10月19日(月)から11月15日(日)まで、東京・明治座にて「恋、燃ゆる。 ~秋元松代作『おさんの恋』より~」が上演されます。
近松門左衛門作の浄瑠璃『大経師昔暦』(1715年)を原作に、1985年に秋元松代が書いたテレビドラマシナリオ『おさんの恋』を舞台化する本作。上演台本・演出は、石丸さち子が手掛けます。
本作で主人公・おさんを演じる檀れいさんにお話をうかがいました。
――『恋、燃ゆる。』に出演が決まっての感想をお聞かせください。
「明治座さんは私の大好きな劇場のひとつでもあるので、また再び、この明治座の舞台に立てる、お客様に会える、というのは率直に嬉しいです。ただ、コロナウィルスの問題がある中で、どれだけのものを皆さんにお伝えすることができるのかという、今までとは違った不安と責任感も感じています。だから、手放しにうれしい、とはなっていないです。ちゃんと幕を開けることができるのかという不安はやっぱりついてきてますね」
――明治座のどのようなところが好きなのですか?
「まるごと楽しませてくれるところです。明治座さんって休憩時間も楽しいですよね。いろんなお店があって、お買い物を楽しんだり、お茶をしたり、ご飯を食べたり。チケットを買って、予定をあけて、ワクワクして来られたお客様を、まるごと楽しませてくれる空間だなと感じます。だから私も毎回、作品に合わせたオリジナルグッズを販売しているんですよ。公演はもちろんですが、休憩時間もまるごと楽しんでほしくて作るようになりました。あと、のぼりが立ってるのも嬉しいです。初めてじぶんののぼりが立ってるのを見た時は感動しましたし、この劇場で一か月間、舞台に立つんだと気合いが入りましたね。大好きな劇場です」
――檀さんはテレビドラマ『おさんの恋』をご覧になったそうですが、おさんをどのような女性と捉え、演じようと思われていますか?
「時代物を演じるときにはいつも思うことではありますが、日本でも海外でも、女性は長らく苦しい時代を生きていますよね。この作品の舞台となる江戸時代の女性もそうです。おさんは、自分の気持ちを押さえて、耐えて耐えて主人に仕えて。顔では笑っていても心では泣いているような人物だと思いますが、おさんが茂兵衛という、まっすぐで、自分の想いをストレートに伝えてくれる男性に出会ったときに、女性として、ひとりの人間として、どう変化していくのか。その心の動きを生き生きと表現できたらなと思っています」
――2020年の現在と比べて、特に違うなと感じるところはどんなところですか?
「すべてが違いますが……おさんは“個人”として生きていないなと思いました。“商家のご寮さま”“永心の妻”であって、“ひとりの女性”“おさん”として生きていないんです。例え自分の意志はあっても、意志を通して生きていけるかっていうと、それができない時代だったんだと思います」
――そういう役柄をこの時代に演じることで、どのようなことを届けたいですか?
「『この作品だからこれを伝えたい』というものはいつもあまりないんです。こういう時代に、こういう人たちがいて、その人生のある一部分を切り取り、物語として上演する、というふうに思っているので。誰かを演じるときはいつも、その人物が生き生きと息づいて、人生を謳歌できるように、魂を吹き込みたいと思っています。なので今回も、おさんという女性が、苦しみ、悲しみ、その中で喜びを見つけながら、どんなふうに人生の選択をしていくのかを、生き生きと演じたいです」
――上演台本・演出の石丸さち子さんとは何かお話しされましたか?
「この舞台を上演するにあたっての、石丸さんのお考えをうかがう機会がありました。セットや舞台機構の使い方もとても斬新なものになりそうだったので、そのお話を聞いたときに、『わあ、やってみたい! どうなるんだろう?』っていうワクワク感がすごくありました。ただ、演じる側としてはとてもハードルが高そう(笑)。舞台機構と役者の芝居がシンクロして物語が進むので、キャスト・スタッフのみんなが心をひとつにしなくちゃなと思っています」
――おさんと許されない恋に落ちる茂兵衛役の中村橋之助さんの印象をお聞かせください。
「橋之助さんとは初共演になります。歌舞伎で拝見した橋之助さんは、真っ直ぐに演じる、そのエネルギーはすごくて。演じることがお好きなんでしょうね。突き詰める人なんだなということをすごく感じます。瞳の輝きが違いますから。『わ、すごいな』と思った役者さんのひとりです。その橋之助さんが茂兵衛を演じたときに、どんな熱量でおさんの心を揺さぶるんだろうと一緒にお芝居するのをとても楽しみにしています」
――メインキャストの橋之助さん、東啓介さん、多田愛佳さん、石倉三郎さん、西村まさ彦さん、高畑淳子さんは皆さん初共演だそうですね。
「そうなんです。だからこそ、皆さんがどのように演じるんだろうと楽しみにしています。高畑さんや西村さんはどんな役でも自在に演じられる方々。一緒にお芝居できると考えるだけで楽しみが止まりません。それと同時に、私もしっかり演じて、いい作品にしなければという気持ちです」
――楽しみにしています!
インタビュー・文/中川實穂