2000年に轟悠、月影瞳 主演の雪組で初演、実に18年ぶりとなる待望の再演が話題を集めている傑作ミュージカル『凱旋門』、そして、猫をテーマにバラエティ豊かな場面で構成する、華やかでドラマティックな新作ラテン・ショー『Gato Bonito!!』。この豪華二本立てで贈る今夏の雪組公演。3/7(水)に行われた制作発表会の模様をお届けします!
第一幕、ミュージカル・プレイ 『凱旋門』 -エリッヒ・マリア・レマルクの小説による-(脚本:柴田侑宏、演出・振付:謝 珠栄)は、祖国を追われた亡命者たちが集う、第二次世界大戦前夜のパリを舞台に、過酷な運命に翻弄されながらも懸命に生きる人々の姿を、シャンソンをモチーフにした美しい音楽を絡めて描き出した名作ミュージカル。制作発表会では、轟・真彩による「雨の凱旋門」、轟・望海・真彩による「いのち」の2曲が披露された。
ドイツから亡命してきた外科医ラヴィックを演じるのは初演時に同役の演技で文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞した専科の轟悠。
あてどなく仇敵を捜すだけの失意の日々を過ごすラヴィックを助ける友人ボリスを雪組トップスターの望海風斗、
ラヴィックにとって生きる希望ともなる鮮烈な恋の相手ジョアンを雪組トップ娘役の真彩希帆が演じる。
『凱旋門』の演出・振付を務める謝 珠栄は「“18年ぶりの名作の再演”と言われることに凄くプレッシャーを感じています。不穏な空気の漂うヨーロッパ、暗闇が迫りつつある花の都パリで懸命に生きる人々の姿を描き出したいと強く思っています。今もなお、世界のどこかにいらっしゃる、こういった戦争に翻弄される人々のためにも、少しでも命の大切さを届けられたらと思います。」とコメント。18年ぶりにラヴィックを演じる轟に対しては「18年前とは全く違う成熟した演技に非常に良いものを感じ、今回どのように演じられるかを凄く楽しみにしています」と期待を寄せた。望海の演じるボリス役については、新たに「ラヴィックの友人として、彼を一番客観的に見ながらも、彼に非常に寄り添っている、そういった言葉を、望海さんのお得意な歌で綴っていく」ようなストーリーテラー的要素を含んだ演出の追加を予定しているという。
脚本の柴田侑宏からはメッセージが寄せられた。
■『凱旋門』脚本:柴田侑宏からのメッセージ
初演時、第2次世界大戦前のパリの、暗く、重く、せめぎあった時代に、若者たちがどのように感じ、考え、動き、生きたか。そういう世界観を宝塚の舞台にのせればどのような広がりを見せることが出来るか、という興味からこの作品に取り掛かったことを覚えております。今回、再演するにあたり、主演のラヴィック役の轟は、18年前と同じ役を演じることを、どのように感じながらやっていくか。何も恐れない男としての魅力、微妙な心の動きを今どんな風に表現するのかを期待したいと思います。また今回、雪組トップスターの望海が友人ボリスを演じるにあたり、役を初演より膨らませ、ナンバーなども増やす予定です。男女の機微とは無関係な生き方をする生粋の男としての色気を出して頂き、望海が息づくことで、作品の重みや奥行きがさらに深まればと思っております。恋人役のジョアンは宝塚の娘役としては少し異色の難役ではありますが、役者として包容力のある真彩には、繊細に、でも楽しんで演じてもらいたいと思います。そして今回も演出を担当して頂く謝先生は、緻密な心理描写と相まって、人間の奥深い心の底を揺り動かす、ダイナミックな演出で、ご観劇のお客様の心を『凱旋門』の世界に誘ってくれると思っております。最後に。初演のイメージ、良さを活かしつつも、今、再演するという意義も鑑みた『凱旋門』にしていけたらと思っております。
■轟悠
『凱旋門』が18年ぶりに、雪組で再演されるとお聞きした時、本当に驚きました。だいもん(望海)くんや真彩ちゃんとは、まだほとんどご一緒したことがありませんが、舞台を観て技術力の高さや色気を感じ、二人との共演が楽しみで仕方ありません。初演の『凱旋門』がどこか、象徴的に言われるのが大変辛く、自分を乗り越えることを一番辛く感じております。ですが、『凱旋門』に限らず、今まで出会って来た作品に、その都度その都度、誠心誠意、魂を込めてやってきたつもりです。今振り返れば、反省点は山ほどあります。でも後悔はありません。そのとき持っている力でやってきたものですから、下手なりにも、心を込めてやってきたつもりでおります。18年の間に、様々なジャンル・組・メンバーで取り組んで来た中で、18年前にはなかった感覚が、今の私にはあるのではないかという、少しの自信と、経験がありますので…ただ、18年前のことは記憶にございません。あるのは断片的に、謝先生に怒られたことや、寺田(瀧雄)先生がグランドピアノをお稽古場の真ん中に持ってこられたので全然踊れなかったことですとか、そういったことばかりですので…(笑)ただ、何よりも思い出されるのは『凱旋門』は、初めて私が宝塚の舞台で“お芝居が楽しい”という感覚に襲われた作品でした。なので、そこを上回る、と言いますか、何かを超え、何かを得ていきたい。乗り越えられない壁はないと思って、みんなと共にこの『凱旋門』を作り上げていけたら、そして、寺田先生の遺作ともなります曲を大切に、歌い繋いでいきたいと心から思っております。
