『九團次・廣松の会』8月Bunkamuraシアターコクーンにて開催!! 取材会をレポート!!

8月17日(土)、18日(日)に東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンにて「九團次・廣松の会」開催が決定!市川海老蔵一門として全国各地で公演を行うほか、バラエティー番組出演やCM出演等、歌舞伎以外でも幅広く活躍をしている市川九團次と女方を軸に活躍し、さまざまな可能性を持つ若手の一人、大谷廣松が今回初めて二人で公演を開催します。

開催に伴い、先日都内にて市川九團次、大谷廣松の取材会が開かれました。

 

――お二人での自主公演に至った理由、きっかけを教えて下さい。

九團次「「九團次の会」というのを4年前からはじめさせていただいて、毎回色々な形で挑戦をさせてもらっていました。廣松さんとは普段から、何かできたらいいねと常に話はしていました。本興行での舞台出演も非常に大事ですが、自分で主役というものを経験する事は勉強にもなるし、度胸も尽く。真ん中に立ち長台詞を喋って、長時間踊る事はなかなか本興行では経験できません。今回は上手くスケジュールも合い、この公演が決まりました」

 

――九團次さんにお声を掛けて頂いた時の心境は?

廣松「前回の「九團次の会」では、二人で『棒しばり』をさせていただきました。ずっと一緒にやってきましたが、『棒しばり』を二人で創り上げた時は物凄く楽しかったです。またやりたいなと思っていた時に、九團次さんから「一緒にやりませんか。」と声を掛けていただいて、二つ返事で「よろしくお願いします。」と答えました。とても嬉しかったです」

――今回の演目を選ばれた理由を教えて下さい。

九團次「二人で何ができるか考えた時、踊りしか思い浮かびませんでしたが、たまたま見ていたテレビ番組で 『柿山伏』が放送されていました。狂言にはなかなか縁がなかったのですが、海老蔵さんの巡業で狂言師の茂山逸平さんと舞台に立たせていただいた事もあり、ずっと勉強してみたいと思っていました。その旨を逸平さんにご相談したところ、「やってみたらいいんじゃないか。」とお話しをいただいたので、挑戦する事にしました。
今までの「九團次の会」では、化粧をする事がほとんどありませんでした。廣松さんは女形もできるので綺麗に化粧をした男女の姿を観ていただきたいと思った時に、すぐに『蝶の道行』が頭に浮かびました。『蝶の道行』は人気の演目ではありますが、踊りだけだったら非常に分かり辛い演目です。解説を見てから踊りを見るという形だったら分かりやすいのではないかと思い、中村京蔵さんに相談をしたところ、「二人の話を作るよ。」と言って、お話しを考えてくださいました」


――お稽古はもう始まっているのですか?

九團次「『柿山伏』は茂山逸平さんに相談しながら習っています。今はまず逸平さんから教わった内容をしっかり自分たちの中に入れる事から始めています」

廣松「逸平さんからは、「せっかくやるなら、狂言という形を残しつつも君たちの色を出したほうがいい。」と言っていただいています。根本的に狂言をしっかりお稽古して、僕たちの方向に持っていけるようきちんとやっていこうと思っています」

九團次「歌舞伎俳優ならではの『柿山伏』をどう表現するか、演出も話し合いながら創っています。『蝶の道行』は個人的にもお稽古をしています。心中・道行・石橋という三本のお話しがあり、それぞれの間で急いで拵えをしていかないといけないね、というのは二人で話をしています」

廣松「『蝶の道行』と『石橋』の間は本当に短いですし、ガラッと雰囲気も変えなければいけないのでなかなか苦労するだろうな、と思っています」

 

――是非ここを見て頂きたいというところは?

