この現場には、いい意味で部活感がある
前作『同じ夢』から約4年。赤堀雅秋×大森南朋×田中哲司という実力者3人が、新作『神の子』で再びタッグを組む。
赤堀「『同じ夢』をやっているときから、次もやりたいねという話は出ていたんです。ただ、お二人が忙しいので、スケジュールを調整していたら4年かかったという感じで」
田中「でもこのぐらいのスパンがちょうどいいよね。2年とかだと短すぎるし」
大森「それでは、この次も4年後? そのうち哲さん還暦になっているのでは?」
赤堀「どうする? 怒りっぽくなってたら?」
田中「『早く本書いてくれないとできないよ! もう底辺の役ばっかり嫌だよ!』って?(笑)」
赤堀「そうしたら、俺と南朋ちゃんで『次からは二人でやろっか』と言ってると思う(笑)」
思うようにいかない人生を生きる人々の閉塞感や焦燥感を、リアルな日常の会話から炙り出していくのが赤堀作品の真骨頂。稽古場ではどんなやりとりが繰り広げられているのだろうか。
大森「赤堀くんはすごく真面目です。決して怒号が飛ぶようなことはなく、謙虚に言葉を選びながら、自分たちにオーダーしてくれます」
田中「赤堀くんの舞台ってちょっと映像っぽい感じがするじゃないですか。でも、稽古場はド演劇。『気持ちで』とか『とにかく怒鳴って』とかそんな感じで。そういうのを聞いてると、赤堀くんは劇が好きなんだなあと微笑ましくなります」さらに、ヒロインに長澤まさみを迎える。
赤堀「今回に限らず、稽古場から一緒に恥をかいてくれる人と演劇をつくりたいと思っていて。長澤さんは、私はこういう役じゃないと嫌とか、つまらないことを言わず、ゼロから一緒に作品をつくることを楽しむ気概を持っていそうなところが魅力的だなと思いました」
大森「それで、自分が連絡先を知っていたので、直接メールをしまして。『赤堀くんの作品に興味ありますか?』と聞いたら、『あります』と。長澤さんのことは15歳ぐらいから知ってますが、久しぶりに一緒に芝居ができるのが楽しみです」
田中「前作のヒロインが麻生久美子さん。そのときは財布から1万円を盗むような、何とも言えない嫌な感じの役をやってもらいました。今回、どんな役になるかは僕もまだ知りませんが、そんなふうにちょっと汚れた役をまさみちゃんがやったらどうなるか見てみたいです」
実力もキャリアも備えた3人が、自らの意志で再び集結した本作。そこには、他の作品にはない特別な喜びが込められている。
田中「僕らの仕事は選べる立場になく時にはストレスを抱えながら、自分に鞭を打つこともある。そういう中で、赤堀くんの作品に出るのはご褒美みたいなもの。信頼できるメンツばかりでやれるので、楽しみでしょうがないんです」
大森「自分にとって赤堀くんの舞台に出させてもらえることは、いい充電なんです。もちろん仕事ではあるけど、いい意味での部活感があります」
赤堀「作・演出家と役者が集まってゼロから作品をつくっていくのが劇団のやり方。僕らは劇団じゃないですけど、どこかそれに近い感覚はあります。事務所の都合で特定の役者の見せ場を無理やり増やされることもあるこの業界で、ここではしがらみとか一切抜きに健全にものづくりができる。僕にとってすごく贅沢な場所なんです」
インタビュー・文/横川良明
Photo/村上宗一郎
※構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
大森南朋
■オオモリ ナオ ’72年生まれ。東京都出身。近作にドラマ『サイン-法医学者 柚木貴志の事件簿-』など。
赤堀雅秋
■アカホリ マサアキ ’71年生まれ。千葉県出身。近作に舞台『美しく青く』など。
田中哲司
■タナカ テツシ ’66年生まれ。三重県出身。近作にドラマ『あなたの番です -反撃編-』など。