「七月大歌舞伎」片岡仁左衛門 取材会レポート

7月3日(火)から27日(金)まで大阪松竹座で行われる七月大歌舞伎。今年は二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎襲名披露公演となる。『勧進帳』で富樫左衛門、『御浜御殿綱豊卿』で徳川綱豊卿を演じ、『女殺油地獄』では監修を勤める片岡仁左衛門が「七月大歌舞伎」への想いを語った。
各公演の演目は下記の通り。

昼の部:一、『廓三番叟』 二、『車引』 三、『河内山』 四、『勧進帳』
夜の部:一、『御浜御殿綱豊卿』 二、『口上』 三、『女殺油地獄』

今回の襲名披露公演について、「参加できることは、本当にうれしい」と話し、「いつも以上に出演者一丸となって、お二人を盛り立てていきたい」と意気込みを語った。
今回昼の部では、『勧進帳』の富樫左衛門を、夜の部では『御浜御殿綱豊卿』にて徳川綱豊卿を演じる。

「どんな弁慶か楽しみ」

『勧進帳』で武蔵坊弁慶を演じる幸四郎について、「本当に、貪欲にいろいろなものに取り組んでいますね。数々の上方の作品にも挑戦している姿が印象深いです。」と述べ、これまでに幸四郎が弁慶を演じた際、富樫を勤めた松本白鸚や中村吉右衛門と「比べられるのがつらい」と漏らしながらも、「どんな弁慶か楽しみ」と幸四郎との共演に声を弾ませた。
また、『勧進帳』の舞台を勤める時は、七代目幸四郎の弁慶、十五代目市村羽左衛門の富樫、六代目尾上菊五郎の義経の映画を見ます。「見るたびに新しいことが見つかる」と、絶え間なく精進する仁左衛門の熱意が感じられた。

 

「独りよがりに想いを伝えるのではなくて、いかに心地よく(伝えられるか)」

夜の部の『御浜御殿綱豊卿』は「大変思い出深いお芝居」と話し、夏の松竹座で行うことは「非常にうれしい」と一言。市川中車の富森助右衛門とは今回初めて対峙するが、「彼は非常に勉強熱心で、共演するのが楽しみですね」と心待ちな様子。
『御浜御殿綱豊卿』について、「(真山青果先生の本は)みんないいセリフなんですよ、一つ一つがすーっと入ってくる。読んでると、これはいいたいなっていうセリフがたくさんある。」と称賛し、一方でお客様が「セリフを全部受け取るってなかなか難しい」と話し、「独りよがりに想いを伝えるのではなくて、いかに心地よく」伝えられるかどうかを意識しながら演じているという。

「先輩たちにも恩返しができたかな」

監修を勤める『女殺油地獄』の主人公である河内屋与兵衛について、「お客様を腹立たせないよう演じるといいと思います。」と話し、続けて「お客様が与兵衛に腹を立ててしまったら、主役として困るんです。どんな悪人でも、どこか憎み切れないところをつくって演らないと」と語った。そして、幸四郎なりの「個性を出して」与兵衛を演じてほしいとも話した。
また、後輩たちが与兵衛を演じることについて、「うれしいです。自分を見てやってみたいと思ってくれていたとしたら、それはわたしに教えてくれた先輩たちにも恩返しができたと思います」と感慨深い面持ちであった。

片岡仁左衛門が出演する「七月大歌舞伎」は大阪松竹座で、7月3日(火)から27日(金)まで行われる。一見ならず、昼の部、夜の部ともに見逃せない。

取材・文/ローソンチケット