【岐洲匠編】ミュージカル『るろうに剣心 京都編』インタビュー企画【その4】

ミュージカル『るろうに剣心 京都編』が絶賛上演中だ。

和月伸宏の剣劇漫画「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」を原作にした新作ミュージカルの脚本・演出を手掛けるのは、小池修一郎。原作の中でも特に人気の高い“京都編”のエピソードを、360°回転する客席の周囲をステージとスクリーンが囲む劇場・IHIステージアラウンド東京で上演するという注目の作品だ。音楽を手掛けるのは太田健と和田俊輔。主人公・緋村剣心を演じるのは小池徹平。

ローチケでは、本作の出演者たちに直撃取材を敢行。その第三弾は、相楽左之助役の岐洲匠のインタビューをお届けする。

※本インタビューは稽古序盤に実施

 

――お稽古に入ったばかりだそうですが、実際に演じ始めていかがですか?
「正直まだ先が見えないくらい遠いんですけど、小池修一郎さんの演出がすごく丁寧で愛があって、時に厳しくもあり、僕はとても楽しいです。小池修一郎さんが『漫画から飛び出してきたような舞台を目指したい』とおっしゃっていたんですけど、そうなれるように、“左之助よりも左之助”という気持ちでがんばりたいです」

――左之助よりも左之助であるために必要になのはどんなことですか?
「これは小池修一郎さんにも言っていただいたことですが、左之助って『週刊少年ジャンプ』の主人公みたいなキャラクターだと思っていて。先日、役づくりの一環で『ONE PIECE』(『週刊少年ジャンプ』にて連載中の漫画)を一気観したんです」

――え?『ONE PIECE』をですか?
「もちろん原作を一番参考にしているのですが、当然主人公は剣心なので、左之助ばかりを描いているわけではないですよね。そこで左之助の“『週刊少年ジャンプ』の主人公”っぽさを深める参考に『ONE PIECE』がいいのではないかと勝手に思ったんです。主人公のルフィはまさに“『週刊少年ジャンプ』の主人公”だし、他のキャラクターもパワーに溢れているので」

――へえ! 面白いですね。小池先生に、「『週刊少年ジャンプ』の主人公」以外で言われていることはありますか?
「毎年、西宮神社で参拝一番乗りを競って走る“福男選び”っていうのがあるじゃないですか。左之助は、そこで1位をとるような人だって言っていただきました。なるほど!と思いました。そういう、真っ直ぐに突き進む感じ。道の途中に壁があっても壊して突き進むようなエネルギーを求められているなと思います」

――岐洲さんはそういうキャラクターが似合いますしね。
「(山口)馬木也さんにも『匠ってシュッとしてるのにいつも泥臭い役だよね』って言われました(笑)。僕としてはクールキャラもやりたいんですけどね……」

――この「京都編」の物語についてはどう思われましたか?
「『るろうに剣心』の中でも特にカッコいいエピソードだと思います。“男の浪漫”と、日本ならではの刀のアクションが堪能できるストーリーで……まあ、左之助は拳で戦うんですけど(笑)」

――左之助のアクションはこの作品の中でも独特ですよね。
「だからこの舞台でも、刀と拳でどんなアクションをつけていただけるのか楽しみにしています。強いところもそうですが、あるキャラクターにボコボコにされるシーンがあるので、そういうところでカッコいい負け方もできたらなと思っています」

――稽古場で挑戦していることはありますか?
「僕はミュージカルが初めてなので、そこが挑戦です。稽古場にピアノが置いてあって、その周りに集まって歌うんですけど、最初の頃は、皆さんがあまりにうまいので気が引けて声を出せませんでした。今はとにかくビビらず声を出す、という気持ちで。でも毎日ドキドキですけど」

――剣心を演じる小池徹平さんとは舞台『魔界転生』(’21)でも共演されていますが、どんな印象ですか?
「本当にやさしい方です。稽古場でも色々と話しかけてくださいますし、『魔界転生』の時には一緒にゲームもしてくださったりして。ただ今回は、左之助は剣心に力を貸す逞しい男なので。小池(徹平)さんは圧倒的に先輩ですけど、左之助が剣心のことを『東京のダチ』と言っているように、僕も“友達”になれたらなと思っています」

――楽しんでいることはありますか?
「明神弥彦はトリプルキャスト(生出真太郎/西田理人/三木治人)で、みんな小学生なんです。その弥彦が登場する神谷道場のシーンは、みんなでワイワイすることが多いので、稽古場では3人ともやりたがって、みんな出てきたりするんです。そしたら小池修一郎さんが『誰か一人にして!』って(笑)。そういう時間はすごく楽しくて、元気が出ます。稽古帰りにも、弥彦のみんなが『あ、左之助だー!』と声をかけてくれたりして。元気をもらって、もっとがんばろうって思えますね。僕だけじゃなくてみんな癒されてると思います」


――最後に、左之助を演じるうえで大切だと思われていることを教えてください。
「自分の信念を貫く気持ちと、剣心への強い想いです。左之助は剣心を一人でいかせるわけにはいかないと思っている男なので」

――左之助の信念とはどんなものですか?
「左之助って上衣の背中に『悪』の一文字を背負っているじゃないですか。あれは、明治の新政府が自分たちの都合で『悪』にしたものが実際は“正義”だったことを左之助は知っていて。だから自分はその『悪』……つまり左之助にとっての“正義”、を貫くという意志が表れたものなんです。そこに信念があると思います。他のキャラクターに比べると強くはないけど、左之助が登場した時の安心感ってあると思うので、そういう存在でいられるようにしたいです」

――たしかに左之助が出てくると安心しますね。
「そうですよね。剣心も左之助を見たら力が湧いてくるんじゃないかなって思うし。いるだけで士気を上げられるなんてカッコいいと思います。そのためにはフィジカル面での説得力も必要だと思って、身体も鍛えていてるんです。あとは自信を持って舞台に立つことも大事だと思うので、これから稽古で歌を含めしっかりと向き合って、自分をレベルアップさせて、自信をつけていけたらなと思います」

――楽しみにしています。
「観てくださる方に、『岐洲出てきた』じゃなくて『左之助出てきた』と思わせたいです。がんばります!」

 

インタビュー・文/中川實穗

写真/山口真由子