デキメン列伝 第7回 大山真志

“デキる”のみをものさしに、今後の舞台界を担っていくであろう、注目株の若手俳優をピックアップ。彼らが「デキメン(=デキる男優)」である理由、そして、隠れた本音をロング・インタビューで探る!

【第7回】大山真志 MASASHI OYAMA

人を楽しませる“エンターテイナー”であるときが一番楽しい


Writer’s view

数多居る若手男優の中でも、大山さんの持ち味はユニークだなと常々感じていました。大きくたくましい体に、深く響く歌声。ついつい三枚目のキャラクターを担ってしまうところがありながら、ファンをキュンとさせる男性的魅力もちゃんと持ち合わせている。はたまた筆者周辺では「息子にしたい!」なんて声が聞かれたり、アピール力が多様で幅広いのです。あらゆるものをドーンと受け止め“みんなの大山真志”たる彼の大きさはどこから来るのか。その答えと、25歳という狭間の年齢にいる今の心境を知りたくて稽古場を訪ねました。                  取材・文/武田吏都

 

――大山さんは子役出身で、歌、ダンス、芝居を長く続けてきていますが、この三要素でいうと、スタートは何から?

大山 僕は完全に歌ですね。それこそセリフを覚えるという作業をして芝居をするようになるなんて、子供の頃は全然思ってなかったです。小学4年生ぐらいから音楽カレッジみたいなところに通い始めて。きっかけはただただマイケル・ジャクソンになりたかった、みたいな(笑)。だから踊ることもカッコいいなと思っていましたけど、最初はただ人前で歌いたいという気持ちだけで、歌っていることが幸せでした。でもアルゴ・ミュージカルのオーディションを受けたとき、自分のダンスのできなさ加減に落ち込んで(笑)、母親に「ダンスを習いに行かせてくれ」って頼んで。それから、ジャズやタップやバレエやいろんなコースがあるダンススタジオに、毎日何コマも取りながら通いました。その中に演技の稽古ができるところがあったので、芝居はそこでやっと習った感じですね。で、小学5年生のときが初舞台です。

――マイケル・ジャクソンがきっかけというと、第二回に登場いただいた上口耕平さんを思い出します。上口さんもそうですが、マイケルにハマるには、世代的にだいぶ若いですよね?

大山 耕平くんとは僕がゲストで出た「聖☆明治座 るの祭典」(2014年)で初めて一緒になって、いろいろ話しました。お互いに「この人と話したいな」って空気はなんとなくあって(笑)。耕平くんがあの舞台で毎回やっていたマイケルのマネには、やっぱり愛を感じましたね。僕がハマッたのは、3歳のときに母親がマイケルの「デンジャラス」というアルバムを買ってくれて……。

 

――え、3歳のときですか!?

大山 そうなんですよ(笑)。だからずっとそれを聴いてたり、誕生日プレゼントにマイケルのビデオをもらったりもしたし。僕一人っ子なんですけど、母親は、もし僕が女の子だったら宝塚に入れたいって気持ちがすごくあったみたいで。だからそっちの世界に行くように仕組まれてはいたんでしょうけど(笑)。一方で父親は、僕のことを野球選手にしたかったんですよ。

 

――なるほど。体育会系のお父様と、芸術系のお母様とのハーフ(笑)。

大山 でも僕には野球は全く響かなくて、「キャッチボール行くよ」って言葉が恐怖でしかなかった(笑)。少年野球チームに入っていたんですけど、「先輩たちはバッティング練習してるのに、俺らは球拾いか」と思って。「球拾いしてる時間があったら、歌って踊ってる方がよっぽど楽しいわ」って感じてました。反抗期はなかったんですけど、「(野球チームを)辞めたいです」って言ったのが唯一の反抗だったかな(笑)。結局、スポーツには興味がなかったんですよね。とはいえ、水泳もやってたんですけど。泳ぐのは好きだったし、記録会とかで勝つことの楽しさは知ってたからそれはできたんですけど、野球みたいなチームスポーツで、「俺がこのボールを落としたら、それがきっかけで負けるかもしれない!」みたいにメンタル的な負担を背負って(笑)戦うっていうのが合わなかったんだと思います。だったら、自分ひとりの責任である程度までやっていけるものの方がいい。もちろん舞台もチーム力で闘うものなんですけど、例えばセリフが飛んでしまうっていうのは、恥ずかしいのは誰よりも自分であって。そういうことは乗り越えようと思えるんですけど。