九團次「『柿山伏』の稽古をさせていただいて本当に逸平さんに習えて良かったと思うところは、発声の違いに気付けた事です。最初のお稽古の際、逸平さんの声の響きに深く感動しました。歌舞伎は声を作る部分がありますが、狂言は持っている地声の強さで響かすので、今まで聞いたことがないような声を出すと思います。
一方で『蝶の道行』は、若い青年、花をこよなく愛する青年で、しっかり高い声で台詞を喋ります。仕草も少年らしく、『柿山伏』とは全く違うところをお見せしたいです。また衣裳の変化も一つの見どころです。「引き抜き」という、衣裳が一瞬で変わる早変わりがあります。一気に場面が変わる、日本のマジックです。またお客様に日本の伝統の楽器、唄を劇場で聞いていただけるという事は大きな魅力でもあります」

廣松「歌舞伎俳優が、狂言師茂山逸平さんのご指導を仰いだ演目に挑戦をしたらどうなるのか、というのを観ていただきたいです。『蝶の道行』に関しては、祖父である中村雀右衛門のお弟子さんで、僕が子供の頃から本当にお世話になっている中村京蔵さんに本を書いていただいて、小さい頃から聞いていた話、聞いていた世界観を形にできるのは非常に嬉しいです。それに色々な方々が協力して下さって形に残せるという事、また九團次さんと一緒にできるという事は嬉しく、多くのお客様に観ていただきたいなと思います」

――九團次さんと廣松さんのお互いの魅力と尊敬している点を教えてください。

廣松「僕にはないアグレッシブさとかハングリーさです。一番尊敬するところは場数ですかね。くぐってきた修羅場の数がちがうなと(笑)。初めて会ったのは僕が17、18歳ぐらいの時で、その当時からギラギラとした目をしていて凄いなとずっと尊敬はしていましたが、一緒にお芝居をしていくうちに、やっぱり本当に凄い人だなと思いました。僕が持っていないものをいっぱい持っていて、沢山吸収できたらいいなと思い、いつも一緒にお芝居をさせていただいています」

九團次「何か凄く上手いんですよ、懐にすっと入ってくるのが。稽古初日とかは緊張しているはずなのにそれを感じさせず、ずっと変わらず笑っていて、度胸もあるし、いつも心が和らぐ頼もしい存在。沢山の物事も知っていて、何でも聞くのは僕からなんです。これどうなの、あれどうなのって。常に濃密な時間を過ごしてきた相手ですから、この公演がこうして実現したのは凄く嬉しい。お互いの個性がぶつかったり、混ざったりして良いものだなと思っています」

 

――歌舞伎のここが楽しい面白いというところを教えて下さい。

九團次「歌舞伎は歴史があって、何百年も続いて今があるというのを考えるとぞくぞくします。歌舞伎は割とその当時に起こったことを題材にしているので、その当時を覗けると言いますか、本当にこの時代にこういった事があったのだと感じられたりします。もちろん着物・鬘・セット・音楽家も一流なので、そういったところに目を向けていただいても素晴らしいと思います」

廣松「『蝶の道行』は日常的では無いと思っておりまして、衣裳にしかり道具、鬘、諸々を含めての非日常を提供できたら良いなと思います。恋焦がれて心中してしまうような事が、その当時の皆の憧れる恋の形でもあったのではないかな。だから現代までこのお話しが残ってきたのではないかと思います。当時の気持ちや色彩を味わっていただきたいです。また『蝶の道行』の衣裳は素敵なので、衣裳での感情表現というのを非常に注目していただきたい。衣裳は言葉が要らない部分ですから、役者の表現と衣裳の 表現が重なったときに、色々なものが見えてくると思います。それを頑張って見せられるようにしていきたいです」

――最後にお客様にメッセージをお願いします。

九團次「歌舞伎をご覧になった事があるお客様、僕たちを知っているお客様に対しては、今までに観た事がないような姿をお観せします。初めて観るお客様には、歌舞伎は面白いな、綺麗だな、また観たいなと必ず思ってもらえるようなパフォーマンスを心掛けたいです」

廣松「本興行ではできない事をさせていただくのはありがたく、それを皆さんにお観せするという事は、非常にハードルの高さを感じます。ですが、またこの形で皆様の所にお届けできるよう、一生懸命勤めます」

九團次「自主公演でいつも考えるのは、観に来ていただいたお客様にチケット代が高いねと絶対思われないようにしようという事です。安い!と思ってもらえるように、生き様を観ていただいてそこで納得していただく、そんな思いは何一つ変わっていないです」