豊洲のIHIステージアラウンド東京にて上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』、3月~6月の“Season花”、6月~9月の“Season鳥”に続き、いよいよ9/15(金)からは第3弾“Season風”が開幕する。松山ケンイチ、向井理、田中麗奈、橋本じゅん、山内圭哉、岸井ゆきの、という華やかなキャスト陣と共に、この“Season風”に<狸穴二郎衛門>役で出演するのは生瀬勝久。劇団☆新感線の本公演にはこれが初参加(いのうえひでのり演出作品ということでは『鉈切り丸』に出演している)となる生瀬に、ビジュアル撮影の合間を縫って意気込みなどを聞いた。
――生瀬さんが劇団☆新感線に出てくれるのを長年待っていたファンの方が、今回は大変喜ばれているんじゃないかと思いますが。
生瀬「ええ?そうですか?そんな話、聞いたことないですけどね(笑)。でも本当にそういう期待があるとしたら、それがちゃんと現実になって「ああ、やっぱり生瀬が出て面白かった」って感想を抱いていただければ僕もうれしいですけど。「あ、な~んだ、そんな感じだったんだ~」って言われるのが一番イヤですね。」
――まず、そんなことにはならないと思いますが(笑)。
生瀬「でも今、僕はとっても、お芝居をするのが楽しいんですよ。本当にいい時に、こうして初めてご一緒できることになって良かった。もちろん、アクションに関しては自分の分野ではないので、そんなに激しくは動けないんですけれども。だけど自分としてはとにかく、お芝居で生瀬の世界を作るということが、今はものすごく楽しいので。ですから今回は“カッコイイ”とかでなく、“オモシロ”のほうで力になれればいいかなと思っているんです。」
――<狸穴二郎衛門>役ということは、他の役に比べたら確かにアクションはそれほどないかもしれないですね。
生瀬「ええ。それを僕に期待されても応えられませんからね。そっちではなく、僕の場合はやはり、人を騙したり、ということの方が得意なので。」
――そういう意味ではこの役柄は。
生瀬「自分でもピッタリだと思いますよ(笑)。」
――役名にはまさに“狸(タヌキ)”という字が入っている役ですし。
生瀬「いやホント、タヌキかキツネかと言われるくらい、人を騙す役は得意です。」
――そして今回はステージアラウンド東京という、客席が360°まわる特殊な劇場でやることに関してはいかがですか。
生瀬「まあ、今回僕は演者ですからね。まずは演じる上でどういう風に大変なのかということ、つまりそれは物理的なものや体力的なものに関して、どれほど負担がかかるのかということは普通に心配しました。でも、お客さんの立場から考えると、この劇場は絶対的に楽しいと思う。そして演出の側から考えても、いろいろな仕掛けができるし、今までの舞台機構で“額縁”でやっていた演出とはまた違った機能を使えるわけなので、その点はとても楽しいんだろうなって思いますね。今回、僕は役者としての参加なので、やはり一番気になるのは体力的なところですね。」
――まずはそこが問題。
生瀬「はい。立場的には、そこをどういう風に克服するかに尽きると思います。」
――時々、演出家としての視点で見てしまったりもしますか?
生瀬「いや、わざわざ、そんな大変なことはしないです。やらないのに考えても仕方がないですから。今回は自分が演じるということだけに専念しますよ。」
――では最後にお客様へ向けて、生瀬さんからお誘いメッセージをいただけますか。
生瀬「同じストーリーではありますが、役者が変わればこれだけお芝居というのは変わるんだというところを、ぜひ楽しんでいただきたいですね。勝ち負けではないですけれど、僕は僕なりの考え方で<狸穴二郎衛門>という役を演じますので、“Season花”、“Season鳥”をご覧になった方でもまた新たな気分で楽しんでいただけると思います。ぜひ、劇場に足をお運びください。」
インタビュー・文/田中里津子
Photo /村上宗一郎
【プロフィール】
生瀬勝久
■ナマセカツヒサ 1960年10月13日生まれ。兵庫県出身。大学在学中に関西の人気劇団に入団し、俳優だけでなく、劇作家、演出家としても活動。2001年に退団後は舞台に限らず活動の幅を広げ、『トリック』『ごくせん』『リーガル・ハイ』各シリーズ等で圧倒的な存在感を示すなど、数々の人気作に出演している。近年の主な出演作は『貴族探偵』『ドクターX~外科医・大門未知子~』『侠飯』などのドラマや、『怪盗グルーのミニオン大脱走』『疾風ロンド』などの映画、『陥没』『8月の家族たち』などの舞台等。劇団☆新感線には今回が初参加となる。