5月30日(水)、『六月博多座大歌舞伎』の初日を目前に、出演する俳優陣による船乗り込みが催された。すっかり博多の初夏の風物詩となったこの行事も今回で19回目。現在は博多と大阪だけでのみ行われる大変めずらしい行事で、歌舞伎俳優のご当地到着の報告を兼ねて、船で川を下りながら劇場への来場をお誘いするというものだ。松本白鸚丈、松本幸四郎丈の襲名披露興行となる今回。大歌舞伎らしい豪華俳優の揃い踏みに、3万人の人出で賑わった。
このお目出度い興行を祝うかのように、当日は真夏を思わせるほどの晴天。まずキャナルシティ博多のサンプラザステージで式典が行われた。1階はもちろん、2、3階と上のほうまで鈴なりになったお客様を前に、松本白鸚丈、松本幸四郎丈の両名が挨拶をした。白鵬丈が奥様が博多出身であることに触れながらユーモアを交えた挨拶をすると、幸四郎丈はそれを受け、「(確かに)私の母、父の妻は博多出身でございますが、私のほうには、体には母の血が入っております。父には流れておりません(笑)。父よりも私にご声援をお願いします」と笑わせ、場内は拍手と歓声に包まれた。そして片岡仁左衛門丈など、総勢21人の歌舞伎役者が船へと乗船した。
博多川の両岸では早くから歌舞伎俳優が乗る船を今か今かと待つ見物客でいっぱいに。太鼓や三味線の音が鳴り響き、船が見えてくると橋の上からは、大向うの掛け声とともにたくさんの紙吹雪が撒かれた。松本白鸚丈は両手を上げたり、船からやや体を乗り出すなどして、見物客の声援に応えていた。
川端ぜんざい広場での口上を終えたあと、一向は鏡天満宮への参拝を終え、博多リバレインフェスタスクエアでの式典へ。ここでは俳優陣全員が一人ひとり挨拶をし、博多座への来場を呼びかけた。
松本白鸚丈は「一心不乱に舞台を勤めます。どうぞ博多座でお待ちしております。みなさまお誘い合わせの上、いらしてください」。松本幸四郎丈は「高麗屋の、私と父との襲名披露興行の第一歩の生き証人になっていただきたい。ぜひ劇場のほうに足をお運びください」と挨拶をした。
また、夜の部の『俊寛』などに出演する片岡仁左衛丈は「この度は高麗屋さん襲名ご披露に参加させていただきまして、こんな嬉しいことはございません。この興行が素敵な興行になりますように、私も一生懸命尽くしますので、どうかご声援のほどよろしくお願いします」とにこやかに話した。
昼の部『伊達の十役』で、渡部民部之助という重要な役を勤める中村梅玉丈が「幸四郎くんの演目『伊達の十役』の稽古に昨日初めて出させていただきましたが、幸四郎くんの目を見張るばかりの活躍に自分の役の稽古をすっかり忘れてしまいました。『伊達の十役』ぜひご覧ください、幸四郎くんが大活躍いたします」というと、
市川笑也丈は「舞台はナマ物と申します通り、初日、中日、千秋楽と見ていただくのが歌舞伎の楽しみ方のひとつ。ぜひ三日おいでください」と続けた。
最後の挨拶となった市川猿弥丈は、「松本白鸚のだんなから、多くの方に来ていただいて嬉しいということを伝えてくれと言われました(笑)。一人でも多くの方に劇場に来ていただきたいと思います。みなさま劇場でお待ちしております」と猿弥丈らしい、親しみのある明るい挨拶で会場を沸かせた。
最後はこの興行の成功を祈りつつ、博多手一本で締めくくられた。
豪華な顔ぶれ、豪華な演目が目白押しの『六月博多座大歌舞伎』の公演は6月26日(火)まで。チケットは、好評発売中。公演詳細は下記をご確認ください。