――ただ、子供のときから身長も高かったそうですし(現在182cm)、お父様や周囲がスポーツをやらせたいと思う気持ちはわかりますね(笑)。

大山 水泳のときも野球のときもコーチに「辞めるな」って言われました。でも運動神経がそんなにいいわけじゃないんですよ。走るのも、めちゃめちゃ遅いし(苦笑)。だから僕にはスポーツは向いてないって気持ちが、自分の中にどこかであったんですよね。

 

――おかげで、進むべき道が早い段階で定まったと言えるかもしれませんよね。子役として舞台やCMで活動の後、2009年にミュージカル「テニスの王子様」に出演。以降は、途切れなく舞台出演が続いています。特にここ1年の主な作品を振り返ると、「ALTAR BOYZ」「CLUB SEVEN 10th stage!」「恋するブロードウェイ♪」vol.4と、子供の頃から積み重ねてきた歌やダンスが存分に活かせるショーアップされたステージが多かったですよね。

大山 去年の8月で25歳になったんですけど、この1年で自分がこれからどういう作品を中心にこの仕事をしていきたいのかがなんとなく見えたかなという気はしました。もちろん舞台に立つことが好きなんですけど、それ以上に歌ったり踊ったりしていることが好き。自分はミュージカルやショーが好きなんだなってことを改めて実感するような作品が続きました。

 

――それらを順番に振り返っていただけますか? まずは、ミュージカル「ALTAR BOYZ」。大山さんは、初参加の若手からなる“RED”チームのマシュー役でセンターのポジションを担いました。

大山 今回の「ALTAR BOYZ」では、僕ら新生“RED”のほかに、あの舞台を過去に経験した精鋭の先輩たちの“LEGEND”チームがいて。その中で僕たちは何で勝負するのかっていうプレッシャーが常にありました。なにしろ“LEGEND”のメンバーはダンスのテクニックとか以外にも、トークのアドリブ力だったりお客さんの気持ちのつかみ方っていうのも圧倒的だったので、一体何で闘えばいいのかなって。結局、答えは出なかったです。だから負けだなと思いました。“負け”って言い方もおかしいけど、「先輩、どうぞ」って気持ちになっちゃってた自分がいたから。

「ALTAR BOYZ」(2014年) 撮影/引地信彦

――“LEGEND”をそこまで意識していたとは、正直思いませんでした。

大山 意識しないように見せてました。「俺らは俺らで」って言ってましたけど、やっぱりどこかで意識してたし。“LEGEND”の稽古を隣で見せてもらったことがあるんですけど、信頼感が違うんですよ。例えば僕の役のマシューと法月(康平)がやったマークは、マークがマシューのことを好きっていう関係性なんですよね。僕と法月とはもう3年以上の付き合いがあったので上手くできてたとは思うんですけど、“LEGEND”で同じ役をやった義さん(東山義久)とマサさん(中河内雅貴)の関係性はやっぱりケタ違いに絆が深いというか。こういう関係性を築けば、あそこまでアドリブをぶっ込んでもちゃんと本筋に戻したりすることができるんだなと思うと、もっとメンバーと交流を持たなきゃいけないと思ったりはしました。だから毎日のように飲みに行って、ああしようかこうしようかって常々。(大久保)祥太郎は未成年だったからご飯のときもあったけど。「ALTAR BOYZ」はもし次があるなら、もっとガッツリつっこんでいって「もう負けないぞ!」って感じでいきたい。ダンスとかそりゃキツかったですけど(笑)、またやりたいと、こんなに思う作品はないですね。

 

――さっき“負け”という表現をしていましたけど、「またやりたい」というのはやり残した気持ちがあるという意味?

