2021年10月22日(金)より東京・サンシャイン劇場にて劇団スーパー・エキセントリック・シアターの第59回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー 太秦ラプソディ~看板女優と七人の名無し~が開幕する。初日を目前にした10月15日(金)、都内の某ホールにて劇団の稽古の様子を取材した。
当日の稽古は劇団スーパー・エキセントリック・シアター(以下、SET)の稽古場ではなく、都内のホールで行われた。稽古場ではどうしても密な状況が生まれてしまい、十分な感染対策をしながらの稽古は難しいとのことからの対応策である。その甲斐あってか、広いステージを利用した通し稽古では、迫力のある芝居を観ることができた。
実はこの日が初めての通し稽古とのこと。殺陣や大がかりなセットもある本作、入念な確認を終えて、通し稽古が始まる。時代劇の恰好に扮した俳優たちが記者から取材を受けているシーンから始まる。
あらすじ
時代劇が衰退する中、自分の居場所を守るために奮闘する斬られ役の無名俳優たち。
そして、そんな彼らを支援する一人の若手女優。
降りかかる数々の困難に立ち向かう中、一人の無名俳優に千載一遇のチャンスが訪れ、人気俳優の仲間入りを果たす。
彼は自身の主演最新作の相手役に支えてくれた女優を指名するが、彼女は若年性アルツハイマーに冒されていた。
最高のチャンスに訪れた最大のピンチ。
しかし、彼らはこの危機を乗り越えるべくある作戦を実行する。
果たしてその結末は・・・。
劇中では、アイドル出身の人気女優、樫本ハンナが主役のコメディ時代劇が展開される。「人気の若手女優を主役にしないと時代劇企画は通らなかった」と、人気女優のわがままに振り回される様子など、思わず現代の時代劇業界の大変さを思案してしまう。この時代劇業界の危機を救うため、クラウドファンディングを実行する等、時事ネタもふんだんに盛り込まれており、つい現実世界とクロスさせて、クスっと笑うシーンも沢山だ。
本作の見どころは何といっても殺陣のシーンだ。映画撮影シーンでは、幾度となくチャンバラが繰り広げられる。主役・樫本の敵役・長吉友理沙(太秦の看板女優)が敵に囲まれ、俳優たちを斬っていくシーンは、素直に「かっこいい」と心の声が漏れてしまったくらいだ。
もちろん、物語を引っ張っていくのは三宅裕司と小倉久寛の二人だ。
三宅はコメディ時代劇を撮影する映画監督・黒鰆 呆(くろさわら あき)、小倉は大部屋俳優の重鎮・内川 伊太衛門(うちかわ いたえもん)を演じる。悪人ばかりを演じる『悪人商会』に所属している内川だが、映画撮影中以外は全く悪人らしくなく、ものやわらかな態度をとるから面白い。ちなみに、劇中では善人ばかりを演じる『善人商会』 も存在する。
映画監督の黒鰆が大部屋俳優の内川にケチをつけるところから二人の掛け合いは始まる。三宅のいじりに小倉が応えることで二人のやりとりは進む。困り果てた小倉の姿にアドリブだろうと思うのだが、以前に聞いた話だと、こういった三宅と小倉のシーンは台本通りらしい。とは言っても、今回はアドリブかもしれない、と自分が観たものを疑ってしまい、ついついもう一度観たくなる。これが計算通りであれば、あっぱれだ。
「ミュージカル・アクション・コメディー」を旗印にしているSET。アクションは時代劇のチャンバラで、コメディーは始終に散りばめられているが、若手女優が病と闘うクライマックスに向かうと、シリアスなシーンも多く、時代劇業界への憂いもあり、考えさせられる物語になっている。ふと前作(第58回本公演「世界中がフォーリンラブ」)に比べ、ミュージカルシーンが少ない?と感じたが、最後は2021年のミュージカル映像作品をイメージするような曲が流れ、歌って踊っての大団円となった。ミュージカル好きとしてはニヤっとしてしまうエンディングだった。どの曲のパロディかは、劇場でご確認を。
本公演はいよいよ明日10月22日(金)から始まる。東京公演の後、愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLATでの公演が控える。ぜひ劇場でSET流の現代の時代劇社会の行く末を見届けてほしい。
取材・文・写真=ローチケ演劇部員