「シェイクスピア物語~真実の愛~」~SHAKESPEARE OF TRUE LOVE~│主演・内博貴 インタビュー

没後400年以上を経た今なお名声を浴び続けるシェイクスピア。彼の遺した名作「ロミオとジュリエット」の誕生秘話に迫る「シェイクスピア物語~真実の愛」が、内博貴の主演で上演される。ペスト菌の流行があった中で書かれた愛の物語「ロミオとジュリエット」だが、その背景にはシェイクスピア自身の愛も大いに関わっていた。愛の真実に触れる本作に、内はどのように挑むのか、話を聞いた。

 

――今回は、シェイクスピアを題材にした物語になりますが、作品の印象やシェイクスピアについてのイメージはどのように感じていらっしゃいますか?

僕は、あの「ロミオとジュリエット」がこういう感情を経てできたものを知らなかったんですね。映画にもなっていることを知らなくて、先日、観たばかりなんです。それでシェイクスピアがどのようにして「ロミオとジュリエット」を書いたのかを知りました。シェイクスピアって、本当にもうしゃべる言葉が詩人なんですよね。おしゃれなことを言うし、多分究極のロマンチストじゃないかな。

 

――脚本にもロマンチックな言葉や古典的な言い回しなどもあるかと思いますが、シェイクスピアを演じるうえで何か気を付けていらっしゃることなどはありますか?

この作品では、裏側のような部分も見せているので、そういう難しい感じの部分もあるけれど、日ごろの会話の中でそこを織り込みすぎるとワケわからなくなってしまう。そのあたりは、みなさんにも分かりやすいように脚本を書いてくださっていると思います。ただ、ちょっとしたモノローグとかひとりでしゃべるような場面では、特徴的な言い回しもありますね。でも、あまり難しく考えすぎないようにしたい。自分の中で色を足さずに、自然に演じていきたいです。

実は、演出家の方からは「映画は見なくてもいいですよ」って言われていたんですよ。確かに、映画でイメージが出来てしまうと、どうしてもこういうふうにしなきゃ…って思っちゃうじゃないですか。でも、気になっちゃって(笑)。でもその上で、シェイクスピアだから声のトーンはこう変えてみよう…とか、そういうことは考えないようにしたいと思っています。年齢的な部分も、今の僕自身は35歳なんですけど、それくらいのそのままの感覚でいいよ、と言ってくださっているので、そのまま自然にやれたらいいですね。

例えば、前に太宰治を演じたんですけど(浪漫舞台『走れメロス』〜文豪たちの青春〜)、その時は青年期から亡くなるまでをやったので、自分の中で声の感じを変えたり、年を重ねるにつれてセリフの言い回しをちょっとゆっくりにしたりするんですよ。今回はそういうことではなくていいので、ある意味やりやすいかもしれません。

 

――古典などの特徴的な部分はありつつも、脚本から受けて感情をそのまま表現できそうですね

多分、そうだと思います。あとはもう稽古次第。やっぱり稽古で実際に相手の方とかを含めてセッションしてみて修正したりと、その時々で変化していきますから。その時の気持ち、シェイクスピアっぽくというか、素直な部分のまま演じていきたいですね。

やっぱりそこがお芝居の面白いところじゃないですか?対人間あってのことで、僕が投げたボールを相手の人が受け取って…相手によってストレートかもしれないし、カーブかも知れないし…役者によってはナックルボールなんかで、毎回違う玉を投げ合うかもしれない。そこが面白いんですよ。そういうセッションをしながら作り上げていきたいです。

それに、そもそも“芝居してます”みたいなのって、あんまり好みじゃない。舞台上で、自然とそこにいて、自然にしゃべっていて、なんか普通にしている。そういう感じが好きなので、今回もそうしていきたいです。

 

――今回はヒロインのジュリエッタを熊谷彩春さんが演じられますが、彼女の印象はいかがですか?

この間、初めてお会いしたんですけど、まだ21歳ですごく若くてその時も地方からそのまま現場にいらっしゃっていて、すごく忙しくされている方なんだなと思いました。

 

――まだファーストインプレッションといった感じなんですね。ポスタービジュアルなどを拝見すると、お2人ともとても素敵でいらっしゃって、すでに相性ピッタリに見えました。

しっかり扮装していますから(笑)。でも、お芝居でこういう扮装するの、めちゃくちゃ久しぶりなんですよね。やっぱりこうやって作りこんでいただくと、感覚的にもまったく違います。今回は出演者も多くて、稽古もマスクしているじゃないですか。だから、誰がどこにいるかわからなくなっちゃうときがあるんですよ。その上で本番で扮装したら、余計にわからなくなっちゃいそうなんで、そこもしっかり稽古しないとですね。

 

――コロナ禍ならではの悩みがこんなところにもあるんですね。今回の時代背景は、ペストの流行が収束して劇場に人が戻ってくる頃のお話になっています。コロナ禍はまだまだ油断できない状況ではありますが、重なる部分も多い印象ですよね

そうですね。そういう厳しい状況の中でも劇場に来てくださる方がいらっしゃることが、とても嬉しい。1人でも来てくださる方がいらっしゃるのであれば、こちらはもう精いっぱいやるだけ。劇場もしっかり感染対策をしていますし、来てくださる方には少しでも安心してお越しいただけたらと思っています。物語の中で、閉鎖された劇場で新しい幕が開くから皆さん来てください、という部分は、本当にリンクしているように感じますね。

 

――劇中では女性の立場について踏み込んだ描写も見られます。そのような部分については、どのように感じられましたか?