大山 というより、達成感ですね。5人しかいないキャスト、+バンドメンバーの「俺たちで作り上げたぞ!」っていうあの達成感は他の作品では味わえないので。僕個人は歌って踊ることが好きだし、曲も全部好きでした。あんなに歌ってて楽しいと感じたことはなかったかもしれない。ほんとに、また絶対やりたいです! 「ALTAR BOYZ」が終わってしばらくしてから、僕酔っ払って義さんに「もしまたアルターがあるんだったら、俺にマシューください!」って言ったみたいで(笑)、「そんなこと言ったヤツお前が初めてだ」って。そのとき義さんに言われたのが、「じゃあ、あのときのスタッフさんの名前、全員言えるか?」って。あそこの長になるってことはスタッフさん全員の名前を覚えることもそうだし、キャストだけじゃなくてバンドのメンバーもこの人に合わせたいって思えるぐらい引っ張っていかなきゃいけないってことなんだよ、みたいなことを言われたんです。僕は全然できていなかったし、今はまだまだ敵うわけねーやって思ったんですよね。

 

――初参加だった「CLUB SEVEN 10th stage!」ではその“LEGEND”の東山さんと再び一緒でした。

大山 義さんはもう今、お兄ちゃんのように慕っている存在です。大好きなんですよ! 「ALTAR BOYZ」のときは僕のこと眼中になかったらしいんですけど(笑)、「CLUB SEVEN」では面と向かって話し合ったりしてくれて、「お前、オモロいな!」って感じになって。なので、「CLUB SEVEN」のときは毎回飲みに連れて行ってくれて。男からしても惚れるような魅力のある人だなって、横にいて感じましたね。先輩たちはみんなお酒が大好きで、どんなにウェーイ!って感じになっても(笑)、本番ではキメる。自分の表現はこうだ!というのを舞台上で見せられる人はやっぱりカッコいいですよね。憧れてしまうぐらい。同じ舞台に立ったらライバルでなきゃいけなかったりするのかもしれないですけど、「あー、カッコいい!」と思ってしまう。「CLUB SEVEN」はそういう人たちの中でやれたので楽しかったですね。めったにないことなんですけど、こみ上げてくるものがあって、千秋楽で泣いてしまったんですよ(笑)。いや、毎日キツかったんです。50音メドレーの歌や振りを1日4曲ずつ覚えて、その後に芝居の稽古をしたり。それこそ同じ稽古をした日なんて1度もなかったんじゃないかと思うし。そういうキツい中で兄貴分の人たちが「余裕だ」ぐらいの勢いでサラッとこなして、「飲みに行くぞ!」っていうその男らしさ。……なんすかね、すごい楽しかったんですよ(笑)。

「CLUB SEVEN 10th stage!」(2015年) 写真提供/東宝演劇部

 

――その後が今年5月の「恋するブロードウェイ♪」vol.4。大山さんはこのコンサートのvol.1から出演している唯一のキャストになりました。

大山 一緒に皆勤を続けていたもっくん(太田基裕)がいなくなってしまって(笑)。僕にとって「恋するブロードウェイ♪」は、学校でいう通知表をくれる場所。特に僕は皆勤賞で、1、2、3と続けてきた中で歌のスキルも少しは成長してきているかなと思っていて。そして今回は15歳と16歳のメンバーもいて、その中でチームをまとめる立場として学ぶこともたくさんありました。スーパーバイザーの岡(幸二郎)さんにも「今回よく頑張ったね」と言っていただけたりもして、もちろん舞台でありショーなんですけど、そういう、今の自分がどこまでできるかっていう評価を出してもらえる“通知表”っていう言い方が自分の中では一番近いと思います。

「恋するブロードウェイ♪」vol.4(2015年) 撮影/羽田哲也

 

――「ALTAR BOYZ」でセンターを張ってリーダーの役割を果たして、次の「CLUB SEVEN」では初参加の最年少、そしてまたこの「恋ブロ♪」でまとめ役と、作品内でのポジションが行ったり来たりした1年でしたよね。若手とも中堅とも言い切れない、今の25歳という狭間の年齢ともちょうどリンクするというか。

大山 僕、今まで後輩に教えることとかあまりなかったんですよね。そういうのは他のメンバーがやってくれていて。でも「恋ブロ♪」の初日、16歳の(三浦)宏規が僕が座ってたベンチの横に珍しくソワソワしながらやってきて、「あのー、真志さん。大丈夫ですかね、僕?」って言うんですよ。彼はダンスはピカイチなんですけど、歌を人前で歌ったことがなかったんですね。そんな風に言われて、「あ、俺コイツからしたらすごい大人なんだなぁ」と思って。いつまでも若手だと思うなよ、と改めて自分に言い聞かせるじゃないけど(笑)。

 

――なんて返したんですか?

