毎年単独ライブを成功させ、『キングオブコント』や『オンエアバトル』などでも異彩を放っていたコント集団フラミンゴ。
しかし、その活動は2013年以来ピタリと途絶え、メンバーはそれぞれ役者としてドラマや映画で大活躍。
「フラミンゴって解散しちゃったの?」という声が囁かれるなか、遂に単独ライブの開催が決定!
あれから9年、遂に動き出すフラミンゴ。
『そうは言ってない。』と名付けられたタイトルにどんな意味があるのか?
果たしてコンビ仲は大丈夫なのか? フラミンゴの現在地に迫った。
あのコント集団が9年ぶりに復活 突如シーンから消えた理由を問うと?
ーー結成20周年おめでとうございます。
全員 ありがとうございます。
吉田 20周年とはいっても単独ライブはもう9年やってないんで、実質11歳ですけどね。
竹森 なにしてたんだろうね……9年……。
辻本 まあ、それぞれが忙しくなったっていうのもありますね。
ーーフラミンゴのお三方は“役者”としてめちゃくちゃドラマや映画に出てらっしゃいますよね?
吉田 そのイメージは強いでしょうね。
辻本 この前も友だちの家で何気なく『オールドルーキー』点けてたら、「あれ? 竹森?」ってシーンがあったんだけど出てた?
竹森 出てました(笑)。
辻本 やっぱり(笑)。
ーーちょっと歴史を整理したいのですが、フラミンゴは2002年に結成して、単独ライブを中心に活動を続け、2013年までに計22回の単独ライブを開催していたコントグループということで間違いないですよね?
吉田 そうですね。コントをやる為に集まった3人です。仲が良かった3人でコントをして遊ぼうというのがスタートでしたね。
ーーところが2013年以降、ピタッと単独ライブはやられなくなってしまった。
全員 はい。
ーー聞きづらいのですが、2013年に“何か”あったんでしょうか?
吉田 やっぱりそこ気になりますよね……。
ーー『爆笑オンエアバトル』や『キングオブコント』などにコンスタントに出ていたグループが急に活動を止めたらさすがに何かあったのかと思います。
吉田 実は……なんの理由もないです。
ーーえ?
竹森 9年前の単独公演が終わったときも「次、いつやる?」って思っていたしね。
吉田 まだ会場押さえてないしなーみたいな。
竹森 そのまま9年。あっと言う間。
辻本 だから、僕たちのなかで止まっていた感はないんです。ふたりとは飲みにも行ってますし、お風呂も3人で行ったりしますし。旅行も一緒に行くしね。みなさんが心配するほど僕らは止まっている感覚はないです。
ーーそうなんですか?
吉田 みなさん触れづらいのか、たまにドラマの現場で若手の芸人と一緒になるときがあるんですけど、スッと僕のところに来て小さい声で「フラミンゴさんって解散されたんですよね?」って聞かれるんですよ。遠慮がちに。
ーー意を決して聞いたんでしょうね。
吉田 「してない、してない。それは誤解だよ」って言ったり。そういうことが9年間、けっこうありましたね。なので、それらへの僕らからの返答が今回の公演のタイトル『そうは言ってない。』です。
辻本 解散とは言ってないし、仲が悪いとも言ってない。
竹森 9年間、みなさんが僕らに言いたいことへのすべての答えが『そうは言ってない。』って一言なんです。
ーーいろいろな疑問が一気に解決する魔法の言葉ですね(笑)。でも、なぜこのタイミングだったのでしょうか?
吉田 小さい動機はポコポコあったと思うんですよね。僕らのなかでもどっかでやるだろうなとは思っていましたし。ただ、コロナがはじまっちゃって強制的にできない期間ができちゃった。そうなると、ずっとやってなかったくせに抑圧されている感じがしてきて。
辻森 全然やってないくせにな(笑)。
竹森 コントがやりたいのにできない。コロナの野郎~って気分になってきて。
ーーちょ、ちょっと待ってください。“コロナで活動できない”って思うのは、ずっと活動してきた人たちが言うセリフであってフラミンゴさんが言うのはちょっと……。
吉田 いや~、コロナのせいですよ。
竹森 うん、コロナの野郎!
