『ディズニー・ブロードウェイ・ヒッツ』海宝直人 インタビュー

2019年1月に日本初上陸を果たした『ディズニー・ブロードウェイ・ヒッツ』(以下、DBH)が、2020年1月、前回公演と同じ来日キャストを迎えて再演される。
誰もが知るディズニー・ミュージカルの楽曲の数々を、豪華ブロードウェイスターの圧巻の歌声、そしてオーケストラの生演奏でお送りする、まさに“至極”のディズニーコンサートとして前回大きな反響を呼んだ本公演。前回に引き続きゲストシンガーとして抜擢されたミュージカル俳優・歌手の海宝直人に、再演の見どころなどを聞いた。

バックコーラスまで注目!隅から隅までハイクオリティのコンサート

――前回公演で、ブロードウェイスターの皆さんとパフォーマンスしてみた感想は?

海宝「出演者ながら、本当に贅沢な時間だなぁと思っていました。本番ではイヤーモニターから聞こえてくる皆さんの歌声が「あれ、CDかな?」って思ってしまうほどのクオリティで(笑)。幸せを噛みしめながら過ごしていた記憶があります」


――2020年公演も前回と同じ4名が来日されますが、海宝さんから見たそれぞれのキャストの印象を教えてください

海宝「まずアシュリー(・ブラウン)さんは、透き通った鈴の音のような歌声がとても心地良いんですよね。それでいて幅広い歌声をお持ちだから、例えば『リトル・マーメイド』のアリエルの歌では少女らしく、対して『メリー・ポピンズ』では少し大人びた歌声で、心にスッと届く歌を聴かせてくれる。とても素敵な方です。

ジョシュ(・ストリックランド)さんの歌声は衝撃的でした。鞭のようなしなやかな音使いというか、グルーヴ感って言うんですかね?聴いているだけでグワーッと巻き込まれていくような感覚を覚えたんです。で、僕あまりにも感動したから「ボイストレーニングはどんなことをしてるんですか?」って聞いたんですけど「いや、特に何も…」みたいな返答で(苦笑)。誰にもマネできない、唯一無二の声と表現ですよね。

アルトン(・フィッツジェラルド・ホワイト)さんは『ライオンキング』の父親・ムファサ役を4000回以上も演じていらっしゃる大ベテラン。『ライオンキング』は僕も子役時代から出演していた特別な思い入れがある作品なので、アルトンさんの体に染み込んだリズム感・響きを間近で体感できたのはとっても嬉しかったですね。

そしてキシー(・シモンズ)さんはとってもチャーミングな方で。普段もすごく素敵なんですが、『ライオンキング』のナラの曲 ♪シャドウランド の歌唱には本当に心揺さぶられましたね。力強さの中に繊細な憂い・流れる悲しみといった感情が表現されていて、改めてこの楽曲の魅力を再発見させて頂きました」

 

――数あるディズニーコンサートの中でも、DBHならではの魅力は?

海宝「何よりもすごいのは、実際にブロードウェイでその役として演じていた方々が歌うということ。僕も役者としてディズニー作品に関わっているからこそ思うんですが、演じた経験がある方の曲への解釈って、やっぱり深いんですよね。演出家や歌唱指導の方と作品を作っていく過程での発見というのは、(その役柄を演じたことのない)他者では得難いものですから。それを生で感じられるのは、DBHならではの魅力だと思います。

もちろん個々のソロパフォーマンスも素晴らしいですが、このコンサートでしか見られない貴重なコラボレーションも見どころの一つ。個性の全く異なった4人の歌声が合わさった時のパワーはとにかく圧巻でした。これを日本で実現できたのは、中々に奇跡的なことだと思っています。

