皆さんの心の中に何かを残せるような作品にすること、
それが僕らの役割だと思っています。
昨年好評を博した舞台「大きな虹のあとで」の再演が決定。それほど遠くない昔、この国がまだ戦争で戦っていた時代の仲の良い四兄弟の物語。
「今は平和と言われているこの日本でも、ほんの数十年前には”戦争“をしていた事実があったこと、その時代の中で一生懸命生きた若者たちがいたこと。この作品を通して少しでも多くの方の記憶に残るよう演じることが僕らの役割だと思っています。(市川)」
市川知宏、入江甚儀、そして新たに上杉柊平、瀬戸利樹を迎え、今年も8月の暑い夏がやってくる。
――昨年出演された市川さん、入江さんは、演じてみて想像と違っていたこと、思った以上に大変だったことなど振り返って印象に残っていることは?
市川「想像以上に体力勝負でした。始まる前は普通に話す声でも聞こえる(会場の)距離感だと思っていましたが、畳みかけるような台詞回しと感情を全身で表現するので自然と声も大きくなり、喉のケアも必要でした。何より精神的なアップダウンをコントロールするのが大変だったなと。兄弟4人で楽しくふざけあっている時もありますが、いずれ戦地に赴くことを覚悟をしている役なので、舞台裏では暗闇に入って感情を押さえて気持ちを作ったり、兄弟を励ますためにテンションを高くしたり、瞬発力が求められる分気力も体力も必要な舞台でした」
入江「思っていた以上に4人ともしんどかったと思います(笑)。本番では客席のお客様の感情も伝わってくるので僕たちの気持ちも揺さぶられますし、目の前にいる皆さんに「伝えたい」という思いがどんどん強くなりました。“戦争”が背景にありますが、その時代の仲の良い4兄弟の”夢“や”兄弟愛“、”恋模様“を含め日常を等身大でしっかり表現することで、大切なテーマを伝えながら、皆さんにも観て頂きやすい作品にできたのではないでしょうか」
――上杉さん、瀬戸さんは今年初参加となりますが、本作への思い、意気込みをお願いします。
上杉「昨年の舞台を観ていますが、それをベースに今作を考えることはしないつもりです。今年、僕と(瀬戸) 利樹がいる4兄弟は昨年とはまた違う関係性が生まれるはずですし、実際稽古が始まって演出家の秦さんと4人で新しい4兄弟、新しい舞台「大きな虹のあとで」を作ろうと思っています。僕たちの共通認識であり、共通のテーマはこの作品を通して”戦争“という史実に目を向けてもらい、忘れないでいてもらうこと、関心を持ってもらうことです。今作を観て頂いた方の心に残るようにしっかり伝え演じることが自分の役目だと思っています」
瀬戸「前作で草太を演じた山本涼介さんから「ホントに大変だよ」と聞いています(笑)。今年の夏は草太に捧げるつもりでいます。3人の兄を信じて、普段からのコミュニケーションをしっかり心掛けていきたいと思っています」
上杉「僕らができることは本当の戦争の姿を語り伝えることとは少し違っていて、100年も経たない数十年前に起こったリアルな出来事を僕らの世代はもちろん、もっと若い世代に少しでも知ってもらい、関心を持ってもらうことです。簡単に扱えるテーマでないことは十分理解していますが、若手の僕らが演じることで、僕らを応援してくれるファンの皆さんはもちろん、作品を観に来てくれた方に考えたり感じるきっかけを提供すること。そのための演出であり、そのための役のキャラクターが設定されていると思います。僕は昨年この舞台を観てその命題と言いますか、芯を理解できなければ演じてはいけないと思っていました。新しい4兄弟でしっかり今作に臨みたいと思っています」
≫後編につづく
【プロフィール】
市川知宏
■イチカワトモヒロ 読売テレビ・日本テレビ系木曜ドラマF 『ラブリラン』、NHK BS時代劇 『鳴門秘帖』など出演多数。
上杉柊平
■ウエスギシュウヘイ ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」第5シリーズ、行定勲監督作品「リバーズ・エッジ」など出演多数。
入江甚儀
■イリエジンギ EX「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」に氷怪人ザミーゴ・デルマ役で出演中。
瀬戸利樹
■セトトシキ 映画「仮面ライダーブレイブ&スナイプ」、東海テレビ・フジテレビ系「いつまでも白い羽根」などなど出演多数。