けを豪華絢爛な演目ともに見届けたい。

取材・文/山本陽子