韓国で大ヒットを記録し、9月9日(木)より待望の日本初演が開幕する、ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』。公演初日まで2週間となった8月26日(木)に、マスコミに向けて、初披露の本番衣裳を着用したメインキャスト8名による歌唱披露会が行われた。
またその後の質疑応答では、演出の白井晃も加わり、この作品のテーマや、白熱する稽古の様子をたっぷりと語った。
ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は、19世紀末にロンドンで起こった、未解決連続殺人事件とその犯人・通称“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”をモチーフにチェコで創作された。それを原作に韓国独自のアレンジ が施され、2009年の初演以来多くの観客に愛される大人気演目となり、今秋ついに待望の日本演出版、初上演を迎える。
今回は、ダニエル役の木村達成・小野賢章、アンダーソン役とジャック役の加藤和樹、アンダーソン役の松下優也、ジャック役の堂珍嘉邦(CHEMISTRY)、グロリア役のMay’n、ポリー役のエリアンナ、モンロー役の田代万里生が、本番同様の衣裳を着用し、劇中のミュージカルナンバーを、6曲披露した。
① 「最後のチャンス」ダニエル役 小野賢章&アンダーソン役 加藤和樹&モンロー役 田代万里生
② 「もしかしたら」ダニエル役 木村達成&グロリア役 May’n
③ 「特ダネ」モンロー役 田代万里生
④ 「捨てられたこの街に」ポリー役 エリアンナ
⑤ 「俺はこの街が嫌いだ」アンダーソン役 松下優也
⑥ 「こんな夜が俺は好き」ジャック役 加藤和樹&ジャック役 堂珍嘉邦
2週間後に初日を控えたキャストたちは、ここまで約一か月の稽古で深めた各役への想いを、魅惑的な音楽にのせて作品の世界観を体現した。
また、今回初披露された本番衣裳は、19世紀末ロンドンの華やかだがどこか陰のある雰囲気が醸し出され、作品全体の世界観に期待が高まる。初日に向けて衣裳・ヘアメイクはまだ進化する予定とのこと。
ダニエル役 小野賢章、アンダーソン役 加藤和樹、モンロー役 田代万里生によって披露された「最後のチャンス」は、犯人を知っていると証言するダニエルと刑事・アンダーソン、新聞記者・モンローが、殺人鬼・ジャックの逮捕に向けて、おとり捜査を計画する際の曲。殺人事件に心を痛めるダニエルの繊細さ、犯人逮捕に躍起になるアンダーソンの力強さ、二人を煽るモンローの高揚感を音楽にのせて描き出し、同時に3人の畳みかけるような掛け合いの芝居の面白さも味わえた 。
ダニエル役 木村達成とグロリア役 May’nは、「もしかしたら」を披露。
出逢ってすぐに惹かれ合う、ダニエルとグロリアのラブ・デュエット。木村とMay’nは、のびやかで透明感のあるハーモニーを美しいメロディにのせ、恋の甘酸っぱさとひとかけらの不安、未来への希望を見事に表現した。
モンロー役 田代万里生は、「特ダネ」を披露した。
おとり捜査が実行されるスクープを掴んだ新聞記者・モンローが、ついに連続殺人鬼逮捕の特ダネが出せることを、記者たちとともに高らかに歌う一曲。田代は、スクープのためには手段を厭わないモンローの、世間を動かすことへの強い欲望を歌で表現し、初日への期待は十分だ。
ポリー役 エリアンナは、一音一音噛みしめるように、「捨てられたこの街に」を歌い上げた。現在のみじめな現実 を憂いつつも将来を夢見て生きるポリーの心情を丁寧に描写して、この作品に一層の奥行きを与えている。
アンダーソンがロンドンという街を引き合いに、自分の気持ちを吐露する、「俺はこの街が嫌いだ」 を披露したのは、アンダーソン役 松下優也。
ロンドンという街から、そして行き詰った現状から逃げ出せず、元恋人のポリーを思いながらも自分が進むべき道を迷うアンダーソンの焦燥感を、哀愁漂う歌声で醸し出した。
ジャック役 加藤和樹と堂珍嘉邦は、殺人鬼であるジャックが、亡霊を引き連れて新たな狩りに向かう「こんな夜が俺は好き」を披露。