大山 「お客さんはきっと温かく見守っててくれるから、楽しんだ方がいいよ」って言ってあげたんですけど。僕、後輩にこうやった方がいいよっていうのがあまり上手い人間じゃないんですよね。それこそ義さんみたいに「俺の背中を見て着いてこいよ」なタイプというか、だからこそ義さんに憧れてるし。こういうアドバイスっぽいことをしたのも初めてじゃないかな。カンパニーに最年少で入ることも多かったから頼られること自体あまりなかったですし、僕自身はわりとなんでも自分でしてきたし。「そうするもんなんじゃないの?」って気持ちもあったからそれが出てたのか(笑)、怖い人みたいに思われることも多くて。その宏規や15歳の(廣瀬)孝輔も最初僕が怖かったみたいで、年長組では(内藤)大希に懐いてましたね(笑)。でも実は、年下の彼らとしっかり交流を持って、年長の僕らと彼らのパイプ役になってくれていたのが(味方)良介。そういう意味で、彼は人とのつながりを大事にしてくれる役者なんだなぁって思ったりとか。今後トップを張っていくときには、そうやって一人ひとりのメンバーのことをじっくり見たり、宏規みたいなことを言ってもらえるような存在にならなきゃいけないんだなと思ったりしましたね。

 

――これまでいろんなポジションや役柄を経験していますよね。それらを踏まえて、自分は主役タイプだと思いますか?

大山 思いますね。もちろん周りを支える役もできなきゃいけないと思いますけど、やっぱりマイケル・ジャクソンとかミッキーマウスとか米米CLUBの石井竜也さんとか、真ん中に立って引っ張っていく力のある人が好きだし、そこにずっと憧れて生きてきたんで。張りたいです、主役を。

――以前、別のインタビューでも「ミッキーマウスに憧れる」という発言をしていて、思わず二度聞きした記憶があるんです。ミッキーマウスが「好き」ならわかるんですけど、ミッキーマウスって「なりたい」とか「憧れる」っていう対象なんだ!? と思って……。

大山 え、憧れるものですよー?

 

――たぶん、ですけど、映像メインの生っぽい演技をするような俳優さんにそういう感覚ってまずないと思うんです。子供の頃からその感覚があったということは、大山さんは最初から“みんなもの”というポジションを引き受けているんだなぁと感じるんですよね。その感覚は、特に舞台向きだとも思いますし。

大山 そうですね。僕のことを知らなかった人たちに「コイツ、おもしれーな」って思われるのはうれしいです。例えば「CLUB SEVEN」ではデブキャラが定着しちゃいましたけど(笑)オイシイと思っていたし、それで笑いを取れるんだったら僕はなんでもするし。でもキメるときはキメれば、この人デブなだけじゃないんだなと思ってもらえるだろうし(笑)。人前でバカができなかったりいじられたりするのがイヤなんだったら、辞めた方がいいなと思ってます。それで鏡ばっかり見ているんだったら、それは役者じゃないしエンターテイナーじゃないし。役者とエンターテイナーって話でいくと、自分がいま役者なのかエンターテイナーなのか、自分の中でもわかっていないんですよね。何をしているときの自分が好きかと言われれば、みんなを楽しませる“エンターテイナー”であるときなのかなって最近思います。

 

――「恋するブロードウェイ♪」vol.4の話に戻りますが。ソロで披露した内の1曲は、ミュージカル「エリザベート」のトートの代表的なナンバー「最後のダンス」でしたね。聴いていて、ついに、という感覚もあったのですが。

大山 あれは岡さんの選曲なんです。子供のときから家で宝塚の「エリザベート」のビデオを観ていていつかトートをやってみたいと思っているので、こんなすごいチャンスはないなと思って。やっぱり今回の「恋ブロ♪」の自分の中でのキーポイントで、誰が観ているかわからないぞと自分に言い聞かせながら(笑)、毎回全力でしたね。“誰が見ているか”っていうのは関係者だけじゃなくて、もし僕の「最後のダンス」を聴いて心に残って、この人にトートをやってほしいという人が一人でもいたら、「観てみたい」ってどこかで言ってくれるかもしれないって。思いは人に伝わるんじゃないかと思っているので。

 