辻本 コロナな。
ーーむしろコロナがあったからフラミンゴのコント欲が湧き上がってきたのでは?
吉田 あとはやっぱり20周年ってことも多少なりともあったかなとは思いますけどね。
辻本 オレは20周年っていうことはすっかり忘れていて、人から言われて「そうなんだ!」って。
吉田 「単独やるよ」っていうのは事後報告だったからね。
竹森 僕らのなかじゃ、単独公演をやれば辻本さんは来るでしょみたいな感覚ですよね。「ディズニーランド行くんだけど来る?」みたいなノリで。
ーー友だちを遊びに誘うノリで9年ぶりのコントライブが決まったんですね(笑)。
吉田 「コント1時間半くらいやるけどどう?」って。
辻本 「やる、やる!」って。
ーー単独公演『そうは言ってない。』のタイトルについて改めてお聞かせください。
吉田 今回は自分たちが面白いと思うことを優先してやりたいって思っています。だから、ウケることとか、賞レースに出て勝てそうなこととかはいっさい考えずにやろうと思っています。フラミンゴが理想とするもの、僕らが作りたいものはこれなんですよってのを見せたいなと。でも、それを見せたときに完全に理解はされないだろうなとも思っています。
ーー自分たちの好きなことをやると理解はされない?
吉田 こういうコントを用意したんですけどどうですか? ってなったときに、「ああ、フラミンゴってこれこれこういうコントが好きなんですよね?」って言われるかもしれないけど、「そうは言ってない。」ってなりそうな気がするんです。自分の理想に対する裏返しの言葉というか。
竹森 先に、「そうは言ってない。」って言っておこうっていうね。
辻本 天の邪鬼だねえ。
吉田 普通に生活していても、自分が思っていないのに勝手にカテゴリーに入れられてしまうことってありますよね? 例えば、僕は丸っこい身体をしていることもあって、女の子が「ワッー」って気軽に触ってくるけど、勝手に丸っこい=優しいって思ってない? って。丸っこいけど、優しいとは言ってないよって。
ーーイメージでカテゴライズされるのは違うぞと。
吉田 お笑いをやっていると、お笑い芸人だからトークが面白くて、盛り上げ上手みたいなイメージで接して来られるけど、僕らは決して盛り上げ上手じゃないので、「面白いことやってよ」って振られてもなんにもできない。僕らはコント芸人だけど、面白い人だとは「そうは言ってない。」っていう。
ーー公演はどんな感じになりそうですか? 9年間のブランクがあると、すぐにネタができるのかとか、すぐに合わせられるのか? とか疑問が湧きます。
吉田 今はプレ稽古みたいな感じですね。それぞれ別の活動をしていたから、価値観とかズレてきてる部分がさすがにあるので、それをフラミンゴとしてすり合わせているというか、思い出し稽古のようなことをやっています。
辻本 とはいえ、ちょくちょく会ってたので、僕はすっごい自然な感じですけどね。楽しくて仕方がない。
ーーネタは今回も吉田さんが書かれているんですよね?
吉田 そうです。
辻本 僕はもう6時間くらいエチュードコントをやっていたいですね。ずっとやりっぱなしでいたい。それくらい楽しい。これはいくらでもできるぞと思っちゃう。
竹森 だったら僕は7時間いけますね(笑)。
吉田 そ、そう? エチュードはもうほどほどにしたいな(笑)。数をやるのは楽しいけど、やっぱり(本番に向けて)みせるものにしないといけないので、そのためにはなんというか、感覚を研ぎ澄ませていきたいなという思いもあります。
ーーコントの作りとしては台本をしっかり作り上げるタイプなんでしょうか?
