東京は豊洲に今年3月に開場したIHIステージアラウンド東京、6/27からは『髑髏城の七人』Season鳥いよいよ開幕する。
「“Season花”とはガラッと雰囲気が変わって、今までにない新しい色の『髑髏城の七人』になりそうです」と語るのは、2011年版の『髑髏城の七人』にも出演経験がある早乙女太一。
早乙女「この間“花”を観に行ったんですが、とにかく劇場自体のエネルギーが強かった。それにあれだけの広さがあると、屋外でやっているかのようにも感じましたね。もしかしたら、“花・鳥・風・月”と続くシーズンの中で“花”は一番シンプルなものになるのかも。そして“鳥”の一番大きな違いはやはり、捨之介という人物の描き方。そこが大胆に変更されていることによって当然、捨之介と天魔王と蘭兵衛の関係性もものすごく変わっていくはずです」
──自身は2011年版と同じく、色里・無界の主人である蘭兵衛役に再び挑む。同じキャラクターとはいえ、6年という年月を経ていることもあり、かなり役柄のニュアンスが変わりそうだ。
早乙女「台本の段階で、前回の蘭兵衛よりも懐が深くなっているような気がしました。6年前は僕自身がまだ不安定で、ものすごく緊張していたことも加わりとても視野が狭かったです。今回は自分も成長しましたし、あの時とは違う、もう少し大人になった蘭兵衛を演じたいと思っています」
──主人公・捨之介を演じる阿部サダヲとの初共演も楽しみだという。
早乙女「前回はまっすぐエネルギーをぶつけていくと、それを(捨之介役だった)小栗(旬)さんが真正面から受け止めるスタイルだったんですが、打って変わって今回の阿部さんは、まっすぐぶつけたらスッとかわす合気道スタイルというか。こっちの力を利用されて、全部持っていかれてしまいそうで怖いんです(笑)」
早乙女「お互いに同じ役なんですけれども、同じであって同じではない、という印象がすごく強いですね。それはやっぱり捨之介が阿部さんだということもあるし、僕の年齢が上がったということもあるし。未來さんも未來さんで、絶対に同じようには演じないでしょうし。また、今回の『髑髏城~』は歌と踊りが入った形になることもありますから。それもあって、今回は特に同じ役を演じるという感覚がないのかもしれません」
──そもそも早乙女自身が劇団☆新感線を初めて観た作品が、まさに2004年の『髑髏城の七人~アオドクロ~』だった。当時はまだ12、13歳。「こんなにカッコイイ舞台があるんだ!」と、大きな衝撃を受けたという。
早乙女「そういう想いがあったので、大げさに聞こえるかもしれないですけど、初参加した『蛮幽鬼』(2009年)の時以来、新感線に出る時には「夢の場所に立てる」という喜びが大きくて。だけどそのせいで前回の『髑髏城~』の時にはものすごく縮こまってしまって、全然周りが見えないまま閉じこもっていたんです。でもそのあと『蒼の乱』(2014年)に出させていただき、そこで初めて少し余裕ができてちょっと楽しめるようになれたんです。だから今回はリベンジというわけではないですけど、お芝居はもちろん、この環境にいられるということ、その中でどういう風にやっていくかということに関してもしっかり楽しみながらやっていきたいなと思っているんです」
──振り返ると、早乙女が劇団☆新感線に参加する時は毎回、中島かずき脚本、いのうえひでのり演出作品だ。これが4度目となる中島脚本、いのうえ演出への想いも聞いてみた。
早乙女「中島さんの脚本はやはり、思い切り傾(かぶ)ける、見得を切れるところが気持ちいいですよね。そして、そんなセリフをバーンと言ったら、カーン!って音が鳴って、パーンって照明が当たって、音楽がダーンって(笑)。観ている時はそこがカッコイイ!って思えるし、やっている時には特にノセられる部分でもあります。あんなにかっこつけられるセリフを口にできる場所は、他にないですからね。しかもそれを自然に、当たり前のようにサラッと言えるところもまっすぐで痛快で、とても魅力的です。そしていのうえさんの演出は、もちろんお芝居ではあるんですけれども、自分の中では踊りの稽古をしているような感覚もあるんですよ。身体の動きを細々と全部つけていってくださる演出なので。言葉にしてしまうとそれしかできないというか、狭いイメージになるかもしれませんが、実はそうやっていのうえさんが作ってくれた形を、自分でどんどん広げていくこともできるし、その形の中に心を入れていったりもできる。そういう意味でも、自分の中では踊りに近いと感じているのかもしれません」
──豪華な顔合わせでありつつも、新感線にはお馴染み感のあるクセモノが一丸となって取り組む今回の“鳥”チームの新たな『髑髏城~』にも、期待は膨らむばかりだ。
早乙女「ここまで派手なお祭りは、そうそうないと思うんです。こんなメンバーが揃うことも、なかなかあり得ないことですしね。豊洲はちょっと遠いかもしれませんが(笑)、みなさんぜひこのお祭りに遊びに来てください!」
インタビュー・文/田中里津子
Photo /村上宗一郎
■プロフィール■
早乙女太一 サオトメタイチ
1991年9月24日生まれ。福岡県出身。大衆演劇 劇団“朱雀”の二代目として4歳で初舞台を踏み全国を飛び回る。2003年北野武監督の映画『座頭市』に出演したことで、その名を広く知られるようになる。劇団☆新感線には4作目の出演。