それから、ぜひコーラスにも注目して頂きたいんです!ソロパフォーマンスの時も、他のお三方が舞台上でバックコーラスをしているので。隅から隅まで本当にクオリティの高いコンサートなので、そんなところも楽しんで頂けたらと思います」――前回公演、海宝さんは『ライオンキング』のヤングシンバの歌♪早く王様になりたい、そして成長したシンバの歌 ♪終わりなき夜をメドレーで披露されました。両役演じられた海宝さんならではの企画が印象的です。

海宝「DBHのプロデューサーであるジェフ・リーさんは、『ライオンキング』日本初演時に演出補として日本にいらっしゃった方で、当時、僕もヤングシンバ役として彼の演出を受けていたんです。で、大人になってからシンバを演じたことを話したら「それならシンバの曲でなんかやろうよ」とご提案頂いて。そんな経緯であのコーナーを作って頂きました」

 

――ジェフ・リーさんと久々にお会いしてみていかがでしたか?

海宝「やっぱり嬉しかったですよね。ジェフ・リーさんは子役にダメ出しする時も、少しふざけて笑わせてくれていた記憶があります。久々の再会でしたけど、今も変わらずとても明るくて優しい方でした」


――DBH出演2回目となる今回ですが、前回から心境の変化はありますか?

海宝「前回公演の後も、海外キャストの方たちとパフォーマンスする機会を何度か頂いていて、その中で“英語でパフォーマンスすること”に対して新しい発見がたくさんあったんです。最近出演した作品では、稽古前に毎日必ず1時間、皆で輪になってお互いの想いを伝えあう時間がありまして。短い準備期間ではあったけど、こうして人間は言語を越えて繋がり合えるんだなと実感しました。もちろん英語でのコミュニケーションで不安になることもありますけど、躊躇せず交流していこう!って前向きな気持ちが芽生えたのは大きかったかな。今回のDBHではそんな貴重な経験も生かしつつ、前回から更にグレードアップしたパフォーマンスをお見せできたらなと思っています」

ディズニー・ミュージカルの魅力

――1994年4月に『美女と野獣』がディズニー初となるミュージカル作品としてブロードウェイに登場してから25周年ですが、これだけ長く愛され続ける理由はどこにあるのでしょう?

海宝「僕も今まで4つのディズニー作品に関わらせて頂いたのですが、そのどれもがすごく個性豊かで表現方法の幅が広いですよね。『美女と野獣』は映画で描かれているディズニーマジックを忠実に舞台上で表現しているし、『アラジン』はショー的な要素を盛り込んで、物凄くきらびやかな演出を展開している。それに対して『ライオンキング』は前衛的というか、様々な国のカルチャーを取り入れながら生み出された挑戦の作品でもありますし、『ノートルダムの鐘』は大掛かりな転換や映像を使ったりせず、とてもシンプルな演劇手法が使われている、と言ったように。

それぞれの作品で演劇的チャレンジを続ける一方で、ディズニーの根底に流れる“人間への愛”、“生きることの素晴らしさ”を一貫して伝えているというのがまた素晴らしいんですよね。やはりその普遍的なメッセージが込められたステージというのが、言語も文化も、そして世代をも越えて愛される理由なのかなと思います」

 

こぼれ話

――魅力的なディズニーの楽曲の中で、海宝さんにとっての“これを聴いたら頑張れる”というパワーソングは?

海宝「『アラジン』の曲はすごいパワーをもらいますね。小さい頃から ♪フレンド・ライク・ミー がずっと好きです。『ノートルダムの鐘』もとても思い入れがあって、中でも ♪Someday(いつか)はすごく大切な曲。自分が迷った時やつらい時に一度立ち返って、演劇や歌を続ける意味みたいなものを改めて考えさせてくれるというか。「あ、自分はこのために舞台に立ち続けたいんだな」っていうことを思い出させてくれる曲ですね」


――ディズニー作品の中で、将来、機会があったらチャレンジしてみたい役は?

海宝「僕はデビューが『美女と野獣』チップ役だったので、ビーストはいつか演じてみたいです」

“ミッキーマウスのポーズ”で1枚!

 

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