他の楽曲とは全く印象の違うロックテイストの曲に乗せられた、ふたりの柔軟で伸びやかな歌声は、まさに人間離れしたジャックそのもの。各自が持つキャラクターをいかんなく発揮し、二人それぞれ異なるジャック像を魅せてくれるだろうと期待が膨らむ。
演出家・メインキャストのコメント
演出・白井晃
韓国でロングランされている大人気作品ですが、いまの我々が台本と音楽から感じられるものを、自分たちの肉体に即した物語としてお届けしたいです。
実際の未解決事件から想起して書かれましたが、なぜこんなにも長く、我々の中に記憶が残っているのかをヒントに、描いていこうと思っています。登場人物はとても一途で、“止められない感覚”があります。それが今の我々の状況で、生きることを止められない感覚と繋がるのではないでしょうか。
ダニエル役 木村達成
ある歌詞の中で「もう止められない」と歌う部分があって、それがすごく僕の背中を後押してくれる印象的な歌です。もう後戻りできない、突き進むしかないという覚悟をくれます。グロリアに対してもともとある前のめりな気持ちを後押ししてくれると共に、さらには悪に走る後押しすらもしてしまう。 あと個人的にマント捌きをやってみたいと思っていたら、白井さんの方からその歌の終わりでやってほしいと言われて、自分の気持ちが通じたようで嬉しかったです。
ダニエル役 小野賢章
稽古を始めた頃は、歌や動きなど、やらないといけないことに必死になっていましたが、ようやく体になじんできました。稽古場で役を追い込ん でいくと、グロリアに対しても愛情だけでなく怒りなども芽生えてきて、日々の変化を感じています。自分自身の課題も変化しているので、ひとつずつクリアしていきたいです。
アンダーソン役/ジャック役 加藤和樹
アンダーソンは、一匹狼なところもありながら、本心を伝えたくても伝えられない不器用さがあります。僕自身は器用ではないので、そういうところには共感しつつ、彼の心の中にある光と闇を意識してやっていきたい。
ジャックはつかみどころがない役で、彼がなぜ娼婦たちを手にかけていくのかを紐解きつつ、彼が持つ狂気性を、彼に寄り添いながら見つめていかなければと思っています。
アンダーソン役 松下優也
アンダーソンという人物の内面が見えるのは、ポリーと一緒にいるときだと思っていますが、その場面は多くないうえに、言葉数も少なく、二人で歌っているわけでもないんです。
台詞が少ない分、どうやって表現するかを考えがちになりますが、今回はポリーの歌や芝居に引っ張られて、居心地がよく演じられています。
ジャック役 堂珍嘉邦
ジャックという人間を演じるとき、人をたきつけることだったり、悪の心そのものに染まり 、自分以外の人間に移り変わること で 快感につながることを、もっともっと増やすと、ジャックというキャラクターに厚みが出ると思っています。これから本番初日までに、さらにジャックの気持ちにダイブしていきます!
グロリア役 May’n
グロリアが最初ダニエルと出会って、ロンドンから抜け出すんだという、力強い前向きさには、私も心が震えますし、自分自身が夢を信じて一人で上京してきた気持ちも思い出します。
大切なものを信じて、未来に向かって歩んでいく!というグロリアの姿に、とても共感しながら演じています。
ポリー役 エリアンナ
私は、人間らしい感情的でロマンスのある役を演じたことがあまりなかったので、ポリーという役はチャレン ジだと思っています。
ポリーが娼婦として生きるために鎧を取って気持ちを吐露するシーンで、アンダーソンに寄りかかったら、感情があふれて涙が出そうになりました。ポリーの気持ちの根源が感じられた、ブレイクスルーの瞬間でした。舞台は、誰かと一緒に作り上げていくものだと改めて体感しています。
モンロー役 田代万里生
新聞記者であるモンローが、「ジャック・ザ・リッパー」という言葉を世に広めていくように、僕らのミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』を早く皆様にお届けしたいです。 他の役は苦悩していることが多いけれど、モンローは快楽として特ダネを求めながら終始ワクワクしているので、常に楽しそうです。稽古が佳境を迎えるなか、どんどん元気になっていく感覚があって、このエネルギーを劇場で爆発させたいです。