■望海風斗
元雪組トップスターの轟さんと、轟さんが当時公演されていた宝塚の名作『凱旋門』を、今の雪組で再演させて頂けることを大変光栄に思っております。ラヴィックの友人、ボリス役をさせて頂けるということで、轟さんの友人役をさせて頂けるということは本当に嬉しいことですし、今から楽しみで仕方ありません。まだ自分が何も中身を作っていない状態のポスター撮影の時から、轟さんが出して下さる世界観や、何が来ても受け止めて下さる大きさを感じまして、自分も遠慮してはいけないなと思い、撮影に臨ませて頂きました。今日も制作発表でパフォーマンスをさせて頂いて、お芝居でご一緒させて頂くのは初めてなのに、何か安心させて頂けるものが凄くあるので、本当に轟さんに飛び込んで行ったら間違いない、という気持ちです。雪組子全員が、轟さんの舞台の上に立つ心構えや、人としてのあり方、芝居など沢山のことを、見て、感じて、吸収させて頂いて『凱旋門』の世界を精一杯生き抜きたいと思います。
■真彩希帆
『凱旋門』という作品を私は映像で拝見させて頂いたのですが、まさか轟さんのお相手役をさせて頂けるとは思っておりませんでしたので、大変な緊張が先にやってまいりました。ですが、ジョアンという役から学べることが沢山あると思いますので、お稽古する中で、ひとつでも多くのことを学ばせて頂き、柴田先生の作品の中に飛び込んでいけるように丁寧にこの作品と向き合っていけたらと思っております。『凱旋門』のナンバーは、タカラヅカスペシャルにコーラスとして出演させて頂いた時から、轟さんが歌っていらっしゃるのを、素敵な曲だなと思っていつも聞いておりましたので、その曲を歌えるというのがとても嬉しかったです。実際に歌ってみて、もっともっとお稽古していく中で感じるものを大切に出していけたらいいなと思いましたし、とても優しい気持ちになるメロディなので、音楽にのせて想いを伝えることが出来るよう、お稽古して行きたいと思います。
第二幕、ショー・パッショナブル 『Gato Bonito!!』 ~ガート・ボニート、美しい猫のような男~(作・演出:藤井大介)は、猫からイメージされる「クールで気まぐれな性質」「気品溢れるしなやかな身のこなし」といった姿を、個性豊かな雪組生達に重ね合わせ、宝塚歌劇ならではのゴージャスで熱い夢の世界を描き上げるドラマティックなラテン・ショー。
『Gato Bonito!!』作・演出を務める藤井大介によると、ポルトガル語で“美しい猫”を意味するタイトル『Gato Bonito!!』の副題“美しい猫のような男”は、「ずばり雪組トップスターの望海風斗」にあてたもの。下級生時代から望海と共に仕事をする中で「彼女は本当に“クール”で“ビューティー”で“ナイーブ”で“セクシー”そして“ミステリアス”、でも何か“内に秘めた情熱”を持っている人」であると感じ、その要素が“猫”とマッチングしたため“猫”をテーマにした作品作りを思い立ったという。猫がテーマではあるものの、猫に扮するというわけではなく、猫から受けるイメージを繋ぎ合わせ、雪組の個性豊かな面々の魅力を目一杯引き出した、パッショナブルなショーになる予定とのこと。「細かい場面構成はまだまだこれから」ということだが、トップコンビの演出に関しては、藤井がアルゼンチンで観てきた本場のタンゴを取り入れた「ブエノスアイレス系のデュエットダンスのようなもの」を検討中で、楽曲についても二人の優れた歌唱力を活かし「デュエットソングはもちろん、一人一人の今まで聞いたことがないような歌・声を聴かせられるよう」な楽曲を選定中だという。アルゼンチンでのタンゴ視察の他、ブラジルではリオのカーニバルに参加して来たという藤井が作り上げる、本場の熱を取り入れた熱いショーに期待が高まる。
■望海風斗
私は「ラテン・ショーをやってみたい!」という夢がありまして、私の「人生は、夢だらけ。」(かんぽ生命保険のキャッチコピー)なのですが(笑)そんな夢の一つを、今回また一つ叶えられるということ、本当に嬉しく思っております。雪組生が、舞台上で猫のように情熱的に踊り、駆け回り、飛び跳ねる姿をぜひ楽しみにして頂きたいと思います。
■真彩希帆
ラテン・ショーに出演させて頂くのが初めてで、黒塗りも初めてなので、大変楽しみです!熱い熱いショーで“大人の色気”というものを出せるように、自分の引き出しに無いものも、あるものも、色々な面をお客様にお見せ出来るように、雪組の皆さんと頑張ってお稽古してまいりたいと思います。
–*こぼれ話*–
望海が「轟さんに飛び込んで行ったら間違いない」と感じていると語ると、即座に轟も「私も、だいもん(望海)だったらぶつかっていけるなと、もう友情が出来上がっているなと」感じると答え、望海が「わぁ!(友情が)出来ました!」と歓声を上げて笑いあう和やかな一場面も。そんな2人に「懸命についてまいります!」と力強く語る真彩。このトリオが紡ぎ出す美しいメロディに満ちた重厚な世界、そして、望海率いる雪組生が夏に負けじと熱く燃え上がる情熱の世界。味わいの異なる2つの魅力的な世界に、同時に触れることが出来る暑い季節が、今から待ち遠しい。
公演は兵庫県・宝塚大劇場で6/8(金)~7/9(月)、東京宝塚劇場で7/27(金)~9/2(日)上演。
撮影・文/ローチケ演劇部(ミ)
撮影/ローチケ演劇部(田)