Butlers’ 歌劇『悪魔執事と黒い猫』~天使が来たりし古の塔編~│ゲネプロレポート

Butlers’ 歌劇『悪魔執事と黒い猫』~天使が来たりし古の塔編~が6月6日(土)に初日を迎えた。原作は“貴方の現実に寄り添い、メンタルをいやす”ノベルゲーム「悪魔執事と黒い猫」(スタジオわさび)。舞台版の初演は2024年に上演され、丁寧に築き上げられた世界観が好評を博した。

待望の続編となる本作では、ベリアン・クライアン役の藤田 玲を筆頭に、全キャストが続投。さらに初登場キャラクターも加わり、悪魔執事たちの心により深く迫る物語が展開された。今回は初日を前に実施されたゲネプロの様子をレポートする。

「おかえりなさいませ、主様」

開演前の劇場に、ベリアン・クライアン(藤田 玲)のやさしい声が響く。初演に引き続き、今作でも実施される「Welcome to the Devil’s Palace〜執事による瞑想タイム〜」。悪魔執事たちが導く瞑想タイムは、約2年ぶりとなる新作上演を前にはやる気持ちを落ち着かせてくれるだろう。

1幕の中心となるのは、1階執事のバスティン・ケリー(今井俊斗)。演じる今井は、若い執事らしい青臭さと真っ直ぐさ、そして大きな苦しみのなかでもがく姿を必死の表情で表現。序盤からいかんなく披露される剣技の緊迫感が、観客を物語へ引き込んでいく。

そんなバスティンを支えるのが同じ1階執事のロノ・フォンティーヌ(安藤夢叶)だ。普段は喧嘩ばかりのふたりの掛け合いは微笑ましくも、明るいロノが見せる必死さには刺さるものがある。バスティンの危機にロノが語りかけるソロパートは、安藤の繊細ながらも爆発力ある表現が見事で、観客の心を震わせた。

2幕で物語の軸となるのはハウレス・クリフォード(松島勇之介)だ。奪われた大切な人への思いを抱えながら、知能天使の策略によって追い詰められていくハウレス。演じる松島は、ミュージカル『レイディ・ベス』のフェリペ役での経験を感じさせる、さらに進化した歌声で、ハウレスの揺れ動く心を表現する。

ハウレスを支えるのは、同期であるフェネス・オズワルド(梶田拓希)とボスキ・アリーナス(木津つばさ)。成長著しい梶田が演じるフェネスとの芝居の呼応は説得力を増し、木津演じるボスキは無愛想ながらも、仮面から覗く片目だけで仲間への思いを滲ませてみせた。3人の芝居が絡み合い、2幕の大きな見どころに。同期だからこその信頼と絆で、主様の心とともに最大の危機にあるハウレスを救う展開は、本作の核となる場面だ。

2階執事たちの絆がテーマのひとつとなる本作。当然、後輩執事のアモン・リード(宮崎 湧)の存在も欠かせない。宮崎の透明感ある芝居が、アモンの仲間への真っ直ぐな思いと重なり、2階執事の絆の確かさを伝えていた。

執事たちを束ねるベリアン役の藤田は、柔らかな物腰と歌声で仲間や主様を包み込む。歌唱シーンでは、ルカス・トンプシー役の輝馬とともに牽引。後輩執事に道しるべを示すような説得力ある歌声で、困難に一筋の光を照らした。

ほかの執事たちも個性豊かだ。発作を抱えるラト・バッカ(伊崎龍次郎)に寄り添うミヤジ・オルディア(川上将大)、フルーレ・ガルシア(日暮誠志朗)の地下執事組。ルカスを慕うナック・シュタイン(二階堂 心)とラムリ・ベネット(石橋弘毅)の3階執事組。主様と観客をつなぐムー(村山董絃/福田龍世のWキャスト)の存在も、物語世界への没入を後押しする。

今作では、ついに知能天使が登場。浮遊感あるナンバーが加わり、音楽面の厚みも増した。軽さと残虐さを併せ持つセラフィム(桑原 勝)、頭脳派のケルビム(雨宮大晟)ら天使の不穏さが、執事たちの物語に緊張感をもたらしていく。

新たに登場したシノノメ・ユーハン(高橋祐理)とテディ・ブラウン(藤田倖羽)も見逃せない。人間と悪魔執事の間で揺れる葛藤を、限られたシーンながら想像力を駆り立てる芝居で表現してみせた。

初演でも好評だった重厚なセットも健在だ。石柱やステンドグラスを配した荘厳な空間が、デビルズパレスへと観客を誘う。可動式の階段や石柱によって舞台空間が自在に姿を変える様にも、演出を手がけるアレクサンドラ・ラターの作品愛が感じられた。

約2年ぶりに帰ってきた執事たち。開幕前の「おかえりなさいませ、主様」という言葉通り、観客を迎えてくれるのは、進化を遂げた13人の物語だ。絆と試練、そして救済。デビルズパレスで繰り広げられる新たな章を、ぜひ劇場で体感してほしい。

舞台写真

取材・文・撮影/双海しお