その点については、ほんとうに未だにわからないです。なぜ女性が自由に生きられなくて、結婚についても、舞台に立つことも、なぜ自由にならないのか。それはエリザベス女王が決めたことなのか、そのあたりは全然わからないんですけど、すごく疑問を感じています。女性が舞台に立つことがダメだと言われているのに、シェイクスピアは出そうとして…そこには本当に覚悟があったんだと思います。完璧な芝居が見せたいがゆえに、法に反することをあえてやっちゃう。それだけ、芝居を愛していたんだと思いますね。

 

――内さん自身は、お芝居への愛情をどのように感じていますか?

さっきもちょっと話したんですけど、お芝居って相手によって本当に違うんですよね。同じ作品でも俳優が変わるだけで、随分変わる。同じ役で同じセリフなのに人が変わるだけでこんなにも変わるのか、なんか人間の持っている魂のエネルギーというか…それが人によってやっぱり違うから。それを感じられる瞬間が、舞台の面白さなんだと思いますね。

それで、あの…僕、めっちゃ性格が悪いんですよ(笑)。お芝居をやっていて、相手役の人がちょっとセリフが飛んじゃったとか、そういうことが起こるとなんか面白くなっちゃうし、スイッチが入っちゃうんです。もちろんお客さんには気づかれないのが前提ですけど、それをどう切り抜けるか。そういう瞬間にものすごくワクワクします。それで、終わったあとにその方が謝りに来る感じも含めて、面白いというか、楽しくなっちゃう。性格悪いでしょ?(笑)

 

――いや、逆にめっちゃ優しさを感じますよ!でも、舞台が生だからこそのハプニングを、そこも含めて楽しめてしまうのは凄いと思います

やっぱり人間がやることなので、どんな大御所の俳優さんでも飛ばすときは飛ばすと思うし、止まるときは止まる。その“時が止まった感じ”がめちゃくちゃ面白いんです。その瞬間、どんと構えて、コンマ1秒で“さぁ、どうする?”って考える。映像だったら撮りなおすけど、生の舞台なのでどう乗り切るか。そういうのが、すごく好きです。

 

――やり切った時の達成感も大きそうですね

達成感は…最近あんまりないんですよね。むしろ、後悔してきたことの方が多い。でも、実際はちゃんとやっているし、やりきっているという感じもないわけじゃないんだけど、もっとこうできたな、とか、こんな方法もあるかも、とか、いろいろ出てきちゃう。考えすぎているのかな?

 

――やり終えた後もどんどん出てくるのは、それだけお芝居が面白いと感じているからかもしれませんね

いい意味で年を重ねたんでしょうね。若い時には絶対、こんな感情にはならなかった。やり切った!よし、お疲れさまでした!みたいな感じでしたから。そういう意味では、その先に行こうとしている自分がいるので、成長できているのかな。本当に正解がないですから。誰かが正解と言っても、別の誰かは不正解だったと言う。やればやるほど奥深さを感じますね。

 

――それだけストイックに取り組んでいると、息抜きも大切かと思います。どのような時間がリラックスできますか?

プライベートの趣味は、本当にゴルフしかないですね。ゴルフは本当にリフレッシュできます。あとはジムかな? お芝居の期間は、帰宅してからもその日の復習をお風呂でします。湯船につかりながら、稽古の内容を思い出して、頭の中で整理して…。でも、家のこともいろいろやらなくちゃいけないから30分とかですけどね。あとは寝る前にソファで横になりながら稽古を思い出したりしています。

 

――今後、役者として挑戦してみたいことは?

正直、本当にいろいろな役をやらせていただいていますし、こういう役をやりたい、とかもそんなに無いんですよね。でも、今回みたいな恋模様の作品はめちゃくちゃ久しぶりで、多分10年くらいは無いんじゃないかな?だから、今回が役者としてちょっと挑戦かも知れないです。

 

――今回の作品を経て、めちゃくちゃロマンチックでハッピーエンドになるようなラブラブの熱い作品にも挑戦できるかもしれないですね

そういうのはやったことない(笑)。機会があれば、やってみたい…かな。すごく照れちゃいそうですけど(笑)

 

――期待しています(笑)。最後に、今回のお芝居を楽しみにしている方に向けて、メッセージをお願いします

シェイクスピアがどのようにしてあの作品を生み出したのか、よりシェイクスピアの真実に近い作品になっていると思います。キャストも本当に華やかで、いろんな人をみていただきたいですね。衣裳やセットも含めて、目でも楽しめる作品になっているかと思いますので、ぜひお越しいただきたいです!

 

――楽しみにしています。本日はありがとうございました!

 

取材・文:宮崎新之