吉田 一応、台本はあるんですけど、アドリブパートをあえて入れて構成していますね。お客さんにはどこからどこまでがアドリブかわからないようなところで。
竹森 僕らも具体的にどういうことをやるのか聞いてないのですが、何やらいろんなことにチャレンジすることになりそうだと聞いています。
吉田 やっぱり人間、切羽詰まったときがいちんばん面白いと思うので、追い込むようなネタを作りたいなとは思っています。
ーー9年経ったからこそできることもありそうですね。
吉田 お笑いの現場をまあまあ離れていて、ドラマや映画を中心に活動していると、周りが俳優さんなので、その方たちの集中力が凄いんです。僕らはどうしても舞台でお客さんの反応を敏感に察知して笑いにしてきたけど、俳優さんは台本に集中してやっている。そこにカルチャーショックを感じました。(撮影現場では)自分もそのレベルにいかなきゃいけないということで集中力を高めることを習慣にしていましたね。
ーーお笑いのステージでは経験できないキャリアをフラミンゴの3人は積まれていますよね。
吉田 3人共その積み重ねがあるので、お笑いだけをやっていた頃よりも集中力はだいぶ高いところにあるんじゃないかなと思っています。
竹森 それはありますね。やっぱり新しい現場に入ったときにはカルチャーショックをいっぱい感じましたから。そういう現場からみんなが何を持って帰ってきて、どんなものを出してくるんだろうというのは楽しみですね。
ーーお笑いで使う筋肉が以前とはまったく変わっている気がしますね。
吉田 それはそうですね。野球でいったら試合に全然出てないのに150キロ投げられるようになっているというような。
辻本 いい風にいうね。
竹森 一球で肩をぶち壊すかもしれないけどね。でも、せっかくいい機会を貰っているんだから、ここに還元させないともったいないしね。
吉田 それだけ我々も本気でやるってことです。
ーー逆に9年間でできなくなったこともありますか?
辻本 それはもう探せばキリがないくらいめちゃくちゃあると思います。
竹森 前回、着てた服は着れないしね。
吉田 それもあるし、若い役とかちょっとやりにくい。昔はおっさんの役に対して、「お前、意外と年とってんな!」っていうツッコミができたけど、今は本当におっさんになってるからね。
竹森 昔だったら女性の役をやるときにカツラを被ったり、スカートを履いたり扮装をしたけど、今はなんにもいらなくても女性の役ができるかも。
辻本 オレの髪型、そのままおばちゃんぽいし(笑)。
吉田 だから役の幅は減っているんだけど、ひとつの役でやれるパターンみたいなのは増えていると思うんだよね。なにしろ3人合わせて27歳年を重ねているわけだから、そのぶんの芸を見せたいと思います。
竹森 ハードルあげないで!
ーー期待値があがりますね!
吉田 本気でやります!
竹森 やめて! ハードルあげるの!
吉田 本気コントを見せます!
辻本 あ、なんか変なスイッチはいった(笑)。
ーー『そうは言ってない。』を気になっている方にメッセージをお願いします。
吉田 僕らのコントは、フリがあってボケがあって落とすっていうものではなくて、日常に溢れている何気ない一コマや、人生のターニングポイントを切り取るようなものが好きでそこを描きたいと思って作っています。あまり見たことがないタイプのコントが見られると思うので、世の中のコント好きな人はそこを期待して観に来てください。
辻本 9年空いたことで、フラミンゴの初期衝動であるちょっと複雑なネタに戻っている気がします。ちょろっと台本を貰ったんですけど、なんか……嬉しかったですね。
吉田 そうなんだよ。令和のおじさんの本気を……。令和のフラミンゴの御覧ください。
竹森 令和のフラミンゴとか言っちゃうと、平成フラミンゴさんがいるからおかしくなっちゃうだろ!
ーー今後についてはいかがですか?
吉田 今、ここで言えるのはまだ次の会場は取ってません。なので、フラミンゴの復活を待っていてくれた方にはこの機会を見逃さないで欲しいというのは強く言いたいです。
竹森 でも、来年もやるかもしれないし。
辻本 やるとも……言ってない。
ーー今回が最後になるかも知れないんですね?
全員 そうは言ってない。
取材・文:高畠正人
写真:堀山俊紀