――「エリザベート」のトートをやりたいという発言はこれまでもたびたびしていますよね。

大山 やっぱり昔から観ていて、原点みたいなものなんですかね。「エリザベート」でいえば、もちろんルキーニもやってみたいんですけど。ただトートは昔からの憧れで、それこそマイケル・ジャクソンと同じぐらいの(笑)。帝劇で上演されているようなグランド・ミュージカルを目指すという気持ちは、この25歳からの1年でより明確になりました。高すぎる目標かもしれないけど、それでもあまり遠くない将来、トートをやりたいです。こんなこと大々的に言ったらマズいのかもしれないけど(笑)、もう恐れている年でもないですから。今、時代が変わってきていて、「レ・ミゼラブル」や「エリザベート」といった作品に僕たち世代のメンバーがどんどん入ってきている。「恋ブロ♪」メンバーだった海宝(直人)くんが「レミゼ」でマリウスをやったり。だから今この波に乗れなかったら、また先延ばしになってしまうと思ってはいて。それで言うと、僕は「恋ブロ♪」を卒業できずに“残ってしまった”とも言えるんです。デカい舞台に出演が決まって、「すいません、今回は出られません」っていうのが本来の姿ではあると思うんですね。ただ「恋ブロ♪」は大好きな作品だから、そうして抜けたりすることはあっても絶対に戻ってきたい。「ごめんなさい! でもまた戻ってきました」っていうのを、早くやりたいんですよね。

―― 俳優としての思いを正直に聞かせてくれてありがとうございました! もちろん、現在出演中の最新舞台「うたかふぇ」のお話も。最初にこの作品の情報が出たとき、何より気になったのは“ストレートプレイ・ミュージカル”という表現だったのですが(笑)。

大山 そうなんですよ。Wikiで調べると“ストレートプレイ”は「歌わない舞台」、“ミュージカル“は「歌う舞台」って書いてあって、対義語がくっついている(笑)。表現が難しいんですけど……ミュージカルのように感情的になったときに歌が始まって、それに圧倒されたお客さんが拍手するっていう流れではなくて、日常生活で鼻歌を歌うような感じで歌が始まるっていう。日本人ってミュージカルが苦手だったりする人が結構多いと思うんですけど、日常に紛れている歌という感じで、これは”和製ミュージカル“だなぁってすごく思います。

 

――「うたかふぇ」は、そういう歌であふれている商店街の喫茶店「マリア」が舞台。大山さんはその近くにできる大型ショッピングモール事業部の人間で、「マリア」側と敵対する立場。デキるイケメンサラリーマンという感じのキャラクターですよね。

大山 最初は「イケメンな感じで」って言われてたんですけど、僕がやるからには三の線かなと思って。登場はわりと二の線で出てくるんですけど、最終的には三の方が強いと思います(笑)。

ストレートプレイ・ミュージカル「うたかふぇ」 撮影/田中亜紀

――主演が次長課長の河本準一さんで、お笑い芸人、声優、アイドル、小劇場、ミュージシャン……と、キャストの顔ぶれが面白いですよね。

大山 同世代が多くて、同じ25歳がこんなにいる現場は初めて(笑)。いろんな人がいるから新鮮ですし、刺激になりますね。準さん(河本)は稽古3日目にセリフが全部入っていたんですよ。それで役者陣が「大変だ!」って慌ててセリフを覚え始めたから(笑)、完成するのは早かったんですけど。準さんはすごくかわいがってくれていて、毎日ご飯に連れて行ってくれます。僕の行きつけの店にも一緒に来てくれたりして(笑)。芸人さんたちが役者としてわからないことを向こうから相談してくれたりするので、うれしいなと思いながらやっています。

 

――いま感じている、この作品の魅力とは?

