【加藤清史郎編】ミュージカル『るろうに剣心 京都編』インタビュー企画【その5】

ミュージカル『るろうに剣心 京都編』が絶賛上演中だ。

本作は、和月伸宏の剣劇漫画「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」を原作にした新作ミュージカル。脚本・演出を手掛けるのは小池修一郎、描かれるのは原作の中でも特に人気の高い“京都編”、劇場は客席が360°回転するIHIステージアラウンド東京、音楽を手掛けるのは太田健と和田俊輔、主人公・緋村剣心を演じるのは小池徹平と、あらゆる面で注目の作品だ。

ローチケでは、本作の出演者たちに直撃取材を敢行。その第四弾は、志々雄一派の十本刀の一人で超神速で移動する縮地法の使い手・瀬田宗次郎役の加藤清史郎のインタビューをお届けする。

※本インタビューは稽古序盤に実施

 

――瀬田宗次郎という役にはどんな印象がありますか?
「大好きなキャラクターです。『るろうに剣心』に登場する人物は明治維新や戊辰戦争を経験している人が多いのですが、宗次郎はその頃まだ子供で、幕末の最後に志々雄真実と出会い人生を変えるので、まずそこがみんなと違うんです。そして、いろんなキャラクターが自らの信念を貫いて果てていく中で、宗次郎は信念を貫き通せない少年でもあって。剣心との戦いによって変化していくものがある、というところも魅力的です。志々雄の影響を受けていまの宗次郎があるのですが、その後、剣心から受ける影響の大きさは、登場キャラクターの中で一番と言っても過言ではないんじゃないかと思います」

――そして強いですしね。
「普段の立ち振る舞いも、『俺は強い!』と自ら言っている人より強そうだなと思います。『こら!』って怒られるよりもやさしく怒られたほうが怖い、みたいな(笑)。先ほど剣心との戦いで変化すると言いましたが、そうやって変わっていけるだけの“純粋さ”が残っているところが好きです。それは志々雄に対しての忠誠心にも結び付く部分だと思うのですが…でもそういった宗次郎の根っこの部分を考えると、純粋無垢な男の子なんだろうなと思います。過去の経験があって今の宗次郎がいるというところがドラマティックだと思いますし、そんな彼が好きです。単純に速くてカッコいいんですよね。」

――その速さは舞台でどう表現されるのかなと楽しみにしています。
「どうなるんでしょう(笑)僕もまだ明確には見えていないです。殺陣も速さが大切になりそうですし。だからといって型がブレてはいけないので、そこに耐えられる身体作りをしないといけません。どんな技を使ってその速さを見せるかは課題であり、目標であり、楽しみでもあります」

――IHIステージアラウンド東京で速さが武器の役を演じるのは大変だろうなとも思いますが。
「体力勝負ですよね。まず“宗次郎になる”ということさえできてしまえば、なにも苦しいことはない……と言いたいところですが、さすがに天井を走ることはできませんし、難しいです(笑)。でもそれに近いところまで自分から寄っていかないと、乗り切ることができない作品であり、劇場だと思っています」


――宗次郎を演じるうえで大事にしたい部分はどんなところですか?
「彼には志々雄と出会う前に受けていた虐待によって自ら封印してしまったようにも、封印させられてしまったようにも思える“感情”があって(いまの宗次郎は喜怒哀楽の“楽”しかない)。でも僕自身は喜怒哀楽があるので、その違いはしっかりと自分の中で掘り下げて根の深いところに志々雄の『所詮この世は弱肉強食 強ければ生き 弱ければ死ぬ』という言葉を落とし込まないといけないなと思っています」

――小池修一郎先生とはこれまでも一緒に作品をつくられていますが、どのような印象がありますか?
「以前、プロデューサーさんが『小池先生は妥協を知らない演出家』とおっしゃっていたのですが、まさにその通りの方です。だからこそ、今回『るろうに剣心』という作品を、他の劇場よりも表現方法が多い劇場でつくられることが、いちキャストとしても、いち『るろうに剣心』ファンとしても楽しみです。小池先生の演出もきっと際立つと思います」

――今作の脚本を読んでどう思われましたか?
「夢がたくさん詰まっているなと思いました。小池先生の浪漫が書かれているというか…演出もそうですし、舞台装置も音楽もすごく面白そうなイメージで書かれていました。稽古場で実際に書かれている通りに動いてみたり、劇場で装置を確認しながらつくられていくと思うので、型のある作品や一般的な劇場で上演される作品よりも、“ひとつずつ確かめてつくりあげていく”という感覚は大きいだろうなと思っています」

――ちなみにストーリーそのものにはどう思われていますか?
「まず僕は京都編が大好きなんです。いろんなキャラクターが登場して、その一人ひとりに過去とドラマがあって、なぜこんなふうに生きていこうとしているのかの理由があって、そこで刀を交える。人間だなと思います」

――その交えられた刀には、加藤さんはどう思われていますか?
「どれも一理あるな、と思います。もちろん志々雄が人を殺めることを選んだことは許されないですし、やっぱり剣心の言っていることが一番きれいだと思うんです。でも、どのキャラクターの言うことも『そんなことがあったら、そう思ってしまうかも』と共感できてしまう。それが『るろうに剣心』という作品の素晴らしさです。だからこそ僕らも一つひとつのキャラクターをきちんと掘り下げないと、演じきれないと思っています」

――演じきれない。
「宗次郎は喜怒哀楽の感情のうち“楽”しかなかったはずなのに、剣心とのやり取りの中で初めてイライラするシーンがあるのですが、それを加藤清史郎で演じてしまうと、きっとただの“怒り”になってしまう。あの宗次郎の雰囲気を表現するには、きちんと感情を欠落させないといけないと思うので、日々探りながら稽古に励んでいます。宗次郎はの“基本的にニコニコしているのですが、作り笑いや愛想笑いではないんですよね。一つひとつの状況に心から楽しさを感じて笑っている。それができないと、宗次郎の恐ろしさや過去の悲惨さを引き出せないと思っています」


――そこを追求するのは気持ちが大変そうですね。
「役者さんによっては心が病んでしまいそうですよね。でも、僕は役と私生活をキッパリ分けられるタイプなので大丈夫です!」

――最後に、加藤さんが個人的にこの作品で楽しみにしていることを教えてください。
「殺陣が楽しみです。それぞれのキャラクターに特性があるので、相楽左之助はどうやって石を割るんだろうとか、四乃森蒼紫の“回転剣舞六連”とか、比古清十郎の“九頭龍閃”なんて僕が何度練習してもできない技ですから。だから師匠(比古)と剣心のシーンはすごく楽しみです。そしてなんといってもラスボスである志々雄の演出効果がどうなるか」

――そうですね。
「あの劇場だからできることもあるだろうし、もしかすると僕の360度走りもあるかもしれないし」

――やめてあげてほしいです。
「(笑)。でも大げさに言ったらそういうことも実現できる劇場だからこその、未知のものと闘っている感じ、出会っている感じがすごくあって楽しいです。この作品で描かれている、『どう生きていきたいか』ということは、時代が違えど、国が違えど、通用することだと思っています。特に今回は登場人物が多い分、それぞれの信念や正義が出てきますし、自分と考えが似ているキャラクターは誰かなとか、どのキャラクターになりたいかなとか、そんなふうにも楽しんでいただけたらいいなと思います」
――楽しみにしています。
「ありがとうございます。どんな作品になるのか僕も楽しみにしています。」

インタビュー・文/中川實穗
写真/山口真由子