大山 ほんとに“日常”なので、自分の近くでもこんなことありそうだなと共感してもらえる部分が多いと思います。あとはやっぱり、いろんな人たちが出ているからのこその化学反応を楽しんでいただきたいですね。例えば芸人さんがいると、ミスったりしてもそれを全部笑いに変えることができる。稽古場でも爆笑を取り続けているし、笑いに対して常にここまで前傾姿勢でいるんだなぁって。

 

――10月の舞台「ボーイバンド」も最近、情報解禁になりました。大山さんたち5人組の男性ボーカルグループとマネージャーらの物語で、ミュージカルというよりは音楽劇の要素が強い作品だとか。

大山 キャストが濃いなって(笑)。でも大好きなメンバーなので楽しみです。例えば東(啓介)くんは、彼が「テニスの王子様」の2ndシーズンで、僕が前にやった同じ役(千歳千里)をやっていたので、そういう楽しみもありつつ。僕の役は、結構引っ掻き回すタイプだと思います。イギリスの作品なんですけど、舞台を東京に置き換えてもいいらしくて、そのあたりを演出の板垣(恭一)さんがどう表現されるのか、僕も今から楽しみですね。

 

 デキメン‘s view

Q.「イケメン」というフレーズに感じることは?
“イケメン”と呼ばれることに胡坐をかいているようなヤツははっきり言って大キライ! 今イケメンと呼ばれる人がいっぱいいますけど、何を持ってイケメンかと言えば顔がカッコいいとかじゃなくてやっぱり普段の生き様だったり、そういうところがしっかりしている人のことを言うんだと思います。

Q.「デキメン」が思う「デキメン」
先輩では、インタビューでもさんざん言いましたが東山義久さん! 圧倒的ですね。
同世代では、西川大貴。中学生のとき一緒にアルゴ・ミュージカルに出たんです。最初はあまり好きじゃなくてケンカもしたんだけど(笑)、お互い歩み寄ったらこんなに面白い人だったんだって。彼は「レ・ミゼラブル」とかにも出ているけど、自分で脚本を書いたり、“かららん”っていうユニットを組んでバーで歌っていたり、アーティスト色が強いんですね。ステップを踏んで1個ずつ夢を実現させているのもすごいと思うし、僕が持っていないものをいーっぱい持っているから、年下だけどすごい尊敬しているんです。

Q.「いい俳優」とは?
飽きさせない、そして「こんなこともできるんだ」っていう発見が常にあったりして、いつまで経っても人から求められる役者

 

 マネージャーから見た「大山真志」

担当になってまだ1年に満たないのですが、とにかく素直で前向きなところがいいと思っています。無邪気で可愛げがあるので、一緒に仕事をするスタッフ、キャスト、関係者にかわいがっていただけるのが、何よりの才能だと思います。努力もしているし、真面目で礼儀もわきまえて、根性もある。年下の子に対してはリーダーシップも発揮できるし、年上の方に対しては弟ポジションも取れる。相手と空気が読めるということだと思っています。時々うっかりする無防備さもありますが。
この先は子供の頃からやっている歌、踊りをさらに磨いていき、本格的なミュージカルにも挑戦させたいですし、シェイクスピアのような古典も含めて、もっと演劇的な作品にも出していきたい。いいストレートプレイを経験することで、ミュージカルや歌の表現が広がると思うので。とにかく今までやっていないことにトライさせて、まだ内包している可能性を出していけたらと思っています。

(スペースクラフト・エンタテインメント株式会社 担当マネージャー)


Profile

大山真志 おおやま・まさし
1989年8月17日生まれ、東京都出身。B型。2000年より芸能活動を始め、CMやアルゴ・ミュージカルなどに出演。2009年、ミュージカル「テニスの王子様」に千歳千里(四天宝寺B)役で出演し、注目を集める。以来、舞台を中心に活躍中
【代表作】舞台/「CLUB SEVEN 10th stage!」(2015年)、「ALTAR BOYZ」(2014年)、「健ドン!(仮)」(2014年)、「ファントム」(2014年)、「英雄のうそ」(2014年)、「CLUB SLAZY」(2013年)、「英雄のうた」(2013年)、舞台「弱虫ペダル」シリーズ(2012~2014年)、「大江戸鍋祭~あんまりはしゃぎ過ぎると討たれちゃうよ~」(2011年)、「恋するブロードウェイ♪」vol.1~4(2011~2015年)、「信長」(2011年)、「オオカミ王ロボ~シートン動物記より~」(2011年、2013年)、「ソラオの世界」(2010年、2011年)、ミュージカル「テニスの王子様」The Treasure Match 四天宝寺feat.氷帝(2009年)
【HP】 http://www.spacecraft.co.jp/oyama_masashi/
【ブログ】 「大山真志のお陰さまさし。」 http://ameblo.jp/oyama-masashi/